【短編】俺の幼馴染が俺にベタ惚れだった件

@kasutera86

俺の幼馴染が俺にベタ惚れだった件【短編】

「おい、見ろよあれ」

「わぁ、なんかのモデルか?、、」


 そんなふうに言われている彼女はまさしく俺の幼馴染、西園寺美香さいおんじみかだ。

 

 小さい頃から勤勉で、しかも容姿端麗で、文句なしの女の子だ。藍色の目に色白の肌、髪は風になびくほど艶めく綺麗なストレートロングヘアだ。




「おい、お前の幼馴染がお前の方に来てるけど」

 笑いながらそういうのは俺の友達、杉野圭太すぎのけいた



「そんなわけないだろ、学校ではあいつから話しかけてくることなんてないぞ」俺はまさかと思いながら期待に胸を躍らせた。



 しかし、彼女は俺を素通りした。その瞬間グッと気持ちが強張った感じがした。

 その瞬間に自分の隠していた思いに気づいた。俺は彼女のことが好きだと、




「違ったな」

 クスクス笑ってからかわれた。


「別に期待してねーしっ」

 そう言って自分の落胆した気持ちが悟られないよう強がってしまった。



 ある日の昼休み、弁当を食べようとしている時、誰かが屋上に来て欲しい言っていると伝言を受けた。



(誰が呼び出したんだ?しかも屋上って、告白でもしてくるのか)

 そんな自意識過剰な妄想をしながら俺は屋上についた。そんな中、目にしたのは俺の幼馴染である西園寺美香だ。



「久しぶり、もしかして呼び出したの美香?」



「そうよ」

 彼女は長い髪を耳にかけ大人びた表情を見せながら言った。



「杉本君、私の”しもべ”にならない?」


 俺は予想外の提案に衝撃を受けた。



「え、、、しもべ?」

 困惑した表情を見せながら言った。



「杉本君に手伝って欲しいことがあるの」


 彼女の周りには信頼できる人が唯一俺しか居ないらしい。


 いつも学校の中心にいる彼女は色々と煩雑なことがあるようだ。そして俺は承諾した。



 彼女のそばにいるためならと。




 翌朝になり、スマホの通知が鳴った。

 美香:(至急 準備室に来て)



 彼女からのメールだった。俺は急いで学校に向かい、息切れしながらも準備室に到着した。

「はぁはぁ、、、お、お待たせ、、」

 汗を腕の袖で拭って彼女の方を見た。

 


「そんなに急いで来なくても大丈夫だったのに」

 彼女はクスクス笑いながら言った。



 彼女はポケットの中のハンカチを取り出し、俺の首元をそれでぬぐい始めた。俺はどんどん動悸が速くなっているのを身体中で感じた。



「こんなに汗かいて、喉乾いてない?ほらこの水飲んで」彼女はペットボトルを渡した。



「お、ありがと」

 お礼をいい飲んだ後彼女は俺の耳元で囁いた。

「私の飲みかけだったけど、大丈夫だった?今更で遅いけど」

 俺はそれを聞いた瞬間、顔がみるみる赤くなっていった。



 彼女は確実に俺の反応をみて楽んでいる。



「じゃあ委員会の仕事一緒に手伝って」

 俺は心臓の鼓動が治るのを時の流れに任せた。




 放課後になり、彼女からまたメールが来た。

 美香:(至急 体育館横の倉庫に来て)


 行ってみると、彼女は珍しく髪を高く結んで、倉庫の整理をしていた。

「この荷物の整理を手伝って欲しくて」

 生徒会に入っている彼女はすることが多く毎日忙しいみたいだ。



 着々と荷物を整理している時、彼女の方に目をやると、重い荷物を棚の上に戻そうとしていた。



 何事においても隙を見せない彼女が珍しく棚に戻すのを苦戦している時、荷物の中身が彼女に向かって落ちていきそうになった。


 その瞬間、俺は無意識に彼女の上に覆い被さった。



 俺は心配で咄嗟に彼女の顔を触り「美香!大丈夫か?」

 いつにも増して大きな声で聞いた。


「だ、大丈夫よ。」

 彼女のピンクの頬が少し赤く染まっていったのに俺は気づいた。

 彼女の息遣いを感じるくらい近距離にいることにも気づいた。

 そして体制を直した。



「助けてくれてありがとうね」

 彼女は少しドギマギしながら俺の目を逸らしてそう言った。



 残りの片付けを終えて、帰ろうとした。だが、彼女にはまだすることがあるようなので、先に帰ろうと昇降口に向かっていると、彼女と最も親しいであろう友達、塙山はなやまかれんが待っていた。



 彼女のことを待っていると思った俺はそのまま通り過ぎようとしたが声が聞こえて立ち止まり相手の方に目をやった。


「ねぇ、一緒に帰らない?美香の事で話したくて」


 美香の事?どんな話だろうと思い、一緒に帰ることにした。



 話の内容は美香の好きな人の話だった。


 俺は美香に好きな人がいるとは知らなかったが、あんなに周りにいい男がいるので当たり前かと少し心苦しくなった。俺が少し暗い表情をしているのを気づくと意味深な発言をした。


「あなたも気づいてないの?美香の気持ちに」

 続けてこう言った。

「あなた美香のことが好きでしょ!」

 自分の気持ちを見透かされているのがわかり驚いた

 。また、それと同時に疑問が湧いた。


ってどう言うこと?」


 塙山はハッとし、少し言いづらそうにこう言った。

「美香もあなたのことが好きなのよ。」



 衝撃の稲妻が身体中を走り、嬉しさが溢れた。

 そんなわけがあるかとあり得ないと思いながらも、



 なぜこんなことをしたのかと聞くと、塙山曰く毎日のように美香は俺のことばかり話し、塙山は俺の気持ちも分かっていてとても焦じれったく感じていたらしい。それで、美香に告白しなよと催促しても、関係を壊したくないといいずっと同じ関係を続けているのに見飽きて、俺に少しヒントを与えようとしていたらしい。


 クールなイメージの美香がそんな一面を持っているとはとも思った。


 そして、この事実を知った俺は彼女の仕事が終わるまで昇降口で待っていた。

「え、なんで杉本君がここに?」

 彼女は不思議そうに俺を見た。



 俺は覚悟を決めた。

「美香、俺自分の気持ちに気付きながらも全部無かったことにしようとしてた。けど、、もう諦められないんだ。俺は美香のことが好きだ!」


 彼女は口に手を当て、顔を赤らめ目を輝かせていた。



 そして彼女は急に俺に抱きついた。

「私も、私も杉本君のことが好き。」




 となって俺たちは付き合うことになった。

 もちろん、しもべとしての関係も続けている。















(至急 幸せです)




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