せっかく時間停止能力を手に入れたのに堅物委員長のせいで全然悪いことができない件について

くろい

第1話時間停止能力を手に入れたのに!

 高校から家に帰っているときのことだった。

 通学路をいつも通りに歩いていた俺は、唐突に今までにない不思議な力が使えるような感覚に陥る。


 高校2年生になったのに、まさか俺は今から厨二病を拗らせてしまったとでもいうのか?


 しかしまぁ、本当になんか不思議な力を使えそうな気がしてならない。

 俺はその不思議な力が使えそうな感覚を見過ごすことができなかった。

 そして、俺は力を使ってみる。

 まあ、実際に何かが起きるわけが……、って、え?


「まじか」


 力を使った瞬間、世界の時間が停止した。

 何もかもが静止しており、ぴたりとその場から動かなくなったのだ。


 人間も、鳥も、車も、そのすべてが活動を停止している。


 不思議な力が使えそうだなんて厨二病を拗らせてしまったのかと思ったのだが、本当に俺は不思議な力が使えるようになったのかもしれない。

 どくんどくんと胸が高鳴る。今起きている光景に興奮する。


 俺はひとまず時間が停止した世界をより詳しく知るために、周りを見ながらきょりょきょろと確認しつつ歩き出した。

 ものの見事に俺以外のありとあらゆるモノが停止した世界を歩く。

 ふときになり、俺はポケットにしまっていたスマホを取り出してみる。


「あれ? スマホは使えるんだな」


 不思議なことに俺のスマホはいつも通りに使えた。

 そして、それからも俺は検証を進めていった。


 で、俺は色々とこの状況について理解した。

 どうやら、俺があるモノを『動かそう』と意識し干渉した場合、時間が停止した状態から解かれるらしい。


 ただし、例外もある。


 人間や動物といったものを動けと念じても、確かにを移動させたり、体の関節を動かしたりすことはできる。

 でも、俺が動かそうと思っても、時間が停止した状態の人間のは例外で戻ることはなかった。


 それにしても、まだまだ分からないことが多すぎるしもっと知らないとな。


 俺は色々と検証を続けながら、時間が止まった世界ってこんな感じなんだな~としみじみとした気分で歩き続ける。

 そして、そんなときであった。


「ど、どうしちゃったのよ?」


 俺と同じく時間が停止した世界で動ける人を見つけた。

 その人物とは俺が良く知っている相手だった。


「あの、同じ学校の霧島先輩ですよね?」


 そう、俺と同じように時間停止世界で動くことが出来ている人物。

 それは同じ高校に通っている3年生であり、風紀委員長をしており校則に厳しくて周りから堅物だといわれている霧島彩音先輩。

 ちなみに、俺が一方的に先輩のことを知っているだけで、別に霧島彩音先輩とは顔見知りではなく接点もない。

 いまだに状況を把握できていない霧島彩音先輩はというと、話しかけてきた俺に困ったような顔で聞いてきた。


「そ、そうだけど? ねえ、これってどういうことなの?」

「俺達以外の時間が止まってるんですよ」

「そ、それはわかるわ」

「今なら悪いことをし放題ですね」

「そ、そうね。って、悪いことしようとしないの!」


 堅物というのは本当なようだ。

 サイドテールにした三つ編みが似合う風紀委員長の叱られてしまった。

 俺はすみませんと笑いながら答える。


「でも、こんな状況ですよ? 普通に悪いことをしたくなりませんか?」

「なるけども、それをしちゃ人としておしまいよ? まったくもう、え~っと、名前を教えて貰っても?」

「2年6組の御子柴みこしば省吾しょうごです。霧島先輩と同じ学校に通ってます」

「一応、私も自己紹介させてもらうわね。名前は霧島彩音。風紀委員長をしていて、周りからは良く堅物と言われていて学校内では有名な方よ」

「っと、どうしますか?」


 一人から二人になり、俺はこれからどうするかを霧島先輩に問う。

 霧島先輩はもじもじとしながら俺に告げてくる。


「実はさっきから謎に何か使えそうな気がするのよ。でも、怖くて使おうとはおもってなかったのだけど……。もしかしたら、この力をつかえば時が動き出したりするのかも……って予想をしているわ」


 先輩も俺と同様に力が使えるような感覚がしているらしいので、時を止めた張本人である俺は慌てて先輩に言う。


「その力を使うのちょっと待った! また時間を止められるとは限らないので、今のうちになにか、何か楽しいことを!」


 せっかくの時間停止世界を楽しもうとしたときだった。

 余計なことを言ったのだろう。

 霧島先輩は少しこわばった顔つきになり声をあげた。


「ふん!」


 霧島先輩は可愛らしく唸る。

 それとほぼ同時に世界はまた時間という概念を取り戻しだした。

 あっさりと時間停止が解除されたこともあり俺は泣く。


「悪いことし放題だったのに……!」

「いや、普通に悪いことをするのはよくないから」

「でもぉ……」

「にしても、あれね。元にもどったわね」


 再び動き出した世界を見て霧島先輩はどこか安心した顔になる。

 くっ、せっかく色々と悪さできるチャンスだったのに……。

 いや待てよ? 

 

「時よ止まれ!」


 もう一度、時間停止ができないか試みた結果。

 また時間が止まり、俺と霧島先輩以外のモノは静止してしまった。


「……なるほどね。薄々感じてたけど、御子柴くんも私と同じ力が使えるのね」

「いえ、まだわかりませんよ。先輩は時間停止を解除しただけで、先輩が時間を止められるとは決まってませんし」

「御子柴くんが止める力で、私がそれを解除する力とそれぞれ別の力を持っているというケースもあり得そうね」

「というわけで、俺が解除する力を持ってるかどうか確かめてみますね」


 俺は時よ動けと念じた。

 すると、また再び時は動き出した。


「どうやら俺は止めることもそれを解除することもできるみたいです」

「ええ、そうみたいね」

「じゃ、次は先輩がどうぞ」

「……じゃあ、いくわね」


 緊張した面持ちになる霧島先輩。

 そして、すーっと軽く息を整えてから霧島先輩は呟いた。


「時よ止まって」


 その発言をした瞬間、時は再び止まった。

 ああ、うん。どうやら、俺と霧島先輩は時間を止める力とそれを解除できるという全く同じ力を持っているようだ。


「この力、やばいですよね」

「そうね……。わりと良くないわ」

「ひとまず周りに黙っておくとして……。俺、せっかくなんで、ちょっと悪さしてきます!」


 俺は漫画やアニメにでてくる主人公のような人畜無害なような出来た人間ではない。そりゃもう、こんな特別な力を手に入れたら悪いことをしたくなる。

 夢のような力を手に入れた俺は、ちょうど近くにいた二人組で歩いているカワイイ女子高生スカートの中を覗こうとすべく走り出した。

 するとまぁ、やっぱりであった。


「ありえなくない?」

「えー、それまじ?」


 いきなり、俺がスカートの中を覗こうとした女子高生が動き出した。

 いいや、女子高生が動き出したのではなく、止まっていた世界が動き出したというのが正確なところだ。

 そして、後ろから俺のことを追いかけてきた霧島先輩に俺は怒られた。



「私の目が黒いうちはあなたに絶対に悪いことをさせないわよ?」



 誰もが欲しがり、悪いことをするのにはうってつけなとんでもない力を手に入れたのにそんなご無体な……。

 俺は霧島先輩がどうして周りから堅物委員長と呼ばれているのかを、身をもって体験するのであった。













(あとがき)

 たまにはこういうのも面白そうだなとお試しで書いてみました。

 それなりに面白く出来てるのかな~と個人的に思ってるのでしっかりと書いてあげたいのですが、たぶんこういう作品ってWEB小説読者には受けが悪いので読まれなさ過ぎて挫けそうな気が凄くします。


 なるべく続けるように頑張りますが、いつの間にか消えてたらごめんなさい。


 とまぁ、色々と試験的な作品でもありますので、よかったらコメントで意見や感想などをくれると本当に嬉しいです!

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