第3話

「こんにちは⋯⋯って、えっ!? 透けてる⋯⋯? いや、貫通? それ、大丈夫なの?」

「まあ、そうだね。幽霊だから」


 ええ!? と、さっき以上に驚いている幼馴染⋯⋯後藤ごとう日和ひより


「わ、私、霊感無いよ?? なんでっ。というか凄い! 幽霊見えてる! いや、やっぱ怖い!」


 え、ええ⋯⋯なんかテンパってる⋯⋯。


「怖くないって〜」

「っ!? どういうこと⋯⋯?」

「まあまあ。

 ⋯⋯ふふっ、『はじめまして』。僕はライ。これからよろしくね!」


 僕のことを忘れた君に、『はじめまして』の挨拶をするのはヘンだけど、改めて関係を構築していこうと思う。

 僕の心残りの相手は君だよ。そう心の中で語りかける。


 ⋯⋯さて、どうやって説明しようかな。というか、そもそもこれ伝えていいの? うーん、どうなんだろう。

 死神に聞けるのは1週間後。それまで、とりあえずは伝えないでいようかな。駄目だったら怖いし。


「よ、よろしく⋯⋯。私は後藤日和だよ」


 うん、知ってる。そう口走りそうになってしまった。危な⋯⋯。


「そ、それで、どういう事?」

「ちょーっと成仏できなくて。『なぜか』日和には見えるみたいだね〜」

「う、うん⋯⋯」


 やっぱり、僕もだけど理解に苦しむよね。


「だから、これから、日和と行動を共にしてもいい? 変なことはしないからさっ」

「⋯⋯見えないもんね? いいよ」


 見えたら駄目なのかなあ。まあ、見えたら、僕が変な人ってことで終わりそうだけど。

 ⋯⋯変な人ってことは否定しないでおく。僕自身そう思ってるし!


「ありがとう!!」

「うん。じゃあ、私は教室戻るから」


 あー、休み時間だったのか。だから、お手洗いにいた、と。

 僕も着いてこ。


 日和とは、幼馴染といっても、僕の親の意思で、僕はここよりももう少しレベルが高い高校へ入学した。もちろん、ここもレベル高いけどね。

 ここは日和が通っているから行きたかったから、ずっと僕も行きたかった。それに⋯⋯僕が通っていたはずの高校にも、行ってみたいなあ。


「うわー、帰ってきたよ」

「ほんと教室が汚れるわ〜」

「っ⋯⋯」


 ⋯⋯は? お前ら、何言ってんの。今教室入ったのって⋯⋯日和しかいないでしょ? なんで?

 ⋯⋯ いや、まだ決まったわけじゃない。それに、もしそうだとしても、幽霊には何も出来ない。落ち着け。


 ふー⋯⋯。日和がこっちでも虐められてたなら、もう、どうして学校別になったんだ、と思う。


「あんなブスなのに、陽太ひなたくんの近くにいて⋯⋯っ」


 ⋯⋯っあー⋯⋯。また、そういうのか。⋯⋯なんのために僕が日和から離れたんだよ⋯⋯っ!!!


「⋯⋯あの子可愛いけど、性根腐ってるらしいよ」「え、まじ〜?」「そそ。入学当初から日野ひのさん達に嫌われてて笑えるよね」


 そんな声も、教室のどこかから聞こえてきて。『俺』はもう我慢できそうになかった。


「⋯⋯お前ら一回、死んでこい」


 心の底から出てきた言葉は、とても声音が低く、日和は肩をビクッと震わせた。

 声が小さかったから、日和以外聞こえなかっただろうけど。⋯⋯あ、幽霊だからそもそも聞こえないんだ。


 何も出来ない自分に失望していたら、いつの間にか昼も過ぎ、午後の授業になっていた。

 午後、1番最初の授業はグループで行った。⋯⋯日和は余ってしまった。


「んじゃ、後藤は高橋たかはしのグループな」


 ⋯⋯ふう。大人しそうな女子達とのグループで良かった。さっきの⋯⋯日野とかいうやつとのグループだったら、なんとかして日和をここから連れ出していたなあ。

 僕がこんなに心配するのは日和に関することだけなんだよなあ、と改めて再確認し、苦笑いをする。


 ⋯⋯さて、僕はこれからどうしようか。

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だからこの想いは、伝えない(仮) 音羽鈴心 @OtowaSuzune

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