第1章「1時間35分36秒」後藤田真美5

「さすがに、店長のご寵愛を受けていらっしゃる方は強気ですよねえ」

 真美の厭味に対し、早坂は生意気にも厭味で返してきた。唇の右端をキュッと歪ませ、今にもレーザービームが飛び出してきそうな両目はそのままに、笑みのような表情を繕う。自分より格下の者を見下すかのようなその気味の悪い表情は、この女の並々ならぬプライドの高さを物語っていた。おそらく、この女は、自分と同種の人間なのだろうな、と思った。


 ――「同族嫌悪」


 真美が早坂を忌み嫌うのと同じように、きっと、この女も真美のことを忌み嫌っているのだろう……。


(だったら、完膚なきまでに叩き潰すのみだ!)


 真美は、早坂を睨みつけた。この瞬間、2人の女の決闘は始まったのだ。

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