第4話 魔法

 一瞬、自分の目の前の光景が信じられなかった。



 巨大な火の塊がとてつもない熱量を持って、俺の上空に存在していた。



 この状況からしておそらく赤シマエナガがこいつを発動したみたいだよなぁ…



 もしかしてこれ魔法ってやつか!?魔法が存在するのか!?だってこれどこからどう見てもメラゾーm…



 「ヂュゥッー!!」



 巨大な火の塊が俺目がけて放たれた。冗談じゃない!こんなものまともにくらったら一瞬であの世行きだろ!



 持てる力を全て振り絞って、羽を羽ばたかせる。よし!飛べそうだ。



 「グルアアァッ!(間に合えっ!)」



 間一髪で左斜め上空へと飛んで避けることができたが、巨大な火の塊が目の前を通過したときの熱量だけで全身が燃えたかのように錯覚した。



 そしてさっきまで俺がいた地面にぶつかり…



 バゴオオオオオオオオオォォオッォォォンッッ



 周囲一帯を巻き込んで大爆発を引き起こした。着弾地点を中心として爆風が吹き荒ぶ。当然近くにいた俺は…



 「グルォオォッ!?」



 爆炎と爆風に巻き込まれ、遠くへと吹き飛ばされる。その勢いのまま地面に叩きつけられた。くそぅ…俺がなにをしたっていうんだ…



 幸いキモカラスを捕食した影響なのか先程の傷や疲れが若干和らいでいたようで、何とか耐え切ることができた。



 さっきまで俺がいた場所には、巨大なクレーターができており、周囲は焼け野原のようになっている。やべぇ…



 俺はこのとんでもない火球を放ってきた張本人(鳥)へと視線を向ける。



 「チュゥーッ!」



 さっきよりも遠くにいるが依然としてこちら見つめている。そしてこちらの方に向かってパタパタ飛んできている。



 あいつも俺のことを殺そうとしているのか…?俺としては助けたつもりだったのだが…



 俺はふと思い至ってしまった。何でこいつが俺とキモカラスが戦っている間も逃げることなくその場に居続け、俺らの戦いが終わった後に、俺が背を向けたタイミングで攻撃を仕掛けてきたのか。



 こいつ、戦いで疲労して油断したところを狙っていやがったな…?可愛らしい見た目にすっかり騙されていたが、なかなかに狡猾なヤツだったみたいだな。



 しかし、これに関しては俺も反省しなくてはならない。弱肉強食の世界で生きると決意しておきながら、目の前の獲物に背を向けてしまっていたのだから。



 今後は気をつけねば。だが、まずは目の前の赤シマエナガをどうするかだな。



 「ヂュチューッ!!」



 赤シマエナガはそう鳴き声をあげると、今度は自分の周りに複数の火球を出現させた。先ほどよりも小さいが10個もの数がある。そんなこともできるのかよっ!?



 「ヂュチュン!!」



 そして火球を順番にこちらに放ってきた。クソっ!さっきよりもスピードがある…



 集中しろ…1つでも当たったら終わりだと思え…



 俺は全ての火球の軌道に予測をつけ、全身に力を漲らせながら飛翔する。



 全部避けてやるぜっ!



 ◇◇◇



 辺り一帯はすっかり燃え尽きてしまい、見るも無惨な状態に変わり果ててしまった。



 あれから俺は避け続けることに専念し、飛翔し続けた。



 最初の方はハッキリ言って運任せだったのだが、次第になんとなく癖のようなものを見つけ、最小限の動きで避けることができるようになった。



 そのおかげで直撃はなんとか免れたが、体のところどころが焦げているし、そろそろ体力の限界も近い…



 だがそれは俺だけではないようだ…



 「ヂュゥッ…ヂュゥッ…ヂュゥッ…」



 赤シマエナガもすっかりバテてしまっているようだ。



 さっきまでは元気に飛んでいたくせに、今は地面に這いつくばっている。俺がここまで避け続けることは予想外だったのかもな。



 実は避けている間に考えていたことがある。



 それは魔法についてだ。



 正直現時点ではわからないことだらけなので、大したことではないのだが、俺なりにある考えにたどり着いたのだ。



 さっきから俺は飛び続けていたのだが、これってもしかして魔法なのではないか、ということだ。



 あくまで羽は補助的なもので俺は魔法の力によって、飛ぶことを可能にしている、そして今赤シマエナガは魔法が使えない状態であるため飛んでいないのではないか?まあ単純に疲れているだけかもしれないが…



 俺は飛ぶ前に全身の力を振り絞って飛んでいた。途中からほぼ意識することなく飛べていたが、その際に体の力がほんの少し抜けるような感覚があったのだ。



 その力を魔力と呼ぶことにする。魔力を消費して魔法を発動する。そしてこの魔力というものは魔力の宿ったものを摂取することで補給もしくは増強することができるのではないか?


 

 ビミスモモのような果実やキモカラスを食った際、体に力が湧いてくる感覚があったのだ。今思えばあれは魔力だったのかもしれない。



 こんなに可愛い赤シマエナガだが俺はコイツを必ず食うと決めた。あれだけすごい魔法を使えたのだ。コイツを食べれば俺の成長にいい影響を与えるかもしれない。そう考えているとなんだかとても美味そうに見えてきたな…じゅるり



 「チュッ!?」



 俺が今から食おうと考えていたことを感じとったのか、めっちゃ体がブルブル震え始めたな。すげぇ怯えてる。



 お前はあのとき、俺を攻撃なんかせずにさっさと逃げるべきだったんだよ…



 俺はゆっくりとだが確実に赤シマエナガへと歩を進める。そして目の前まで辿り着いた。



 あ、意識失った。白目を剥いて嘴から泡を噴き出して地面にぶっ倒れた。



 コイツも俺を殺そうとしたが、魔法について考える機会をくれたのだ、一思いひとおもいにやってしまおう。



 「グルルル(じゃあな)」



 俺を左腕を振りかぶって喉元目がけて爪を振り下ろした。苦しむことはなかったんじゃないかな。



 俺は赤シマエナガの体を一部たりとも無駄にせぬようしっかりと食らった。あー、力が漲るし、腹も満たされた。めちゃくちゃ美味しかったぜ。



 さて、とりあえず危機は脱したな。それにしても魔法ってのは興味深い。こうなると魔法について色々と実験してみたいな。



 ただいい加減体が限界だ。傷も治ってないし、疲労感も抜けていない。次同じようなヤツらが出てきたら今度こそ終わりだ。さっさと俺の生まれた場所まで戻ってしまおう。



 その後俺は急いで生まれた場所に戻っていった。




――――――――――――


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