初めまして異世界と現世界

akoI

第1話 これが出会い

俺が生まれ育ったところは、森、林、田んぼに畑。そして時々選挙カー、みたいな、詰まるところ超ど田舎だ。


「恋愛が……したい」


俺の名前は坂口智也。年齢は18歳で、彼女はいたことなし。というか、こんな田舎でできるわけない。


「何言ってんの。あんたはこの畑が恋人でしょうに」

「はぁ?!畑が恋人って、どんな性癖だよ!」

「母さん、畑みたいな子なら大歓迎よ」

「いや、そうそういないだろ」

「あらそう?」

「てか、俺は東京に出てビックになるから」

「バックって…あんた」

「バックじゃなくてビック!」

「あはは!ごめんごめん」


こんな感じで俺の母さんは、お気楽、能天気な人なのだ。親子で漫才しようとか本気で考えるくらいに。


「おーい、ともー」

「あら、蓮くんじゃない」

「蓮と遊ぶ約束してた」

「そうなの?夕飯はいる?」

「多分。連絡するよ」

「早めにお願いね」

「はいはい。じゃ、行ってきます」

「いってらっしゃい」


縁側からそのまま外に向かい、待ってる友人のところへ向かった。

こいつの名前は金谷蓮。俺と同い年で、一回だけ彼女がいたことがある。俺に内緒で彼女を作った裏切り者だ。


「そんなじろじろ見られたら穴開くわ」

「お前、また身長伸びたな」

「ともが縮んだんじゃない?」

「あほか、170㎝あるわ」

「あれ、俺と10㎝以上差があるな。おかしいな、次会った時には抜かす、とか言ってたのに」

「……争いは何も生まないのです。」

「勝手に争ってたのはそっちだろー、って、誰だあれ」

「んあ?」


蓮が指差す方にはこの村では見たことない人物だった。田舎のコミュニティは狭いので、知らない人が入ってくるとすぐわかってしまう。それにしても、


「あの人何してんだ」

「さあな、てかとっととゲームやらせろよ」

「あ、待て、あそこ立ち入り禁止区域だろ?」

「そうだな。まぁ、勝手に入ってんだから、自己責任だろ」

「追っかけてみようぜ」

「は?おい、蓮!!」


俺の名前を呼ぶ声も聞かずに、蓮は怪しげな人物についていった。立入禁止区域は、土砂崩れの恐れがある、というのが建前で、実際は管理ができない土地で何かされたらめんどくさいからだ。


「れーん、やっと追いつ…」

「しっ。静かに」

「なんだよ」

「あそこ」


蓮の目線の先には、先程の不審人物がいた。周りをキョロキョロとみており、いかにもこれから何かしちゃいます、みたいな感じだ。周りも少しずつ暗くなってきたため、俺は持っていたスマホで時間を確認していた。


「……おい、とも。人間ってツノとか生えるか?」

「生えるわけ…な、い」


不審人物が被っていた帽子を取ると、その頭にはツノが生えていた。俺はあっけに取られて持っていたスマホを落としてしまった。スマホの落ちた鈍い音に、俺も蓮も不審人物も反応した。


「とも、逃げんぞ」

「え?」

「早く!!」


蓮に手を引かれ走り出そうとした時、体が一瞬にして重くなった。それは蓮も同じのようで、地面に貼り付けられているようだった。


「やはりついてこられてたか」

「ぐっ…おま、えは……」


息が上手く吸えない。苦しくて、逃げたいのに何かが邪魔して、立ち上がれない。


「人間には少々キツイかもしれんな、この魔法は」

「どう、いう…」

「さて、質問をしよう」


俺たちの目の前にしゃがんできた女。髪はロングで、顔もそこそこ可愛かった。


「一体誰に頼まれて後をつけたんだ」

「ちが…おれ、た、ちは……」

「おまえ、が…しらない、やつ……だったからだ」

「……なるほど、嘘はついてないみたいだな」


女は俺たちを見てから、手をパンッと叩いた。そしたら、さっき重圧はなくなり、苦しくなくなった。


「けほっ、はぁはぁ…」

「悪いことをした。てっきり新手かと勘違いした」


素直に謝ってきた女はやはり可愛かった。初めての彼女はこんな人がいい、と思ってしまった。


「あの…」

「なんだ」

「新手って、あの人らのことっすか?」


すっかり回復した蓮が指を刺したのは、黒ずくめの人達だった。俺と蓮、そして可愛いやつを囲んでいた。


「な、なんかまずそう…だったりします?」

「かなりまずい状況だ」

「死ぬまでに彼女が欲しかった」

「うおおい、諦めんなバカ!」

「ちっ、人間らにはあまり使わせたくはないのだが」


意味深なことを言った後、女はなにかぶつぶつといい、地面に手を置いた。するとどうだろうか、眩い光が俺たちを包んだ。


「おい、お前ら早くこい!」


女が手招きしている方は、よく分からない穴だった。底はどうなってるのか分からないくらい、水色の交じった白だった。

女に手を掴まれ、俺は咄嗟に蓮の服を掴んだ。


「バッカ!離せこの野郎!」

「うるせぇ!お前も来るんじゃい!」

「おい!1番前の男、踏ん張るんでないわ!」

「踏ん張らせろよ!んな、危なそうなとこ誰が行くか…!」

「ちょっと腕、外れる!痛い痛い!!」

「おまっ、ズボン脱げ…」


スルッと手が下にいったと思ったら、蓮の服を掴んでいたはずが、いつの間にか蓮のパンツが丸出しになっていた。


「お前ええええ」


蓮が踏ん張ることをやめたと同時に俺たちは穴の中へ吸い込まれていった。

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