第43話 代わりに

「エ……エ、エロゲ!?」


 聞き慣れない。

 だが、確実に強烈な意味を持つ言葉に思わず大きな声を上げると。

 ひいらぎは、頷いて言う。


「うん。一応18禁とかじゃないみたいだからそこまで過激じゃ無いと思うけど、要素もあるかもってこと」

「そういう、要素……」


 エロゲという言葉に連なって、そういう要素ともなればそれがどんな意味を指しているのかはわかる。

 わかる、が。

 というか。


「柊は落ち着いてるみたいだが、そういうゲームをしたことがあるのか?」

「ううん、無いよ。エロゲどころか、恋愛ゲームしよって思ったのだって今回が初めて」

「なら、どうしてそんなに落ち着いてるんだ?」

「どうしてって言われても。高校生になって、エロゲぐらいで騒ぎ立てる方が変じゃない?」

「え!?」


 今まで、俺は柊に教えてもらった『THE・FPS』という特定のゲームしかして来なかったため。

 そのゲーム以外に関する知識や情報などはほとんど無いが。

 高校生なら、そういうゲームでいちいち騒ぎ立てないというのは当然のことなんだろうか。

 俺が思考を巡らせていると、柊は口を開いて言う。


「むしろ、こういうのって男子の方が好きだったりしてる人多いと思うけど、空風そらかぜはしたこと無いの?」

「あるわけないだろ?前にも言ったが、俺にそんな時間の余裕は無い。おかげで、前にも言ったが俺の生活を支えさせて欲しいと言う人も居る始末だ」

「……そんなことも言ってたね。あれから、その人とはどうなったの?」

「変わらず……というか、むしろよりその考えが強まっているかもしれない」


 陽瀬ひなせも、白百合しらゆり先輩も、あんも。

 一応俺がになった時まではということで、どうにかその大きな優しさを抑えてもらっている状況。

 だが、もし俺が限界になったり、体調を崩したりしたら。


 ────その時こそ、可能性がある。


 とは言っても、期末テストはまだ先で。

 バイトの方も忙しい時期を抜けたため、ほとんど毎日のバイトで疲れてはいるものの。

 前の中間テストの時の、中間テストとバイトの忙しい時期、のように。

 今ほとんど毎日しているバイトの他に、何かがは。

 俺が限界になったり、体調を崩したりする心配はないだろう。

 俺がそう思っていると、柊は俺の顔を見ながら。


「もしそうなら、空風が前ほどじゃないけどちょっとしんどそうな顔してるからっていうのも原因の一つだと思うよ」

「自分だと少し疲れてるぐらいの感覚だが、それが顔に出てるのか」

「出てるよ。……空風は、前私が言ったこと覚えてる?空風が誰かに生活を支えてもらいたくないっていう話には賛同したけど、私も空風に体は気をつけて欲しいって言ったこと」


 そう言われ、俺はその時の記憶を脳内で瞬時に振り返る────


『……そういう、ことだったんだ。……空風は、その誘いになんて答えたの?』

「断ったに決まってるだろ?俺の事情で、人にそんな迷惑は掛けられない」

『そっか……そう、なんだ。……それって、相手が迷惑に思って無くても?』

「当然だ。相手が迷惑に思ってなくても、負担になっていることに変わりは無い」

『私も、空風と同じ意見だよ』

「っ!そうか!」

『……でも、体調気をつけて欲しいのは私も一緒だから、そこだけは気をつけてね』


 鮮明にその時の記憶を思い出したところで、俺は頷いて言う。


「もちろん覚えてる。だから、あれから少しはそのことも意識して────」

「少しじゃダメだよ」

「……え?」


 俺が、その柊の言葉に困惑していると。

 柊は、続けて口を開いて言った。


「空風は元々気を張り詰めてたんだから、もっと気を緩めないと」


 そう言うと、床に座っていた柊は。

 同じく床に座っていた俺の方に、手と膝を床につける形で。

 目元を暗くしながら、ゆっくりと迫ってくる。


「ひ、柊?」


 俺は、突然の行動に困惑して、座ったまま後退する。

 が、すぐにこの柊の部屋にあるベッドが背に当たって、これ以上は後退できなくなった。

 そして、柊はそんな俺との距離を縮めてくると。

 いつも通りの落ち着いた声色で、だが────いつもとは違い、どこか色気のようなものを感じられる声色で言った。


「ねぇ、空風。今から────エロゲの代わりに、二人でしない?」



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大物ヤンデレ美少女たちが、俺を養いたいと言いながら関係まで迫って来始めた件 神月 @mesia15

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