3日目 常連さん
今日は常連さんが来た。…ここに来る患者さんが少ないとはいえ、僕だけではなく近所の人から「ああ、あの人か」ってなるほど顔を覚えられているのはこの人だけだと思う。
その人は、本名は分からない。前に「ネクロマンサー…は長いから、適当に省略していいですよ」と言っていた。ちなみに僕は「クロさん」と呼んでいる。見た目は中学生ぐらいなのだが、実年齢は分からない。髪を適当に下の方で結んでいて、眼鏡をかけている。相当目が悪く、前に来た時には「とうとう視力が0.1切ったよ!」となぜか誇らしげに報告してきた。誇るなよ。
ただ、その人は患者ではない。来るたびにどこか別の部位が吹っ飛んでいる女の子を連れてくるのだ。ひどい時は腰から下と両腕がなかった。
「またその子ですか。ちょっと酷使し過ぎでは?」
「いやー、他のネクロマンサーと一緒に遊ぶために作ったんだけど愛着が沸いちゃって…。つい、いろんなとこに放り込んじゃうんだよね…。」
この子の名前は「
ここまではいいのだが、片目は何というか、レンズっぽくて、虹彩の代わりにターゲットマーク?みたいなのがあるし、何よりおかしいのは、
「今回は一段とひどいけど…できるよね?パーツは集めてきたし。」
「組みなおすだけですからね。普通に縫合でいいんですよね?」
「うん。そこからなら私もできるから。」
クロさんの了解も得たので、千夜ちゃんの本体とパーツを縫い合わせていく。たちまち千夜ちゃんの体は本来の形を取り戻した。
「ありがとう。んじゃあ、あとは私が…」
そういってクロさんは千夜ちゃんの体に触れた。すると…
「…?あ、暗器さん。毎度毎度すみません。」
「いやいや。”割と何でも治せる医者”を名乗ってるんだから当然だよ。蘇生はクロさんがやってくれるし、僕は体を縫い付けるだけだから。」
8歳とは思えないような、そしてさっきまで死んでいた──厳密には今も死んでいるが──とは思えないほどに流暢に話す、ドールと呼ばれる生きた死体のうちの一つ、千夜ちゃんがいた。
千夜ちゃんの何よりもおかしいところは、体さえあれば、クロさんの意思一つで生き返るところだ。クロさんに聞いても「それがドールだからだよ。」としか答えてくれない。
「それじゃあ、ありがとう。またお世話になるからよろしくねー。」
「あんまりムチャさせないで上げてくださいね。お大事に。」
一応言ってはみたものの、多分今まで通りいろんなところに放り込んで、すぐここに連れて来るんだろうなぁ…。今度来た時には何か甘いものを用意してあげようとひそかに誓った。
闇医者の日記 金医暗器 @Aki-Nanairo
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