3話 アメリカ大統領選挙

次のターゲットは、ジョンソン上院議員だった。


私は、今、スミス氏の後任となったブラウン副大統領から指示を受けている。

超能力を持っているアメリカの組織のトップ。

ブラウン副大統領は大統領選挙に出馬すると聞いた。


だから、ジョンソン上院議員を排除したいらしい。

同じ選挙で出馬を表明している元国連大使だった上院議員なんだって。

そして、ジョンソン上院議員は昨日、訪日し、今夜、このお店に来る。

私は、その横に座り、情報を聞き出せということだった。


ジョンソン上院議員は、スミス副大統領とは違い、脇は固いと聞いていた。

でも、そんなこと気にしていても始まらない。

まずは、なにかないか、会話を続けよう。


「ジョンソン上院議員、うちで人気の凛です。綺麗で上品でしょう。気に入ってもらえると思って。さあ、ジョンソン上院議員の横にお座りなさい。」

「ジョンソン上院議員、よろしくお願いいたします。凛と申します。何を飲まれますか?」

「2001年産のデュジャックボンヌ・マールはある? あの赤ワインは好きなんだけど。」

「ございます。」

「さすが、アメリカ軍御用達だね。日本で飲めるなんて思ってなかったよ。」

「では、ご用意させていただきますね。」

「君も飲んで。」

「ありがとうございます。ではいただきますね。」

「では乾杯。」

「この店では若めだね。何歳だ?」

「22歳になります。」

「いいね。やっぱり女は若い子がいい。しかも、自分の主張ばかりするアメリカ人女性より、日本人女性は奥ゆかしいと聞いているから魅力的だ。」


そう言って、私のももに手をかけ、自分の体に寄せたの。

これはいけるかもしれない。


「ジョンソン様ったら、ここではだめですよ。」

「そんなこと言わずにさ。誘ったら、外で会ってくれるのかい。」

「どうしようかしら。」


お店で騒ぐことはできない。

だから、ホテルに誘い、乱暴をされたと騒ぐ。

こんなシナリオを考えたけど、なかなか進まなかった。

国外でも脇は甘くないらしい。


「ジョンソン様、将来の大統領とお聞きしていますが、ご家族とかも、皆様すばらしい経歴なのでしょうね。」

「そんなことないんだよ。最近、息子が言うことを聞かないので困ってるんだ。私より近い年齢だし、なんかアドバイスとかあるかい。」

「息子さんは、今、何歳なんですか?」

「できない子でさ、19歳なんだが、3流大学の文学部にいるんだよ。できない子の方がかわいいと言うだろう。この頃は、大学に行っていないようでさ、女の子連れてドライブばかりしているんだよ。どうしたんだと怒ったら、家を出て行ってしまってさ。」


息子を思う父親。目は天井を向いていた。

そんな男性が、私の腰に手をまわすなんて笑っちゃう。

ジョンソン上院議員も、大したことがない。

男性って、なんてバカなのかしら。


でも、この情報は使える。

私は組織に連絡をした。


「ジョンソン上院議員の息子を探して。」

「それで、どうするんだい?」

「ドライブが趣味だそうだから、ブレーキが効かなくなるよう細工して、運転中に事故を起こすのよ。」

「最初はブレーキは効くけど、途中で使えなくなる。そんな風にだな。わかった。」

「そう。大統領選候補者の息子が事故なんて、大事件じゃない。」


組織に伝え、その息子の車のブレーキを壊した。

そして、息子は人を轢き殺す事件を起こしたの。

しかも、事故の相手は死亡して、息子は怖くなってその場を立ち去った。


車は大破し、ナンバープレートがあったからすぐに犯人は判明したわ。

息子は、なにがあったか分からないと混乱しているらしい。

ジョンソン上院議員は、あろうことか、この事件をもみ消した。


息子が大切だったのよね。

でも、それ以上に自分の評判への悪影響を気にしたんだと思う。


組織は、この機を逃さなかった。


マスコミに、ジョンソン上院議員について情報提供をした。

息子が事故を起こし、1人が死亡したこと。

そして息子はひき逃げして逮捕されたこと。

これを、ジョンソン氏が自己の立場を利用してもみ消したこと。


連邦議会では、ジョンソン上院議員への批判で大いに荒れたみたい。

そして、ジョンソン上院議員の曖昧な対応が更に火を注いで炎上したの。

その結果、ジョンソン上院議員は政党から除名された。

そして、議員辞職することになったの。


私は、別にジョンソン上院議員に悪意はない。

ブラウン副大統領に狙われたのが運の尽きだったわね。


ブラウン副大統領は、それを契機に大統領に上り詰めていった。

アメリカでは、超能力の組織が揺るぎない力を持ち始めていったの。


次は日本ね。

超能力を持っていることだけで、普通の人より1歩リードしている。

だから、私達が勝つに違いない。

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