足らざる元カノ達

白川津 中々

◾️

これまで五人の女と付き合ってきた。


一人目はアンナ。

こいつは料理が上手くて俺好みの味付けをしてくれる女だったが無理やり茄子を食わそうとしてきたから別れた。


二人目はドゥルチェ。

ハーフである。

単純に顔がよく知り合いにマウントが取れていたがキレると平気で殴ってくるので別れた。


三人目はトア。

優しくて俺に気を遣ってくれるいい女だった。

しかし絶望的にセンスがないので別れた。

なんで蛍光グリーンのジャージにブラウンのタイトスカート履いてくんだよおかしいだろ。


四人目はキリコ。

声が最高に可愛かったが趣味が絶望的に合わないうえに自分の好みを押し付けてきたから別れた。


五人目はシンコ。

胸がデカかったが常に不機嫌で基本的に他責思考だったから別れた。



皆、一長一短あったわけだが、短の部分が許せないレベルであったため別れた。許容できないものはできない。嫌な部分が見える奴とは一緒にいない方がマシである。しかし長は全員文句なくよかった。経験できただけでも、付き合っただけでも価値があると思う程に。

その最高の長を経験したせいでたんに短がないだけでは満足できず、俺は超、長を求めるようになってしまっていた。これまでの長に匹敵するような女でないと付き合えない。そう思っていた矢先、目の前に、五人の元カノが現れたのだった。




「一生懸命料理を作ったのによくも振ってくれた」


「顔がいいなら全部許せるんじゃなかったのか」


「あの、あの後色々考えたんですけれども、私の服、そんなに変じゃないですよ、やっぱり」


「テメーのクソダサい趣味を矯正してやろうとしてたってのに何が不満なんだよ」


「全部お前が悪い」


なんてこった。別れた女のフルハウス。俺の人生はここで終わるのかと絶望したが、そうではないようだった。


「しかし私達は考えました」


「三人揃えば文殊の知恵」


「五人揃えばフルスペック」


「絶対無敵の完全彼女」


「諦められないあなたにコンティニュー」


「が」

「っ」

「た」

「い」

「!」


眩い光が迸って消えた。そして、彼女達は一つとなった。


「これで五長の女……五長分の花嫁候補だ。さぁ、交際の続きを始めようか」



料理が上手くて顔が良く優しさに溢れており声が可愛くて胸がでかい女がそこにはいた。なんてこった最高じゃないか。俺は即断で付き合うことにした。

彼女が茄子を料理に仕込み暴力的でクソダサセンスかつ馬鹿みたいな趣味を押し付けてくる他責癖のある女だと知るのは、すぐ後の事である。

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