第5話 検証

 俺は生まれた場所まで戻ってきた。



 相変わらず綺麗な場所だな。ただ、少し雑多というか統一感がないというか、まあ森の中だから当然なんだが…



 そのうちガーデニングとか造園みたいな感じで俺好みに整えてみてもいいかもな。楽しみ。



 とりあえず、今は魔法だ。



 この際、魔法の細かい原理なんてものは置いておこう。ただでさえ、前世の常識から外れた現象が立て続けに起きているのだ。そういうのはいずれ余裕ができたときにやればいいのだ。今は使えればそれでいい…



 赤シマエナガの火球は言うまでもなく脅威だった。あんなの普通の人間だったら跡形もなく燃え尽きるだろ。



 魔法を使いこなせるかどうかで、今後の俺の人生(竜生)は左右されるといっても過言ではないだろう。



 正直、俺ドラゴンだしこのままでも強そうな気がしないでもないが…まあ備えあれば憂いなしってやつだな。てか、前世に魔法なかったからめっちゃロマン感じるし、使わないなんて有り得ないぜ!



 現状、俺が使える魔法は空を飛ぶ魔法ただ1つだ。



 俺は飛ぶときに、全身の力を振り絞るように力を身体中に漲らせ、それを放出するかのように解放するようなイメージをもって、それを実現した。



 つまり、魔法は全身に巡る魔力をもって発動し、それに何かしらの方向性や性質をもたせて解放することで成立する。そういうことにしておく。



 この方向性というのは、空を飛ぶ魔法で例えるなら飛ぶ方向や滞空の維持、巨大な火球で例えるなら炎の収束や圧縮、対象に向けて一気に解放、といった感じで現状ものすごく曖昧なものだ。



 だが、そこの捉え方はあまり重要ではない気がする。なぜなら、赤シマエナガがかなり自由に炎を操っていたからだ。



 あいつがいちいちそんな難しいことを考えていたとはとても思えないし、そもそも空を飛ぶこと自体に魔法が関係しているのだ。



 もしかしたら意識をしていないだけで、歩いたり、体を動かすだけでも魔力を使っているのかもしれない。



 それだけ生物の活動と密接に結びついていると考えると、魔法というものはほぼ感覚的なもので、思考の柔軟性や発想力といったものが大事なのではないか、と。



 要するに、現象に見合う魔力とそれを実現するイメージができるなら、魔法が使えちゃうんじゃないかなぁって思ったわけだ。



 ということで、さっそく実験していこう。まずは、赤シマエナガの巨大な火球を使えるか試してみよう。



 うん、意外と難しい。何を意識すればいいのかがいまいちよくわからない。



 空を飛ぶときはそこまで苦労しなかったんだが…



 …もしかして、「羽があるから空を飛べるはず」みたいな固定観念があったから簡単に飛べたのか?



 ん〜、なまじ前世の知識がある分、苦労してしまうのかもなぁ。



 いや、もっとシンプルに考えてみよう。燃焼の仕組みとかそんなものではない。そういう知識が必要なら俺には魔法なんて使えるはずがない。



 そう、俺はドラゴンなんだ。人間ではない。ドラゴンなら…火くらい出せるよな?



 ボウッ



 本当に出せたわ。巨大な火球ではないが、目の前に火の玉が出現して燃えている。こいつを大きくするもしくは大量に発生させ、収束圧縮すれば使えるかもしれないな…



 よし!一歩前進だ!



 こうなってくるとなんでもできてしまいそうだな。だって俺ドラゴンだし。



 見た目は金眼で深緑の鱗に覆われたバ○ムートって感じだ。RPGでも最強の存在であり、それぞれに特徴の違いはあるもののできないことなんてないんじゃないか?



 そんな俺の体も右上腕は抉れており、左手の掌には穴が空いている。おまけにところどころ焦げている。



 治癒魔法もイケちゃう…?やってみるか?



 そぉりゃっ!!



 治っちまった…



 傷は跡形もなく消えてしまい、俺の体はすっかり綺麗な状態になってしまった。おまけに疲労感もなくなった。



 魔法凄すぎじゃね…?


 

 ただ、いちいち魔法を発動する際に全身の魔力を意識して…なんてやってたらいざというときに咄嗟に使えないかもしれない。



 これはあらかじめ使える魔法を片っ端からあげていき、反復練習を重ねて、使おうと思ったら即使えるという状態にしなければな。



 色々と試してみるとするかね。



 ◇◇◇



 あれから結構な時間が経った。



 結論から言うと俺はとんでもない化け物かもしれない。



 まずは火、土、水、風といった属性魔法を実現させようと、思いつく限りの現象をイメージしていったら、この辺り一帯から美しい花々や草木は消え去り、地面は大いに抉れて、まるで大災害に遭った後のような悲惨な光景が残った。



 巨大な無数の火球、地面から巨大な岩槍を出しながら地割れを引き起こしたり、その地割れから巨大な水の柱を発生させ、巨大な竜巻を引き起こした。



 まあ、当然である。


 

 周囲一帯を元に戻せないかなぁ〜ってイメージしたら完全には元に戻せなかったものの、かなり以前の美しい光景に近い状態まで回復した。もう少し頑張れば元に戻せるかもな。



 さらに定番の身体強化や身体中にオーラを纏ったような状態での爪攻撃、噛みつき、尻尾での薙ぎ払い等の物理攻撃にも応用できた。(当然周囲はボロボロになったし、その後に直した)



 その他にも様々な魔法を思いついては発動してみる、というのを繰り返し続けた。いいものもあれば微妙なものもあった。



 極め付けはブレス攻撃だ。そう!F○のバハ○ートのメガ○レアだ!



 流石にヤバそうなのでコイツは地上ではなく、空目がけて放つことにした。



 すると、その余波だけで周囲の地面が捲れ上がり、上空の雲が一気に霧散して、ついでに空からこんがり焼けた鳥が落ちてきた。俺より一回りくらいデカかったが、美味しくいただいた。



 これは立派な化け物だろう。



 ただ余波で周囲の環境が壊れてしまったり、完璧な状態に戻せなかったり、威力にムラがあったりと課題は多そうだ。



 とりあえず、魔法のピックアップはこの辺にして、より洗練させていく特訓に専念しよう。



 ではさっそく特訓を…



 と思ったのだが、ここらで少し眠っておこう。



 肉体的なダメージや疲労感は治癒できても、精神的な疲れは眠らないと治らなさそうだ。



 なんだかんだ今日だけで色々なことがあった。転生したかと思ったらドラゴンで、なぜか鳥2匹と戦う羽目になり、最後に魔法ではしゃぎすぎた。



 一応、襲われても大丈夫なように、魔法で結界を張って、その中心で丸くなった。



 

 明日はどうなるかね〜。




――――――――――――


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