4-3




 綾彦は自分のベッドで普通に寝ていて、その姿を見た瞬間、安堵よりも疲労感が湧いた。

 夜が明けすっかり陽が昇った頃。闇に沈んでいたあの町と同じ町とは思えないほど明るい陽射しの中、上島は1111号室を訪ねた。

「綾彦」

 呼びかけながら、乱暴に揺する。

 普段は、こんなこと、絶対にしないのだが。

「起きろ」

 しばらくそうして、ようやく綾彦が目を開けた。

 無理やり起こされたにも関わらず、綾彦の目覚めは静かで落ち着いていた。

 上島だけが不機嫌そうだ。

「これはなんなんだ」

 昨夜はどこへ行っていたのか、とか、そういうことはもうどうでもよくなっていた。

 あの絵を、眠りから覚めたばかりの顔に突きつける。

 あの黒いもやもやの絵を。

 1111号室に乗りこんで、真っ先に、綾彦のクロッキー帳を見つけて勝手にあさり、あの絵を引っ張り出していた。もう「綾彦がいやがるかも」ということは考えなかった。

「おまえも見たんだろ、これを描いたってことは」

 綾彦は上島に目を向けず、突きつけられた自分の絵ばかり見ていた。

 その目からは、感情も、考えも、読むことができない。

 ほとんど兄弟のように育ったのに、綾彦のことはもう何もわからないのだった。

「〈あれ〉はなんなんだ。〈あれ〉を見たら、僕も」

 ふと、同じようなことを言っていた人がいた、と思い出す。

 木多嶋だ。

 いつの間にか姿を消していた三年生。

「……僕も?」

 思い出した瞬間、怖くなった。

 あのときの木多嶋が何を恐れていたのか、今はっきりと理解したのだ。

「僕も? おまえみたいに? なるのか?」

 もしくは、消えるのか。

 木多嶋や渡部のように。

「なあ、なんか言ってくれよ」

 懇願してみても、綾彦は、何も言わない。

 それでも、何か言ってくれ、と上島は祈るような気持ちで待った。

 じっと待った。

 でもやっぱり綾彦は何も言ってはくれなかった。

 急に冷めてしまった上島はふらふらと綾彦から離れた。

 何やってるんだろうな、僕は。

 というか、なんで僕がこいつの面倒見ないといけないんだろう。

 ただ、いとこってだけで。

 世界の終わりを間近に控えて、みんな、いろいろなものから解放されていった。寮監や寮スタッフは「寮の仕事」から。教師や生徒は「学校」から。両親は「上島家」から……そういうことが耐えられない人もいたけれど、大抵は、自ら望んで解放されていた。でも、自分は、逆に、いろいろなものを背負うはめになってしまった気がする。

 綾彦でさえ「つらい現実」から解放されたのに。

 僕だけ。

 僕だけが、損をしている気がする。負債を背負わされている気がする。

 進路。将来への不安。少なからぬ金。孤独。人間関係。掃除当番。未知への恐怖。そして、物言わぬ親戚の男……

 負債ばかり。重荷ばかり。僕はこんなに要領が悪いやつだったのか、とガッカリしてしまう。

 そもそも、自分にとって綾彦とはなんだろう。綾彦にとって自分とはなんだろう。

 なんでもない。

 考えても考えても、本当に、ただの親戚でしかない。特別な絆を感じているわけでもない。心温まるエピソードがあるわけでもない。ただの、いとこだ。ただ、似たような時期に生まれ、遠くはない血筋を引いてるってだけだ。

 なんだか疲れてしまった。

「もう知らねえ」

 上島は絵を投げ捨て1111号室を出た。


 陽光の下で、客観的になって考えてみると、とてもくだらないことのように思える。

 すべてが。

 どうしてこんなくだらないことであんなに怖がったり怒ったりしたのだろう。

 今、冷静になって考えてみれば、あのとき自分は(ばっちり覚醒しているつもりだったけれど)実は寝ぼけていて、半分夢を見ているような状態で歩いていたのではないか、そのせいで、なんの変哲もないものを異常なものと見間違えたのではないか――と、なんの疑問もなく思える。その解釈のほうが「〈魔女〉がいた」などより、よっぽど現実的だし、我ながら腑に落ちるのだ。

 そうだ、そういうことにしよう。

 上島はてきとうなところで割り切ることにした。

 そしてこの件についてこれ以上考えることを止めた。

 いつもそうしているように。


     ・


 他にすることもないので冬休みの宿題ははかどった。

 黙々と設問を埋め、一段落したところで、のびをしながら席を立つ。

 久しぶりにコーヒーを飲みたくなった。

 こまごまとしたものを放りこんである窓下の棚から、愛用しているマグカップと、インスタントコーヒーの瓶を取り出す。これらを手に1210号室を出た。

 インスタントコーヒーの瓶には、まだ、半分以上残っている。

 でも、インスタントコーヒーも、近々、貴重品になるかもしれない。

 コーヒー豆は、一般に、標高の高い土地で収穫されるものが高品質とされる。コーヒー豆に山の名前がついていることが多いのはそのためだ。低地で収穫されるものの品質が劣るというわけでは必ずしもないが、品質に加え、高地ゆえにコストが余計にかかるため、どうしても高価になるのだ。

 現在、標高の低い土地で栽培される豆の収穫高が、著しく減少している。もちろん、海面上昇のせいで。海面上昇がこのまま進めば、リーズナブルな豆は、いずれ採れなくなる。いや、もう採れていないのかもしれない。となれば、高地で収穫される豆をインスタントコーヒーに回すか、もしくは、インスタントコーヒー自体の生産が止まるか――そもそも、コーヒーがどうだとか言っている場合ではなくなるか――

 どうなるか、まだ、わからない。

 そんな記事を、最近、雑誌で読んだ……


 食事の時間ではないにもかかわらず、食堂にはちらほら人がいた。それぞれ、インスタント食品なりウキタ屋で買ってきた軽食なりを、もそもそ食べていた。寮に残っているやつの生活パターンなんて、大体似通ってくるものなのだ。

 給水機と電気ポットは、ドア付近に置かれている。

 衛生上の理由だとかで、電気ポットは食堂にしか置かれていない。つまり、温かい飲み物が欲しければ、寒い廊下を往復して食堂まで行くしかない。1210号室は食堂から距離があるわけではないからさほど苦ではないが、棟の一番端にある部屋なんかだと、この往復が億劫になってくる。往復しているうちに、せっかくの熱い飲み物も冷めてしまう。だから、魔法瓶に熱湯を入れて部屋に持ち帰る者、あるいは、独自でこっそり電気ポットを所有する剛の者もいる。

 上島より一足先に電気ポットを使用しているやつがいた。天堂だ。こいつも、カップラーメンにお湯を注いでいた。食事は三食きっちり出してもらっているけれど、育ち盛りは寝ていたって腹が減る。

「よう」

「おお」

 同じクラスになったことはないけれど、一年生のとき居室が隣で、掃除当番も同じ班だったから、わりと親しい。今年度も同じ一号棟になったから、顔を合わせれば話くらいする。無駄に顔がよく、清楚な美少年然としているのだが、その見た目を裏切って、ガサツでひょうきんなやつだった。

 現在は1108号室だったはず。

 こうして一対一で話すのは久しぶりだ。

「天堂は、年末年始はどうすんだ。寮に残んのか」

 そう訊くと天堂は笑った。

「年末年始に帰るようなところがないやつが、今、寮に残ってるんでしょ」

 相変わらずズケッとものを言うやつだ。

 でも、たしかにそうだ、と上島も苦笑した。愚問だった。

 そのあとは、なんとなく、掃除当番の話になった。

 寮生の数が減ってくれば、当然、ひとりあたりに課せられる仕事の量や頻度も増える。掃除当番は特に顕著だった。掃除ばかりしている気がして、辟易するが、仕方がない。寮生以外で寮を掃除してくれる人などいないのだから。

「そうだ、聞いてくれよ。俺、これ食ったらさ、俺と、あと長谷とで、1203号室、片付けないといけなくてさ」

「片付ける?」

「うん。今朝になって急に山田さんから頼まれて。ついてない」

「1203号室って、百合田だろ。どうかしたのか」

「いや、なんか、退寮したらしくて」

 ギョッとした。

 退寮?

「『する』んじゃなくて、『した』? 百合田が?」

「そう。もう出てったんだって。百合田が」

「いつ?」

「さあ、正確なところは聞いてない。けど、まあ、最近じゃないかな」

 唖然としてしまった。

 全然、気づかなかった。

 斜向かいなのに。一番近所なのに……

 綾彦をさがすためとして就寝時間以降に出歩いたあの夜から数日が経っている。

 その間、百合田と顔を合わすことは、不思議となかった。

 百合田が引きこもり気味になっている気はしていたけれど、だからといって、こちらから顔を見に行く義理もないと思っていて、だから、ずっと放っておいたのだが――

「でも、どうして、いきなり」

「ノイローゼだってさ」

「ノ、ノイローゼ?」

 上島のこの反応に、天堂は意外そうな顔をした。

「驚くようなことか? たしかに、最近じゃちょっと珍しくなったけど」

「……あの、その片付け、僕も手伝っていいか?」

 いきなりこんなことを申し出たら怪しまれるかも、と思ったが、天堂は「仕事が楽になる」と、むしろ喜んだ。


 海面上昇が進み、世の中の混乱が深刻なものとなり、ミナ高の廃校も決まった頃。

 寮生の中に、ノイローゼと呼ぶべきか抑鬱状態と呼ぶべきか、とにかく「すべてどうでもよくなった」というようなことを言って塞ぎこみ、回復しないまま退寮する者が、多数出た。これは、寮内だけでなく、世の中全体で見られた傾向だったのだけれど――つまりはこの延長として、自殺や失踪も激増したのだけれど――世の中が安定するに従ってその数はとんと減り、最近そのように訴える者は、天堂の言うとおり、珍しくなった。

 だからと言って、ゼロになったわけでもない。

 でも、百合田がそうだったとは。

 まして、それを理由に退寮してしまうとは。

 なんだか、すごく、後味が悪い。

 だって、百合田自身が言ったのだ。「行くところのない人間に寮を出ていけって言うのは、死刑宣告みたいなもん」だと。「自分から出て行ったのなら、野垂れ死んだって自業自得」だと。

 この時期に寮に残っていた百合田だって、おそらく、「帰るところのない者」なのに。


 天堂がカップラーメンを食べ終わるのを待って、一緒に一号棟へ戻った。

 上島のほうは結局コーヒーを飲まなかった。

 途中、同じく一号棟の住人である1107号室の長谷と合流し、1203号室へ。

 1203号室は、以前ちらっと入ったときと、ほとんど様子が変わっていなかった。

 百合田のテリトリーであった部分は、ざっと見る限り、荷物のほとんどが残されているようだった。ベッド周りも、勉強机の上も、すぐにここでの生活が再開できそうなくらい生々しく、たっぷりと、物が置かれている。これで退寮したというのが本当なら、最低限のものだけ持っていったということになるだろう。

 それほどまでに急いでいたのか、それとも、全部どうでもよくなっていたのか。

 百合田がいつも着ていたジャージの上下も、ベッドの上に軽く畳んで残されていた。洗濯せずそのまま放置して、時間も経っているせいか、ちょっとにおう。

「これ、こんなに荷物あるの、ホントに全部捨てちゃっていいのかよ」

 念のため訊く。

 さすがの天堂も自信なさげだった。

「山田さんは、そうしろって。寮で預かるわけにもいかない、預かってもどうせ近々捨てることになる、って」

「そりゃそうだけど」と上島は呻いた。

「あとで文句言われないか?」と長谷も言う。

「捨てられて困るようなもの置いて退寮するほうが悪い、って理屈らしい」

「はあ……まあ、そうか」

「そう、だから、ゆりたん秘蔵の特殊性癖なエロ本とか発掘しちゃっても、何も見なかったことにして、廃棄だぞ」

「わかってるよ」

「アホか」

 とにかく作業を始めなければ。突っ立っていても終わらない。

 天堂はクローゼットを、長谷はベッド周りを、そして上島は勉強机を、それぞれ受け持つことになった。

 教科書、参考書、授業のプリント、いずれも二年分すべて残っているようだった。そして、ノートも。百合田の、ちょっと子供っぽい丸い字で埋め尽くされているノートは、ひとつにまとめるとかなりのボリュームになった。

 このボリュームの分だけ、百合田は勉強に向き合ったということだ。

 日記にも等しい、彼の日々の努力の軌跡だ。

 こんなものまで、本当に、捨ててしまっていいのだろうか。

 ……どうすればよかったのだろう。

 どうしてやれば。

 百合田の、あの、気の迷いとも勘違いともつかない話を、本腰入れて洗いざらい聞いて、真に受けてやれば、百合田は満足したのだろうか。そうしてさえいれば、ノイローゼを訴えたり、それを理由に退寮したりしなかっただろうか。

 でも、そんなこと、上島にはできそうもない。

 上島は百合田の保護者でもなければいとこでもなく、親しい友人ですらないのだから。

 そういうことを上島に期待していたとするなら、それは人選ミスというものだ。

 百合田には、悪いが……

 悩んでいても進まないので、とにかく心を無にし、機械的に手を動かす。同じようなサイズのものでまとめてビニール紐で縛り、部屋の隅に積んでいく。

 黙々とその作業を続ける。

 天堂と長谷も、黙々と作業を続けている。

 こういう作業は、三人とも、初めてではない。少し前、退寮者が続出した頃には、その後片付けを在寮生でやらされたものだった。ここまで大量に荷物置き去りっていうのは、さすがに珍しいけれど。

 勉強机にはペンケースも残されていた。

 見覚えがある。教室で百合田を見かけるたび同じ視界に入ってきた、キャンバス地のペンケース。詰めこまれた中身でごろごろに膨れ、角が黒っぽく汚れている。

 こんなものまで置いていったのか。

 これも捨てなければならないのか。

 ファスナーを開き、一応、中身を検める。使いこまれたペンや定規や消しゴムなどにもみくちゃにされるようにして、ふたつ折りにされた小さな紙片がいくつか入っていた。うちひとつを摘み出し、開いてみる。

 そこには、胡麻のように小さな字で、世界史の年表が書きこまれていた。

 別の紙片も取り出し、開いてみる。

 これにも、非常に細かな字でみっしりと、数学の公式が記されていた。

 この紙片、ペンケースの中にある分はすべて回収し、天堂や長谷に気づかれないよう素早くズボンのポケットに押しこんだ。静かにファスナーを閉める。そして、何事もなかったかのように片付けを再開した。


 いざ片付けてみると、さほど広くない部屋でも、そこに詰めこまれた人ひとりの持ち物というのはこんなに多彩になるものか、と驚かされる。すべて片付けてしまうまで、結局、三人がかりで二時間弱かかった。

 清掃まで終わらせたところで、一号棟長である山田を呼び、チェックしてもらう。

 寮長・芹沢もなかなか規律に厳しい人ではあるが、厳しさで言えば山田は芹沢以上で、ちょっと神経質でさえあった。そのぶん仕事は正確かつ迅速なのだが。相対するときは、いつも、ちょっと緊張してしまう。

 貴重品や粗大ゴミなど、留意すべきものも特に見当たらなかったので、チェック後はすべてゴミ集積所に運ぶことになった。まだ使えるもの、しかも、自分のものではない、ここにいない他人のものを、大量に捨ててしまうというのは、すごく抵抗がある。でも、しょうがない。

 惜しいからといってこの寮に保管しておくことすら、もはや、意味はないのだから。


 すべての作業が終了したあと。

 天堂たちと別れ、自室へ向かいながら、上島はあの小さな紙片について考えた。

 目にした瞬間、すぐにピンと来た。

 よく覚えていた。

 だって、上島もそれなりに真面目に取り組んだのだから。

 先日の試験範囲の内容、その中でも特に、確実に出題されるであろう、と思われる要点ばかりが、小さな紙の中にまとめられていた。

 そんな紙片を、ペンケースの中に入れていたなんて。


 百合田は、不正を、カンニングを、していたのだろうか。


 真っ先に思い浮かべた可能性はそれだった。

 上島でなくても、何も知らない人間がいきなりこの紙片を見たとしても、やはり「カンニングペーパーか?」と、まず思うだろう。

 もちろん、違うかもしれない。

 この紙片はただのメモかもしれない。

 うっかりペンケースに入れたままにしていただけかもしれない。

 だって、こんな危ういものを、決定的な証拠になるものを、試験が終わったあとまでずっとペンケースに入れたままにしておくだろうか? ペンケースなんて、誰に触られるかもわからないのに。百合田は頭のいいやつだった。こんな単純なことに気づかないなんてことは、ないはずだ。やましいところがないからこそ、入れたままにしておいたのかも。

 でも……

 そこに気が回らないくらい余裕を失っていたのだとしたら。

 罪を犯した自覚があったからこそ、あれだけ〈魔女〉に怯えていたのだとしたら。

 渡部や木多嶋のように、「カンニングでいい成績を獲った自分」も、海に引きずりこまれてしまう、と思ったのだろうか……

 いや。それ以前に。

 なぜ、カンニングまでして、成績を上げたかったのか。

 こんな世の中になってしまったのに。

 成績や学歴が意味をなすのかどうかさえ曖昧な世の中に。

 順位表を見上げる轟の呟きが耳の奥に甦る。

「なんで頑張り始めたんだろう(今さら頑張ったって仕方ないのに)」

 わからない。

 真相はわからない。百合田は寮を去ってしまった。確認しようがない。

 でも、とにかく、紙片を自分以外の誰かに見られるわけにはいかない。


 インスタントコーヒーの瓶と乾いたマグカップを抱え、階段を昇っている途中、踊り場の窓から、細く立ち昇る煙が見えた。

 前庭の隅で、庭師のおじさんが、ささやかな落ち葉焚きをしている。

 上島は慌てて取って返し、玄関から外へ出た。

「すみません」

 庭師のおじさんに駆け寄る。

 おじさんは、白い息を吐きながら、相変わらず麦藁帽子をかぶっていた。

「これも、一緒に燃やしてもらえませんか」

 ズボンのポケットに押しこんでいたあの小さな紙片を、小鳥の餌のように掌にのせ、おじさんに見せる。

「なんですか、これは」

「……紙、です」

 とんでもなく間抜けな回答だが、それ以上に言えることがなかった。

 おじさんは「ふうん」と頷いた。

「普通の紙ですね。紙ならいいですよ」

 ホッと胸を撫で下ろしつつ礼を言い、上島は火の近くに屈んだ。火の圧に飛ばされてしまわないよう気をつけながら、ひとつひとつ、確実に、火の中に投げこんでいく。

 小さな紙片はたちまち燃え上がり、灰になった。

 それを見て、上島はようやくホッとする。

 これで、もう、大丈夫だぞ、百合田。

 もう怯えなくていい。

 おまえの罪の跡はどこにもない。

〈魔女〉はおまえを追わない。

 歌も、もう、聞こえないはずだ。

 それを百合田に伝えるすべもまた、もう、ないのだけれど。



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ワールドエンドワンダーランド ぼくらの寮と町と魔女について 42℃ @42do

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