どうして怒らないんだ
「お前知り合いだったんかい!!」
記憶を見終わった後、俺はその場で膝をついていた。
まさかのローレンス伯爵の登場。昔馴染みだった。
いや、道理でヒナさん、言葉を濁すわけだよ。なんかヒナさんが嫉妬(?)するぐらい良い奴っぽいし。
そんな奴がストーカー行為するって信じたくないよな! 実際はローレンス伯爵に取り憑いた兄貴がやってたわけだし!
いや、そんなことは置いておいて。
恐らくこのふよふよ浮いている水晶は、触れることでヒナさんの記憶を見ることが出来る。
つまりあれら全ては、かつて『×××××××』と呼ばれていた、ヒナさんが受けて来た数々だ。
例え彼女の記憶じゃなくても、腹立たしいことが山のようにある。
父親に対しても、義母に対しても、そしてあの兄に対しても。その場にいたら、『スキル:即死』が勝手に発動していそうだ。
そして、あまりにやるせなかった。
部外者の俺がこう思うんだから、ヒナタさんはもっとやるせなかっただろう。
なんでこんな理不尽な目に遭って、怒らないんだって。
あなたには全然見返りも褒美も無いのに、従ってしまうんだ、……って。
そしてそれを、ハッキリと言わなかったヒナタさんにも。
だけど、それを言う権利は俺には無い。
俺はあそこにいなかった。あそこにいたのは、ヒナタさんだ。
そしてヒナタさんの行動は、ヒナさんの言葉を引き出したところを見ると、多分最善だったと思う。
……もしあの場所にいたとして、俺はヒナタさんのように彼女に接することが出来ただろうか?
それとも別の行動で、彼女を助けることが出来ただろうか?
新たな水晶を見つけたので、俺はそれに触れた。
触れてみてわかった。多分、これを見なければ、ヒナさんにたどり着けない。
次に俺が見たのは、ヒナタさんが血を吐いて倒れる場面だった。
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