第23話 戦支度
子祐は
――
そも、あの
――
あの瞬間、子祐が玉英から
いくら燕薊
一般に可能かどうか、ではない。玉英の剣にして盾。そう
口の中へ広がる
【
青陰の
現在の
その董蕃
――趙敞は、その程度のことがわからぬ者ではない。
むしろ、
昼ながらも
その
子祐に
玉英と琥珀の目の前にある机もほぼ同様だったが、
「やはり
伝令の話である。
「ハッ、
先日襲撃を受けた
「とは
「ああ、そう願おう」
特に
先に趙敞が触れたように、番丹へ向かった伝令は八日前に戻って来たため、他の者達についても遼南を経由して
「各地への伝達が成功している場合、していない場合、
趙敞が頭を下げる。――玉英の手元にあるうちの十数巻は、趙敞が持ってきたものだ。しかも
玉英は笑い
「感謝する。……そなたも
あの刺客が玉英の所在を麒角側へ伝えたならば、いつ攻められてもおかしくはない。
春、というのが
「ハッ、
報告は
いっそ「
「まだ着いておらぬのやもしれんのう?」
使者は既に下がらせており、執務室に残っているのは玉英と琥珀、袁泥のみ。
「それは……」
無いはずだ、と続けようとしたが……
刺客の足取りは
「……可能性は、ある」
「じゃろう?
琥珀は
玉英は「後でね」と口の動きだけで伝えて微笑み、
何が、あり得るのか。――何があり得ないと、思い込んでいるのか。
一部の作物に関しては、
「子祐、貴様、一段と腕を上げたな」
子祐は
加えて、春先に燕薊へ戻ってからは、
「有難き
子祐が頭を下げる。
「しかし、不足か」
「
玉英とはまるで異なる水準ながら……
「その調子で、私のことも引き上げてくれ」
「ハッ!」
いざという瞬間、子祐へ頼り切りにならぬよう、今のうちに頼っておく。
『三つ子半島』
子祐の意見を考え合わせれば、あの刺客は少なくとも青陰が玉英の勢力圏であることを知った上で
にも
あるいは、あの男の性格上あり
この場合、あの男の行動からは背景を何一つ読み取れない上、情勢を訝しむ意味も無くなる。――
表現は
結論、
玉英の本来の狙いは、およそ一年後の、速攻にあるのだ。
周華には、
この『河東』のような広域呼称に入る『河』は基本的に竜河のことである。
竜河は、鎮戎公領域から鬼族領域に
竜河の流れに沿う形で、鬼族領域において南下している区間の西側を
これを地図上で簡略に表現するならば、左辺と下辺を竜河とする正方形をより小さな正方形へ四等分し、左上が太西、左下が河東、右下が河北、右上が太東と
より細かく言えば、河北の最
よって、河北の最
玉英の狙いは、これだ。
ただし、
燕薊内城、夜の寝室。
玉英は琥珀の左へ寝転がり、既に可愛らしい寝息を立てている琥珀の柔らかな白い耳を右手の二本の指でゆっくりと
河北は竜河と太水に挟まれている上、中央を
必然
――
を
太水
とは言え、警戒すべき勢力と
また、両都市を陥せさえすれば、他の中小都市は
両都市を比べれば、
――臨斉はまだしも攻め
と思われた。
燕薊や
――甘鄲は、
距離も無論重要だが、それ以上に、警戒を要する都市が複数あること、そして中原の
距離は、
最も単純なところでは、遠くなればなる
されど今回、この観点での問題は無かった。甘鄲の北、太水北岸に
対して、
――
臨斉の西、河北を
――
甘鄲の南東、章水と竜河の間に位置する河北西部の第二都市。
――
甘鄲の南西、章水から水を引いて発展して来ている河北西部の第三都市。
といった、常備兵で一万数千、徴兵すれば五万から六万は出せるだろう中都市が複数あり、甘鄲を囲うだけで済まないことは大きな問題だった。
各都市の
――無視出来る位置と兵力ではない。
これらの都市に対しても、やはり早早に囲う必要があった。何より、
――
関連して、
勢力全体の兵力では
旧燕薊軍との戦では、突雨
――広過ぎる。
ひたすら平野の広がる中原で――既に囲んでいる都市以外に対して――情報を遮断することはほぼ不可能に近い。
突雨
特に、葛原の位置はこの点でも重要となっている。
都市の防備という点ではそこまで優位性はないが、交通の
甘鄲や鄴安を囲いつつ葛原まで
――やはり、
あらゆる面で
――あと二手、いや、せめてあと一手欲しい。
『三つ子半島』の多くの都市と同様、玉英の立場を明かすことで下ってくれる都市もあるかもしれないが、
――どれだけの者が耳を
そう意識したためか否か、琥珀の寝息がやけに
――京洛攻めの際
――そこへ
深更である。
玉英も、眠りに
秋。
飛び込んで来た知らせは、もし本当ならば喜ぶべきものだった。しかし、警戒が
玉英への、
玉英の正体は明かさぬまま、『中央へ背く者』が居た場合の
が、男の伝えた相手の
「殿下にお
だったのだ。
それも、
鬼種百合譚~周華国戦記~ 源なゆた @minamotonayuta
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