第2章「エリート崩れの叫び」早坂杏理4
「なんか、俺、触れちゃいけない話題に触れちゃいました?」
まあさんが、申し訳なさそうな表情で訊いてきた。
「ああ、いいの、いいの。まあさんが気にすることじゃないから。マユリはね、“クリステル”に嫉妬しちゃってるんだよね」
「嫉妬って……。そんな……。三条さんだって綺麗だし、かなりモテるんでしょう? そもそも、“クリステルさん”と三条さんは全然違うタイプなんだし……」
「マユリはね、世界で1番、自分が可愛いと思っているんだよ。自分以外の女がチヤホヤされるのが相当気に入らないみたいだね」
「なんですか、それ? 女の人っていろいろ大変なんですねえ……」
まあさんは、苦笑しながら言った。
「まあ、女って面倒くさい生き物ではあるよね。特に、マユリは“女”が強いから人一倍面倒くさいの。ここだけの話、“クリステル”は、マユリの彼氏をフッた女なんだ。マユリの彼氏って、『
「なるほどねえ。早坂さんは、三条さんのこと良く理解しているんですね。おふたりは確か、高校の同級生でしたっけ?」
「うん。いちおう高校の同級生なんだけど……」
「いちおう?」
「うん。私たち『
『冥鳳学園高校』は、この辺の私立高校では1、2位を争う進学校として名が通っており、東大、京大などの国立大学や早慶などの難関私立大学に進学する者も年々増えている。部活動にも力を入れていて、近県から優秀な生徒をスポーツ特待生として多数受け入れ、バスケ部と陸上部はほぼ毎年インターハイに出場している。“特進科”、“進学科”、“普通科”に分かれており、大学に進学する者の大半は“進学科”、偏差値が高い難関大学に進学するのは“特進科”の生徒だ。一口に進学校といっても、個々の生徒の能力にはかなりの開きがある。成績優秀な杏理は“特進科”、マユリは“普通科”。同じクラスになる筈もなかったし、帰宅部だった杏理は、部活動でもマユリとは、何ひとつ接点はなかった。ただ、冥鳳学園高校の同じ学年に在籍していた生徒で、三条マユリの存在を知らない者などいないのではないか? というくらい、マユリは“悪い意味で”目立つ女だったのだ。
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