第6話 成果

 あれから数ヶ月が経った…気がする。



 いや、この世界にも日夜はあるっぽいので、最初の方は何日目か数えていたのだが、途中から面倒になってしまったので、あくまで気がする、と表現したのだ。



 日によっては魔法の練習に夢中になりすぎたり、ぶっ通しで寝続けたりしたこともあったので、もしかしたらもっと時間が経っている可能性もあるのだが…まあどうでもいいな。



 そんなことよりも俺はとうとう最強になってしまったかもしれない。



 まず体についてだが、あれから物理攻撃の特訓をしたり、森の中で獲物を狩ってその肉を食らったりと積極的に運動をしてきた甲斐もあって、俺の体はかなり大きく、そして筋骨隆々な感じに仕上がっていた。



 以前の俺、生まれたばかりの頃はおそらく成人男性くらいのサイズだったのではないか?そう考えるとキモカラスと赤シマエナガは相当デカかったということになるな…



 それに比べて今の俺は、四足歩行状態で2回建ての一軒家くらいのサイズはありそうだ。キモカラスくらいなら余裕で見下ろせる…というか今までこの森で見てきたヤツらは大抵見下ろせていたので、かなり大きなサイズといえるのではないだろうか?



 これだけ体が大きくなれば、体を維持するために大量の獲物を捕食しなければならないのではないか?答えはイエスだ。



 俺はデカくなるにつれて行動範囲を広くしていき、獲物を好き勝手食いまくっていたのだが、時間が経つにつれてどんどんその姿を見せなくなっていたのだ。



 もしかしてこの森の生態系を破壊してしまったのではないかと焦った俺は、気配察知の魔法をつくり、この森全体に張り巡らせたのだ。すると、数は減らしていたものの未だに健在な姿を各地に確認できた。危ない危ない…



 ただそうなると、今後の俺の胃袋問題はどう解決すべきか悩んでいたのだが、魔法で解決できないか考え始めたのだ。



 以前に魔力感知の魔法をつくった際にこの森がとんでもない濃度の魔力に覆われているということに気づいたのだ。そう、肉や果実だけでなく空気中にも漂っているくらいに、ここは魔力で満たされているようだ。



 特に俺の生まれた場所は森の中心部に位置するようなのだが、ここの魔力濃度がエグい。初めて魔力感知を使った際には思わず目眩を起こしたほどだ。



 俺はこの魔力を活用して自分の魔力補給もしくは胃袋問題を解決できないか考えたのだ。



 俺の考察では生物はその行動1つ取るにしても魔力を利用し、その体を維持するのにも魔力を必要としている、と結論づけた。この生物を便宜上、魔物と呼ぶことにする。



 つまり、捕食以外の手段をもって、周囲に漂う魔力を魔物たる俺の体の維持に活用できないか、ということだ。



 これが達成できれば、森の生態系を守ることができるし、俺もいちいち獲物を探しに行くことなく、のんびり過ごすことができるので挑戦しない手はない。



 そんなわけで、魔法でどうにかできないかなぁ〜って思いながら、身体中の魔力を巡らせたりこねくり回したりしていたのだが…解決できました。



 俺は結界という魔法を以前つくっていたのだが、この魔法は様々な効果を付与することができたのだ。



 侵入者を阻む結界、内部にいる者を閉じ込める結界、治癒効果を促進する結界、毒を撒き散らす結界等、かなり自由度の高い魔法だ。



 そこで俺はつくったのだ、周囲一帯の魔力を自分の体に直接補給する結界を。



 最初の頃は全然補給できなかったり、逆に取り込みすぎて気持ち悪くなってしまったりと使えたものではなかったのだが、幾多にもわたる調整を積み重ねて、ついに実現したのだ!



 範囲はこの森全域に及び、全体から少しずつかき集めて、俺の補給に利用するという形になった。



 おそらくあれだけ豊富な魔力をもったビミスモモ含む植物にも魔力は重要な要素になると考えたので、地域によって偏りがないように調整するのはさすがに骨が折れたぞ…



 ただその甲斐あって、無事に俺の魔力補給と胃袋問題は解決することになったのだ。この結界もたまに貼り直せば大丈夫だろうし、もし何か不都合なことが発生したならば、その都度修正していけばいいだろう。



 そして魔法についてだが、結界に関する微細な調整具合をみれば、その操作が達人の域に達しているということは想像に難くないだろう。



 以前は周囲一帯を壊滅状態にしていたが、今では環境に与える影響もごく僅か!対象にのみ、その影響の大部分を与えるレベルにまで達したのだ。



 これはオーバーキルをしてしまったり、不必要に獲物を警戒させてしまったりと、狩りをする過程で周囲に対する影響があまりに大きすぎたため、早急な改善が必要だったのだ。



 今ではギリギリHPが1残るくらいの手加減も容易であり、それができるということは既に強力な魔法をより洗練させることができる…



 俺はこの森以外のことは全然知らないし、まだまだ強くなる余地はあるかもしれないが、前世の価値観と照らし合わせても最強と表現しても過言ではないと思った。



 まあそんなこんなで森で楽しく遊んでいたわけなのだが、ここ最近は少し外の世界に興味を持ち始めたのだ。今までは余裕がなかったというのもあるが、純粋に誰かとの交流に飢えているのかもしれないな…ちょっとマンネリ化してきて退屈だし…



 俺が生まれてからこの森には一度も人間が立ち寄った形跡がなかった。まあ俺が判断できるレベルの話だが。


 いずれは人里にも顔を出したいが(人がいるかわからないが)、流石にこの姿じゃ厳しいよなぁ。



 人化の魔法も特訓中なのだが、これがなかなかうまくいかなかった。俺という超存在は既に人間の枠に収まらない、ということなのか?



 まあ人化の魔法はいずれ使えるようになったらでいいか。焦ることでもないしな。




 は〜、誰か意思疎通できるやつでも現れないかな〜




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