こっくりさんより怖いもの
良子さんはまだまだ昔、オカルトブームだった頃にこっくりさんで悲しい事になったそうだ。彼女は絞り出すように『話しておかないとねえ……』と言い話を始めた。
その頃のブームという事で中学生の頃にこっくりさんが流行っていたのだと言う。テレビが娯楽の王様で、こぞって霊能者や怪談を取り上げていた時代だ。その頃こっくりさんを学校でして見つかる度に怒られていた。しかし一度も十円玉が自然に動いた事は無かったと言う。問題は自然に動かなかった事なのだそうだ。
ある日、友人エーコ、ミコと一緒にこっくりさんをする事になった。いつも通り大判のノートをちぎって五十音とはいいいえを書き、鳥居のマークを書いて完成だ。
早速友人たちと十円玉を出してこっくりさんを呼んだ。良子さんや自分で指に力を入れて十円玉を動かした。そうして見事にこっくりさんが来ているように思わせ、怖がっている振りをしながら質問を続けた。
テストのヤマや、明日授業中に指名される人など様々なくだらない質問をした。それに彼女は恣に回答をした。楽しくなりいたずら半分に面白い回答をしていった。
その結果に振り回される友人二人を見るのが楽しかった。しかし、最後の方になってエーコがした質問で風向きが変わった。
『こっくりさん、S太くんに告白したら成功しますか?』
そのS太は学年でも人気の男子だった。良子さんは少し迷ってから『いいえ』に向けて十円玉を動かした。近づくにつれて泣きそうになっていくエーコには悪かったが、今更止められず、そのままイイエに合わせてこっくりさん最後の質問は終わった。『お帰りください』というお願いを無理矢理はいの方に動かして終わらせた。
後味の悪い遊びになったと思ったが、こっくりさんはもうしないだろうななんてことを思いながら帰宅した。
翌日の放課後、エーコがS太に告白をした。ミコと良子さんに立ち会ってくれと言われ、渋々ながら付き合った。あんな質問で泣きそうになっていたのに告白なんてよくやるなと思ったが、自分が悪い事をしたなとは思っていた。
そしてエーコの告白は残念な結果となってしまった。『付き合っている人がいるから』とあっさり振られてしまい、三人で近くの喫茶店に入り文句や雑談をした。
エーコも気が紛れたのか、その日は泣き止んで帰った。一安心したのだが、そうは上手くいかなかった。
翌日からエーコが登校拒否になったのだ。彼女の家に電話をかけたりもしたが、彼女とは中学の間二度と会う事は無かった。そうなると高校に進む事も無い彼女とは道が分かれ、結局仲が良かった友人たちとは自然に関係が消滅した。
「私はね、思うんですよ。あの時十円玉を無理して動かさなければまだ三人で笑い合えたんじゃないかってねえ……今更だけど、私の懺悔ですよ」
それだけ言って彼女は静かにコーヒーを飲んだ。私は書き留めておいたのだが、霊の一つも出てこない、ただこの後味が悪いだけの話になんだか惹かれるものがあった。
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