第4話 知らない人

「土曜日に飲み会をやろうよ、5人くらいで」


 リサの提案で、土曜日に飲み会をすることになりました。


 駅裏に20時ということだったので少し前に行くと、同級生の山本くんが1人で待っています。もう1人の同級生は遅れるらしいと言い、リサは連絡が取れていない状況のようです。


「結局4人なの?」「どうなんだろうね?」と話していると、僕のスマホが鳴りました。電話をしてきたのはリサです。


「リサも遅れそう?」

「うん、もうちょっとかかる」


 2人とも遅れるのなら、先に山本くんと店に入っておこうかな。と考えていると——。


「近くにショートカットの女の子がいるでしょ?」


 リサがそう言うので見まわすとたしかにいますが、それが何だというのでしょうか。嫌な予感がしました。


「その子も連れて、先に店に入っておいてよ」


 ——出たよ……。


 嫌な予感て、当たるんですよね。「知らない人だからムリ」と言うと「女の子を1人で待たせておくの?」信じられない、みたいなことを言ってきましたが、リサが遅れているせいでそうなっているだけで、僕たちが悪いわけではないと思うんです。


「いいから、一緒に中に入っておいて!」


 怒鳴られた後に、電話は切られました。最悪です。


「どうする……?」山本くんと話し合って、結局女の子に話しかけることに。


「あのう、リサの友達ですか……?」訊くとやはりリサの友達で、事情を説明した後に、店の中に入って待つことになりました。でも……。


 お互いに全く知らない人です。話すことなんてありません。リサの友達は、ずっとスマホをいじっているだけ。僕たちも気まずくて、たまに小声で話すだけです。


 ——か、帰りたい……。


 そんな状況が続き、30分後くらいにやっとリサが到着しました。時間的に、僕に電話をしてから、家を出たのでしょう。そして。


「えっ、なんで料理を頼んでないの?」


 なぜか僕たちは怒られました。どうせ頼んでいたら「それじゃない」とか言うくせに。


 思わず山本くんを見ると、彼の目も「帰るか」と言っていました。同じ地獄を味わった僕たちは、心が通じ合っているんです。


 一応食事はしましたが、僕たちは、二次会は断って帰りました。精神的に疲れたので。


 なぜ帰ることができたかというと、遅れて来た藤枝くんを生贄にしたのです。藤枝くんは二次会も行ったようですが、予想通り、愚痴のメッセージが止まりませんでした。


 眠くて最後まで付き合えませんでしたけど……尊い犠牲に感謝です。




〈つづく〉

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