第2話 遭遇
何で俺はドラゴンになってしまったのだろうか…
何かしらの人体実験にでも巻き込まれたのか?
一体誰が何の目的でこんなことをしたのか…
考えてみても仕方がない。現にこうしてドラゴンになってしまったのだから。
…というのは建前で、とりあえず腹が減ったから何か食わねば。
もう腹が減りすぎて自分がドラゴンになったとかどうでもいい。何か食わないと色々と考察する前に餓死してしまう。
今俺がいる辺りも花が咲き誇っていて綺麗なのだが、食えそうな物がない。お、あの木になっている果実美味そうだな。
食料を探しがてら少しこの辺を散策してみるか。四足歩行で俺は目の前の鮮やかな森に向かう。
人間だったときの俺は当然二足歩行だったのだが、今は四足歩行が妙に体に馴染む。生まれたばかりだから四足なのか、それとも四足がスタンダードの生物なのか。うん、どうでもいいな。
さて、森の辺りまで着いたぞ。結構歩いたな。いくらドラゴンといってもまだ生まれたばかり。まだまだ小さいのだろうな。
とりあえず目の前の木になっている果実を食べるか…
いや、届かないな!?
そりゃそうか!俺はまだ赤ん坊なんだからな!よくよく考えてみれば俺を産んだ親はどこにいるんだよ。いきなりハードモードだな。
飛んでみるか?パタパタ。うん無理。飛べる気がしない。無駄な体力を使ったせいで余計に腹が減った。
登ってみるか?ヨジヨジ。うん無理。まだ木登りできるほど体が出来てないのだろう。無駄な体力を使ったせいで余計に腹が減った。
うーん。これ詰んだか?いや、まだ諦めるな!
この果実はいつか届くようになったら食べるか。そう思って森をさらに進もうと思い、前を向いた。
いやめっちゃ地面に果実落ちてるな…
当然といえば当然なのだが、なぜか木になっているものを取らなければと思っていたな。反省反省。
さて、少し潰れてしまっているがこれを頂くことにしよう。いただきます。ムシャムシャ。
美味っ。めっちゃ美味いな。
一見、真っ赤なすもものような見た目だが味はもっと複雑でとてつもない甘さの中に程よい酸味、皮は少し硬いが中身は一才の抵抗がないほどに溶けてしまうような口溶け。
それに飲み込んだ瞬間体の内から力が湧いてくるかのような感覚を覚えた。
こいつはビミスモモ(美味李)と名付けよう。他にもビミスモモだけでなく、色々な色、形の果実が落ちている。まだまだ腹は減っているし片っ端から食っていくか。
◇◇◇
ふぅー、そこそこ満足したな。
この近辺の地面に落ちている果実はあらかた食い尽くしてしまったな。
食うたびに力が湧いてきて一心不乱に食いまくっていたのだが、まだいまいち飢餓感は晴れていない。もう少し食う物がないか探してみるか。
元いた場所から結構離れてきたせいか、少し周りの雰囲気が変わっていた。色鮮やかな木々が徐々に減っていき、鬱蒼とした森に移り変わっていったのだ。
ちょっと怖いかも。
それに今の俺赤ん坊だし熊とかに襲われたら逆に食われそうだしな。
仕方ないし戻るか。
そう思って振り返ると、木の上に何か動いているやつがいるな。
あれは、鳥か?
全身がビミスモモのように真っ赤なシマエナガみたいな鳥だな。凄い勢いでビミスモモを
ほんわかした気分になっていたら、突如鬱蒼とした森の方から何かが物凄い速さでシマエナガ(赤)に向かって突っ込んできた。
「チュッチュン!?」
シマエナガ(赤)もぶつかる直前でそいつに気付き、なんとか躱すことができたが…一体あいつは何だ?
見た目は俺と同じくらいの大きさのカラスだな。目つきがめちゃくちゃ鋭い上に血のように赤い。可愛くない…
あいつはキモカラスと名付けよう。
おそらくシマエナガ(赤)を捕食しようとしているのだろう。今も避けたことに対してめっちゃ怒ってる。
「グワァァアアアアア!!!」
めっちゃ威嚇してる。あ、また突っ込む体勢に入った。
正直シマエナガ(赤)がどうなろうがどうでもいいっちゃどうでもいいのだが助けてやるか。待っていろ!
そうだ届かないんだった…
あ!やばい!そろそろキモカラスとシマエナガ(赤)が接触しそうだ。
「グワァァアアアアア!!!」
「チュウウウウウウウ!!!」
まっ待て!
そう思いながら全身に力を込めて咄嗟に羽を羽ばたかせたら、
フワリ
急に体が浮かんだ。
そのままの勢いでキモカラスとシマエナガ(赤)に突っ込んでいく。
ええええ!?
「グワッ!?」
「チュッ!?」
2匹とも突然現れた俺の姿に命のやりとりをしていたことも忘れて驚愕していた。
そうして俺はそいつらの間に割って入ることになった。
さ〜て、どう収集つけるかな。
――――――――――――
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