2話 電車事故
ぶちゃ子と誰からも馬鹿にされている私だけど、実は超能力を持っている。
というより、超能力を持っているはず・・・。
そう、持っていると言われているだけで、どんな能力なのかは知らないのよ。
だって、今の生活に満足しているし、この能力を使おうとは思わないもの。
でも、秘密にしているけど、超能力者の組織にも参加している。そう、あの日から。
ある日、病院に行ったら別室に通され、先生が話し始めたの。
「佐伯さん、風邪薬をだしておきますね。ところで、あなたの知力、血液などは、私達が期待しているレベルを超えている。」
「なんの話しですか?」
「すみません。我々は、現在、特別な能力を獲得できる画期的な薬を研究しています。すでに動物実験は済み、人でも多くの実験が行われ、副作用がないことも立証できています。それを前提にして、佐伯さんに、この薬を飲んでいただき、効果があるか試していただきたいんです。」
「そんな怖いこと嫌ですよ。副作用とかないんですか? 私じゃなくてもいいでしょう。」
「副作用はありません。佐伯さんだから試していただきたいんです。」
「どんな能力を獲得できるんですか?」
「それがまだわからないんです。いろいろな能力があり、どんな能力が発現するかは人によって違う。だから、同じ能力を獲得できた人の共通点を探すことで、どんな人にはどんな能力が発現するのかを調べているんです。」
「本当に大丈夫なんですか?」
「この病院は一流の総合病院ですよ。そんな病院が怪しいことなんてしませんよ。そんなことしたら、悪評が立ち、すぐに病院は潰れてしまいます。そのことは佐伯さんもご存知でしょう。」
「そりゃあ、そうでしょうけど。でも私にはどんなメリットがあるんですか?」
「まず、ご協力いただければ、200万円お支払いしましょう。その代わり、1ヶ月間、入院して血液検査とかいくつかの検査を受け続けてもらいます。会社には、交通事故にあったとでも言って、1ヶ月お休みください。給与が減っても、十分な金額だと思います。」
「それはそうだけど。痛いのは嫌なんだけど。」
「まずは、この薬を1錠飲むだけです。あとは採血で注射を2日に1回打ちますが、痛くないように十分配慮します。」
「まあ、むげに断るのもなんだから、協力することにしようかしら。」
「是非、お願いします。」
どんな薬かは不明だけど、会社には交通事故にあったと連絡し、協力することにしたの。
そして、1ヶ月が経ち退院することになった。
「結局、この1ヶ月で何も変わったことはなかったけど、どうだったんですかね?」
「十分、効果があることがわかりました。」
「そうなんですか。どんな能力なんですかね?」
「だから、ずっと言ってるじゃないですか。佐伯さんに、能力を発揮してみてくださいって。」
「だって、怖いんだもの。どうなるか分からないし。また、今のままで不自由はないし。でも、どうして私に超能力があるって分かるんですか?」
「私にも超能力があるんですが、超能力者どうしは、相手が超能力者であることは分かるんです。佐伯さんも、私が他の人と違うということ分かるでしょう。」
「たしかに。超能力者間って、こんな感じなのね。」
結局、どんな力があるかは試さなかったけど、超能力者になれたことは確かみたい。
この時、病院の別室で、超能力者達が、私について話しをしていた。
私には聞こえないように。
「超能力者は公安に暗殺され、減ってしまったな。だからって、あんなデブ女を仲間にするのはどうかと思うが。自分の食欲もコントロールできないということだろう。」
「そんなこというなよ。知能、血液検査などではパスした数少ない人間だ。ただ、どんな能力が備わっているか、本人が試す気持ちがないということなので、まだ分からないことが問題だが。」
「ああ、その点でも意欲がないというか、この組織に招いて意味があるのか疑問だ。どうしようか。」
「極限状態に置き、超能力を使うしかないという状況に追い込むしかないな。」
「そうか。じゃあ、朝の出勤時の電車を衝突させて、事故に巻き込むというのはどうだ。」
「事故に巻き込まれる他の人間には申し訳ないが、超能力を持っていない人だし、それがいいな。じゃあ、早速、手配しておく。」
「よろしくな。」
私は、電車が傾いたとき、窓から目の前のマンションで洗濯物を干す女性が目に入った。
お互いに、目が合ったと思う。その女性も、驚いてこちらを見つめていた。
私は死んでしまうの?
そう、今こそ、私の超能力を発揮する時だと悟った。そして念じた。
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