第2話 異世界

俺の初恋は近所にいたお姉さんだった。俺が小学生であっちは高校生。年の差があることは分かっていた。けど諦めきれなくて、中学生になったら必ず気持ちを伝えようと決めた。しかし、お姉さんは俺が中学に上がる前に村を出ていった。俺は幼いながら後悔しまくった。そして高校一年生の夏休み、お姉さんが村に帰ってきていることを知った。俺は心を踊らせながらお姉さんの家に行ったんだ。そこには、旦那さんと仲睦まじく話している姿があった。薬指にキラキラ光る結婚指輪が眩しかったな…。


「…っ…い…てぇ……」


起き上がったと同時に、頭が握りつぶされるような痛みが襲った。俺が頭を押さえている横には、パンツ姿の蓮がいた。下に下がっていたズボンを履かせ、俺はその場に立ち上がった。


「どこだ…ここは」


俺の家とは違う西洋風な壁や床。俺は物珍しそうに部屋を歩き回った。すると、ドアをノックする音が聞こえた。


「お、一人起きたか。どうだ体調は」


質問を投げかけてきたのは、あの可愛らしい女性だった。


「頭が痛いんですけど」

「テレポート酔いだ、少し経てば治る」

「テレポ…って、はぁ?!」

「何をそんなに驚くんだ。君たちの世界でも使われてるだろう」

「いやいやいや!そんなもんあってたまるか!」

「そっちの人間にも魔力くらいある。どれ、手を貸してみい」

「こ、こうか?」


差し出した手を握られ、一瞬焦ったが、その瞬間眩い光が部屋中に舞った。


「あの」

「なんだ」

「俺は坂口智也といいます。お、お名前は」

「名前か?私の名前はヒナだ」

「ヒナ…日本人っぽいな」

「まぁ正式には、カルディニール=サルバヒナだ。長ったらしいからさっきの名前で呼んでくれ」

「わ、かりました…」


ヒナか、名前相応の可愛らしさだな。それよりもずっと俺の手を握っているが、緊張で手汗が出てきた。出来れば早く離してほしい。


「ありゃ、珍しい」

「なんかダメだったのか」

「魔力がクソ雑魚、底辺だな。それどころか魔法耐性もあまりない」

「めちゃくちゃ悪いじゃん」

「…いや、こいつは」

「またなんか悪いのか」

「お前、剣が得意だ。これも珍しい」

「剣て…あんまりだな。それなら魔法が良かった」

「そうでも無いぞ」


ヒナは紙とペンを取り、俺を手招きした。


「魔力というのは使い続ければいつか無くなる、というのは想像できるか?」

「なんとなく分かるな」

「この世界では、魔力と体力は同じなんだ」

「どういうことだ?」

「つまり、魔力を使えば体力もなくなる。そして逆も然りだ」

「体力を使えば魔力もなくなるってことか?」

「その通りだ」

「へぇ、持久走とか結構差が出そうだな」

「そしてお前は体力がありえないほど多い」

「……え?でも、それじゃさっきの魔力はクソ雑魚、底辺っておかしくない?」

「そこなんだ、問題は」

「問題?」

「この世界の人間は体力を魔力に変えたり、魔力を体力に変えたり、臨機応変に対応している」


ヒナは紙とペンから手を離し、俺の胸の真ん中を人差し指でさした。


「お前には、その機能が備わっていない」

「機能…。つまり俺は体力を多く持ってるくせに、それを魔力に変えられないから雑魚ってことか」

「その通りだ。だから魔力を使わない剣が得意だと言ったのだ」

「えぇ…剣……。あ!こいつは?こいつはどうなんだ」

「あぁパンツ男か。やってみよう」


ヒナは俺と同じように、蓮の手を握り、眩い光が差した。


「どうなんだどうなんだ?」


これで蓮が俺より体力が少なかったら、蓮に一つ勝てる。魔力は、都合悪いから比較対象にはならん。


「ほう。面白い」

「何が面白いんだ、なぁなぁ!」


ヒナは俺の方を向いて、目を輝かせて言った。


「こいつは魔力も体力も一国の王に匹敵する」

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初めまして異世界と現世界 akoI @akoi__man

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