自◯しようとしたら吸血鬼にされちゃった!?
暁月星空【あかつき そら】
第1話 日常、そして来実との出会い
とある夏の日、セミはまだ鳴き始めてなくて、梅雨真っ只中だ。ジメジメとして、不快に思う人もたくさんいるだろう。でも、僕はそうは思わない。そう、思う余裕が、僕には、ない。
今日も学校だ。こんな、周りが平和で皆、幸せな生活を送っているであろうこの日でも_______
僕はもう生きてなんかいたくない。
学校へと足を運ぶ。本当は行きたくなんかない。でも、家族に僕が普通の学校生活を送っていると思われるように.......心配をかけないように、行かないといけない。足取りが重く、体が思うように動かせない。まるで、僕の体が学校へ行くことを拒否しているように、一歩一歩の間隔が短くなっていく。
そうして僕はかなりの時間を掛けてやっと学校へ到着した。上履きに履き替えて、階段を登っていく。そのまましばらく歩いていると、やがて教室が見えてきた。恐る恐る教室の扉に手をかけ、その扉を開ける。そして目に入った光景は、あまりにも普通の学校の朝の教室だった_______
そうで、あってほしかったのに。
「おっ、
と、そんな声が聞こえてきた瞬間、僕の目の前に数人のクラスメイト...いや、”吸血鬼の”クラスメイトたちが僕の前に立ちふさがった。...来てほしくなかった。こいつらの姿を見ると、また今日も地獄の一日が始まるのだと実感してしまう。
突然、殴られてしまった。本当に突然だ。クラスのみんなが見てる前で。
「なんで...」
どうして、今殴ったんだろうか。僕がなにか不快になるようなことをしたのだろうか。その僕の疑問に、彼は答える。
「なんでって、ただの気分だよ。なんとなく殴りたくなった。ただそれだけだ。それともなにか文句でもあるのか?」
「いえ、ないです。」
どうやらただの気分だったらしい...クラス中の人、何なら他のクラスの人もいたりする。それでも、誰も助けてくれない。誰も助けようとしてくれない。怖いからだろう。彼らを敵に回すのが
だから、僕に味方する人なんて誰一人としていない。僕は___孤独だ。
授業中、気分が沈んでて先生の話を聞く気にもなれなかった。聞こうとしても、先生の言葉...いや、ありとあらゆる情報が頭に残らずにすべて飛んでいく。僕は諦めて夢の世界に浸ることにした。
目を閉じて、そこで浮かんだ光景は、僕の理想の日常生活だった。誰とでも仲良くなれて、誰も暴力を振るう奴はいなくて、学校生活も、充実したもので...
僕はいつも通り授業を受けていた。先生が黒板に公式を書いている。
「この公式は絶対に覚えなさい。これ覚えてなかったらテスト点取れないよ。それじゃあ目をつぶってこの公式を唱えろ。」
先生に言われたことを全部しっかりこなして怒られることもない。
「
「はい。」
先生に当てられても冷静に僕が考えた答えを堂々と話す。
4時間目が終わって、昼休みになった。
「
このようによく昼ごはんを一緒に食べる友達もいる。
授業が終わり、部活動が始まるまでの時間に、友達と好きなアーティストについて熱心に語り合っていた。話し合っているうちに同じクラスの人や、他クラスの人までおしゃべりに参加してすごく盛り上がった。
「っていうか
「ああやばい早く行かないと!ありがとう!」
部室で着替えて、体育館に行く。大きな声で挨拶をして、ウォーミングアップをやって、中一から続けているバスケットボールの練習を始める。難しいし、部の中で特に上手というわけではないけどやってて楽しいし、上手くなったときとても嬉しいから、ずっとやっていける。同じ部員や顧問の先生との関係も良好だし引退までやめたくない。できればこれからもやっていきたい。
「おい
「ごめん!」
いけない。周りをよく見てなかったし、仲間の声に気づけなかった。今度からはもっと周りを見ていかないと。
「あぁ今日も楽しかったなあ。明日が楽しみだな。」
あのあと学校から帰って宿題を済ませ、夜ご飯を食べたあと、僕の部屋で椅子に座って今日のことを思い出していた。
「あ、友達からメール来てる」
『土曜日空いてる?もし空いてたらゲーセン行こうぜ』
土曜日か...そういえば、土曜日何もなかったよな。長期課題も、家族の予定もないから大丈夫そうだな
『もちろん行くよ!』
と、返信する。すると、また携帯が通知で震えた。見てみると、また別の友だちからメールが届いていた。
『土曜日と日曜日ゲームしようぜ』
ゲームのお誘いだった。でもさっき約束しちゃったなあ。
『土曜日は高橋くんとゲーセンで遊ぶ約束があるからその後ならいけるよ!』
とりあえず、そう返信しておく。今週末はもう予定が入っちゃったな。
「週末が楽しみだな。」
こんな感じで僕の学校生活が楽しかったら…良かったのになぁ。
そうして授業が終わり、放課後となった。一旦家に帰ろうとしたが、学校に忘れ物をしていることを思い出し、学校へ戻っていた。誰もいない廊下を歩いていると僕の教室から、声が聞こえてきた。どうやら教室には3,4人いるらしい。そして、聞こえてきた声のうちの一つに、いつものあいつの声もあった。
「
「これでしょ?『うわっ、は、はいっ!』」
「はっはっは!上手すぎ」
「あのさあ、僕転校生だからわからいんだけど、なんであんなに嫌われてるんだろうね」
「知らん。存在自体が罪なんじゃないか?」
「あははは、かわいそ」
「逆にすごいよね。性別、年齢問わずあんなに嫌われてるなんて」
「うんうん。そうだよな、もうあいつの味方この学校にはもういないんじゃないの?」
「いないだろ、そんなのいるわけ無いじゃんw生きててつらくないのかなw」
つらいに決まってるだろうお前らにこうやってからかわれて。つらくないわけ無いだろう...
と、そんなふうに心のなかで叫んでたその時だった。
「ちょっと飲み物買ってくるわ」
一人が教室から出てきた。僕は教室の前にいるので、必然的にそいつと目があってしまう。僕の存在に気づいたそいつは...
「おい!なんでお前がここにいるんだよ。なんで学校に残ってるんだ?」
「なになに…ってはぁ?いたのかよ鬱陶しいなぁ!」
「この感じだと今の俺達の会話こいつに聞かれてたっていうことだよね。最低だなあ!」
「今先生いないよな。それじゃあこいつぶっ飛ばすか。」
そう言ったそいつらはこちらに向かって襲いかかってきた。それを見て僕は全速力で逃げる。でも、彼らは僕より運動神経が良く、僕なんかが逃げ切れるわけがなかった。
その後、抵抗することもできず、ボコボコにされて学校を出た。僕が聞いていたのがバレてしまったから、もしかしたら明日から今までよりももっと酷い目に合うかもしれない。そう思うと、すごく怖くなった、まるで、光が全くない暗闇の中へ放り出されるような恐怖を感じた。これからどうするか...なんとか、周りの僕への印象を変えることはできるのか?いや、もう手遅れだろう。なら、せめてでも暴力だけは辞めさせることは...でも、何をやっても、いや、そこにいるだけでも痛い目を見ることになる。それに親が怒るだろうから学校へ行かないという選択肢は取れない。
もう…死んでしまおうかな…
そう思うと、僕に残された方法は『死』しかない、と信じるようになった。そして、僕は近くにある大きい崖がある山を目指した。
僕は走った。どれだけ疲れても全力で走り続けた。あの山の高い高い崖を目指して。「僕は死にたいんだ、絶対に死ぬんだ」そう思いながら山を登った。
目的の崖まで走ったとき、もう夜になっていた。空にはすごくきれいな星がたくさん輝いていた。飛び降りる前に崖の上に座って星空を見上げた。そして、その幻想的な景色に向かって、語りかける。
「僕、もう無理だよ。生きていたくない。本当に、最後に見れる景色が君で良かったよ。本当に綺麗だな。ありがとう。そういえば、僕は死ぬんだから結局親には迷惑かけることになるのか。やっぱり僕は馬鹿だな。でも、いいよ。もう生きたくないから。生きてても、何も希望が見いだせないから。さよなら。」
僕は、そう言って飛び降りた。確実に死ねるように、頭から落ちる。風にあたってるせいか、夏なのにとても涼しかった。その涼しさが、とてもとても気持ち良かった。そのまま僕は目を閉じた。夜の星空の中で、僕は落ちていく___
ついに、僕の体に衝撃が走った。もう地面に落ちたのだろうか。でも、そうだとしたらあまりにも衝撃が弱すぎる。それに、今、少し暖かさを感じている。さっきまで感じていた風が吹いてくる方向が変わっている。僕は今、横に進んでいるのか?空中で?
疑問に思った僕はゆっくりと目を開けた。そこで僕が見たものは...
僕のことを抱えて、夜の星空を疾走するように飛んでいる羽の生えた吸血鬼の少女だった。
自◯しようとしたら吸血鬼にされちゃった!? 暁月星空【あかつき そら】 @sora8hattatan
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