第11話 陰キャ先輩とクラスメイト
タイミングが一緒になった事で、そのまま先輩と一緒に登校する事になった。
「そういえば先輩、自分でも小説書いてるんでしたよね。昨日書いてたのは小説投稿サイトに出す奴でしたっけ?」
「う、うん。そんな感じ……よ、ヨムカクってサイトで……ランキング争い、してる」
「へぇ、凄いじゃないですか」
「い、今書いてる奴、ジャンル別の週間ランキング……91位」
それ凄いのか?
「う、ウチの天下……近い。へへ……」
かなり遠いような気がするんですが。
文字通り天の下の下じゃね? 知らんけど。
とはいえ書けるだけで凄いとは思うけどな。
日本語の読み書きができる事と文章の作成は同じようで全然違うと思うから。
ピッチングと送球ぐらい話が違うと思う。
「け、圭一郎君もその内部誌作る時、何か書いてもらうから……なんならネットにも何か出そう」
「書けますかね素人に」
「さ、最初は誰だって素人……それも圭一郎君は、ちゃんと本を読み始めたのが昨日ってくらい素人。だから……伸びしろたっぷり」
なら俺の伸びしろに期待しよう。
成長曲線なんて人それぞれだから、何かをきっかけにググっと文学少年に目覚めるかもしれない。
それこそ朝陽だって何かコツ掴んだタイミングで馬鹿みたいにうまくなりだしたからな。
その辺の事情は文武共に変わらないだろう。
……ってちょっと待てよ、高校生くらいの年齢って少年で良いんだっけ? 青年か?
うーん、日本語の読み書きと文章の作成は違うとは考えたけど、果たして俺日本語の読み書き大丈夫なんだろうか。
……まあどちらも一緒に伸ばしていこう。
その為にも。
「じゃあ将来の伸びしろに期待して、俺もアカウントだけ作っておきますか」
「つ、作り方、分からなければ教えるから」
「流石にWEBサイトの新規登録位はある程度何とかなるでしょ。その時が来たら書き方の基礎位は教えてくださいよ」
「う、ウチに教えられるかな……」
「天下近いなら行けるでしょ」
「じゃ、じゃあ頑張る。任せて」
なら俺も頑張るか。
そんな事を話しながら校門を通過した時だった。
ドン、と仁王立ちして腕を組み、入ってくる生徒を待ち構えているセミロングヘアの女子生徒がいる。
もしかして持ち物検査やってる風紀委員的なアレか? いや誰の荷物もチェックしてないから違うか。
つまり変な人だ。
関わらんとこ。
「ようやく来たわね、赤羽圭一郎君!」
関わってきた。
当たり屋だ。
「た、田山さんだ」
隣でボソッと先輩が呟く。
「知り合いですか?」
「お、去年も今年も同じクラス……ほ、殆ど喋らないけど。陽キャだし……生きる世界、違う……」
違うも何も同じ部屋の中に居るじゃん。
「あ、白井さんおはよう!」
「お、おは……おはよう……」
二年連続で同じクラスでこの調子だと、なんかこう……ほんと大変そうだな、うん。
同じ世界で生きられてる気がしない。
と、そう考えていると、一緒に登校してきた俺達を交互に見て田山先輩は呟く。
「なんだこの組み合わせ……いや、この組み合わせはまさか……ッ!」
ハッとした表情を浮かべた田山先輩は言う。
「赤羽一派から赤羽が抜けた分が補充されてる!」
「あ、赤羽一派……?」
俺が思わず聞き返すと、田山先輩は言う。
「あなたのお姉さん、文芸部のやべー奴こと赤羽美琴に、文芸部のそこまでやばくない奴の白井さんの二人で赤羽一派って呼ぶ生徒がちらほらいたわ」
「先輩も若干やばい奴扱いされてますよ」
「え、冤罪だ……」
「いやでも白井さん去年の11月の……」
「そ、その節は……ご、ご迷惑をおかけしました」
冤罪じゃないじゃん。
順当だよ順当。
何やったんだよマジで。
いや、正確には何やらせたんだよ馬鹿姉貴。
「いやいや、何度も言ったけど良いって。誰も怒ってないし楽しかったし。寧ろあれで白井さん含めてクラスの仲が良くなったでしょ」
「へ、あはは……そ、そうかも」
本当にそうか? 全然良化しているように見えないんだけど。
……いや、良くなってこの感じなのか?
先輩の普段の学校生活がより一層心配になってきたところで、田山先輩の視線が再びこちらに向く。
……この人と面識は無い。
面識はないが、向こうが一方的にこちらを知っているのであれば、大体どういう立ち位置の人なのかという予測は付く。
「で、赤羽君。昨日はどうして見学に来なかったの?」
十中八九、野球部の関係者だ。
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