第2話
「次、停車します」
その声に笑瑠はピッと背筋を伸ばしてあたりを見回した。
どれだけ海馬を活性化させても、何も感じない景色が広がっている。
16年前の私が誘拐され、見つかった場所。
新生児病棟から赤子を連れ去った女、定職には付かず夜職を転々としながら暮らしていた。金に困った犯行だったと報道された。赤子を警察官に確保された途端、逃げ出そうとしたのか突然窓から飛び降り容疑者死亡のまま送検となった。このセンセーショナルに世間を賑わした事件は、今でもたまにTVで取り扱われたりもしている。当事者のその後のことなんて、もう誰も知らないのに。
笑瑠はバスが停留所に停まるのを待って、ゆっくりとステップを踏み締め下車をした。
ビル風がばふっと髪を乱した。
聖夜 @comecomecat
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。聖夜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます