2日目 狂気の治療

 今日は、患者さんがひとり来た。黒い髪を肩のあたりまで伸ばした男の人に手を引かれて入ってきた、赤い髪の女の子。ずっと小さい声で何かをぶつぶつつぶやいているが、聞き取ることはできない。

 男の人が、「肝試しで廃墟に行ってからこうなってしまって…。」と説明してくれた。

「その時に何があったかは覚えていますか?」

「確か、小さい物置のような部屋に入って、そしたら…」

「?」

「…、大量の人が、その部屋の中に詰められていました。」

「?!」

「おそらく、その光景がだいぶショッキングだったのでしょう。それでこうなってしまって…。」

「なるほど…。ありがとうございます。病名の想像はつきました。」

 おそらく「発狂」と呼ばれるものだろう。…自分も症状こそ違うが、発狂したことがある。この場合は、独り言だろうか…?多弁症も混ざっている気もするし、この手の症状にしては長いが…。とりあえず、発狂なら必要な薬は大方一緒だ。

 まず、ラベンダーティーを淹れる。これは友人が作ってくれた茶葉を使ったもので、普通の物の2倍くらいリラックス効果が強い。これでは強すぎるので、普通の牛乳と砂糖を少し。これぐらいでよさそうだ。

「はい、どうぞ。…飲めますか?」

 女の子は返事こそなかったが、ティーカップを手に取り、紅茶を飲んだ。

「…。」

 独り言の症状も落ち着いたようだ。…はっや。

「これで大丈夫でしょう。あと10分くらいしたら会話もできるようになりますよ。」

「ありがとうございます。」

 二人は帰っていった。女の子の方は、やっぱり声は発さなかったが、ぺこりとお辞儀をしていってくれた。

 

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