何歳でも楽しめて、しかも年齢により楽しみ方が変わるお話だと思います。
軽妙な語り口で始まる「僕」の冒険譚。
空想好きで孤独な、いずれカクヨム始めちゃいそうな男の子が、学校からの帰り道に巻き込まれる奇想天外な出来事。
この顛末が一見シュールでぶっ飛んでいますが、やがて清々しい成長譚であることが明らかになっていきます。
テンポよく独特な文章スタイルには笑いを誘われつつ、危険で恐ろしい場面では手に汗握りますし、その時の「僕」の気持ちがよく伝わってきて、これは自分の冒険なんじゃないかという没入感に誘われます。
たぶん、「僕」は誰の中にもいるんじゃないかな。
あの時あんな風に悔しい思いをした、でもこんな風に乗り越えたという記憶が、大人が読むと呼び覚まされるんじゃないかな。
子供が読んだ場合は、わくわくする奇想天外な物語でしょう。等身大の主人公と同じ気持ちになって楽しめます。
でもいずれ、この物語の中に人生のいろんな部分が混ざっていたのだと気付く。
そういう奥深さがあるところが、何より魅力的でした。