第6話 隣の席のギャルが俺だけに超絶優しい件

 昼があっという間に過ぎ――放課後。


 誰もいない教室で甘城さんは、俺の机の上に座った。



「草一郎くん」

「な、なんだい?」



 なんでクラスメイト全員が去るまで残っていたのか分からない。なにか話したいことがあるという。



「あたしね、草一郎くんのことが好きなんだ」

「え!?」



 ド直球の告白に俺は目を白黒させた。


 とととと突然すぎるだろう……!


 心の準備なんて出来ているはずもなく、ただただ頭が真っ白になった。


 甘城さんが俺のことを好き!?


 ……あ、いや。ここ数日の行動とか言動とか見ていると、そんな気はしたけどね。距離感もかなり近かったし。


 俺も甘城さんのことは好き。

 正直、こんなに優しくされたことは人生で一度もなかった。


 毎日が嬉しかった。



「実はね、小学一年生の時だけクラスが一緒で、隣の席だったんだよ」

「……マジ?」

「うん。草一郎くんは覚えていないだろうけどね」



 ぜんぜん憶えていなかった。

 小学校一年はガキすぎてな。


 確かに隣の席が女の子だった気はするけど、黒髪だったし……まさか甘城さんとは思わない。まさかあの時の女の子が彼女だったとは。


「どうして俺を好きに?」

「隣の席だったのもあるけどね。当時の草一郎くん、あたしに優しくしてくれたからね。キュンってきちゃったわけ」



 そうだったのか。子供の頃の俺、ナイスだな!



「そういうことだったんだな」

「そ。だからね、二年でクラスが同じになって、すっごく嬉しかった」



 手を重ねてくる甘城さん。

 こんなに嬉しいことはない。


「運命みたいだな」

「驚きだよね。しかもさ、好きという気持ちがまったく変わってなかった」



 ここまで思われているなんて、俺は幸せ者だな。


 当然、俺に断る理由もないし、甘城さんとは一緒にいて退屈しない。これからずっと隣にいて欲しいさえ思っている。



「ありがとう、甘城さん」

「付き合ってくれる……?」


「もちろんさ。俺なんかでよければ」


「わぁ、よかった! 断れたらどうしようかと」



 ホッとしたのか甘城さんは、そのまま俺に抱き着いてきた。ふわっとした感触に包まれ、俺はドキドキした。


 す、すごく良い匂いと肌の感触っ。



「甘城さん――いや、霧」

「うん、やっと名前を呼んでくれたね」



 見つめ合っていると、自然と唇が重なっていた。甘城さんの方からキスをしてくれた。 甘い感触がした。


 驚いたことにお互いに初めてのキスだった――。



 ――隣の席のギャルが俺だけに超絶優しい理由が分かった。



 おかげで俺はバラ色の人生を手に入れた。

 ずっと寂しい人生だった俺。


 最高の高校二年を送り、三年も奇跡的に霧と同じクラスになった。そして卒業後は同じ大学へ。同棲もはじめて今もラブラブに変わりない。



 - 完 -



◆ありがとうございました!


カクヨムコン用短編なので、ここまでです。

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隣の席のギャルが俺だけに超絶優しい件 桜井正宗 @hana6hana

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