第14話
先程まで戦っていたとは思えないほどの静かになっている森の中に2人が無言で1匹の膝を付いた魔物を見据える。だが、いつまで経っても魔物は動こうとしないため藍斗は少し魔物から距離を取り魔物に声をかける。
「どうした、もう終わりか?」
「あぁ、我の負けだ」
魔物は手を挙げ、抵抗をしないという意思を伝える。それに気づいた藍斗は「そうか」と短く言う。そしてやっと魔物が立ち上がり、藍斗の元に歩み寄り言いづらそうに口を開いた。
「そこで、お前に負けた我が言うのも変だと思うのだが……」
「ん?どうかしたのか?」
「……我をお前の舎弟にしてくれ!!」
「はぁ!?何言ってんだお前!?」
藍斗は驚きながら「何の冗談だ?」と思っていたが魔物の真剣な目を見て冗談ではないのだと察した。
そして藍斗は少し考え込み、覚悟を決めたように魔物を真剣な目で見据え、声をかける。
「……すまない。俺はお前の…いや、誰の上にも立てない」
「なっ!?……何でだ?お前の強さなら、全てを支配できるなのに何故それをしない!?」
「………強いだけじゃ利用されるだけだ。力さえあれば統治出来るなんて考えない方が良い」
「…利用」
藍斗の言葉を聞いて魔物は、「利用」という言葉に異常に反応していた。そして魔物は納得しながら藍斗にどう話そうかと思考を巡らせる。
(無理だろうが、言うだけ言ってみよう。それで無理なら潔く諦めるとしよう。これ以上彼らに迷惑をかけるのは忍びない)
と、魔物は半ば諦めた雰囲気で藍斗に再度提案をする。
「舎弟がダメなら、使い魔はどうだ!?」
「え、使い魔?九尾が使い魔になるなんて聞いたことが……」
「それは誰も使い魔になりたがらない意地っ張りな性格が多いから前例がないというだけだ。我ら九尾も、やろうと思えば誰とでも主従関係を結ぶことは可能だ」
「そ、そうなのか。彩夜、君の考えはどうだ?」
藍斗は考え、彩夜の方を見た。例え彩夜がどのような立場だとしても藍斗の家族であることは変わりないのだ。すると彩夜は藍斗の言葉に首を縦に思い切り振っていた。彩夜は藍斗と魔物の戦いを見て魔物がどのような魔物なのかを分かったのだろう。そんな彩夜の行動を見た藍斗は少し笑いながら魔物の方に向き直る。
「さて、俺の家族の考えは肯定だったようだな。じゃあ、俺も断る理由は無い。ただ…お前が嫌になったらいつでも解約出来るということは把握していてくれ」
「……あぁ、肝に命じる。……感謝するぞ。えっと…」
「藍斗だ。こっちの女の子は彩夜。お前の名前を聞いていいか?」
「……申し訳ないのだが、我には名前がないのだ」
魔物は申し訳なさそうにする。一方で藍斗と彩夜の2人は、魔物の名前がないというのは想定内だったためあまり驚かなかった。そして藍斗は魔物の方に向き直り、口を開く。彩夜は藍斗の言う言葉を察し、藍斗の言葉を待っていた。
「
「亜由樹…良い名だな。ありがとう、藍斗」
「そうか、気に入ってくれたようで何よりだ。じゃあ、使い魔の契約をしようか」
「あぁ、よろしく頼む」
そして藍斗は無言で頷き、使い魔の契約をする。自分の血を亜由樹の左前足の甲に垂らし、亜由樹の血を藍斗の右手の甲に垂らした。
(多分これで出来るはず…だけど。少し時間をあけた方がいいのか?)
その刹那、藍斗と亜由樹の手(前足)が眩い光に包まれた。彩夜は藍斗と亜由樹を心配そうに見守る。
裏切られ続けた最強の復讐 紫野 葉雪 @Hayuki1007
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。裏切られ続けた最強の復讐の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます