第3話 ヤケクソな姫姉さま
皆様、ごきげんよう。
私は宗教画『教典を
「――はあ。平和な世界。言語も文化も統一された世界では、違いによるいざこざはなくなり、まさにフラミンゴス教会が思い描いた理想郷となりましたのね」
聖道院の広場を歩きながら、淑女らしく振る舞う。宗教戦争で
「聖人なんて絶対反対です! 死んだ後に聖人になったからって、一体それが何になるというんですか! 名声ですか? 栄誉ですか? バカなんですか!?」
「お前にバカだと言われる筋合いなんてないんだよ――って、いけませんわね。そのような汚い言葉を使っては。今日から私は聖人に認定されるため、
「ということは、つまりリリア・フラーシルは、俺の嫁にはならないということですか?」
「ええ、そうです、ドゥマン・ヴァザール司祭。貴方の妻になることは、貴方がお母様の産道に戻り、再び
「
そう言って抱きついてきたドゥマン・ヴァザールに、
「えええ? な、なして剣をっ……?」
急に
「あの宗教画にはね、実は私の愛剣も描かれているのよ。『教典を
ふふ、と剣を掲げ、上から笑った私に、ドゥマン・ヴァザールがバッと土下座した。
「ははー! お見逸れしましただぁ、姫姉さまぁ! なんと神々しいお姿だぁ……! ぜひともオラの嫁さ来てほしいですだぁ……!」
「ちょ、え、やめてよ、ドゥマン・ヴァ――」
「お願いですじゃあ、お願いですじゃあ!」
「だから、やめッ……」
わらわらと周囲に人が集まってきた。聖道院の司教やら司祭やら聖道女やら一般人まで。傍目からみれば、私達は今、土下座している男と、されている女の構図。コソコソと「修羅場」やら「痴話喧嘩」やらが聞こえてくる。
「……や、ヤメテってば! 分かったから土下座しないでよっ!」
半泣き状態で言い放った私を見上げて、ドゥマン・ヴァザールが計算高く笑う。
「ならば、俺のことは『ドゥマン♡』もしくは『ダーリン♡』と可愛く呼んでくださいますね、リリア?」
「わ、わかったわよ! ……ダ、ダーリン♡」
もうヤケクソだった。
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