魔導騎士団のエース
シロト
第1話
魔導騎士隊。
異界の軍勢”ヴォイド”――から人類を守るために結成された組織。
完全実力主義の魔導騎士養成学校に通い、卒業した者しか就けない精鋭たちが集う場所。
そして、本日は俺のような新人が本格的に魔導騎士隊に加わる日だ。
俺が配属されたのは、太平洋の上に浮かぶ海上都市第六メガフロートを拠点とする第六番団。ここは、魔導騎士隊の中でも実力主義が徹底している団だ。
噂では、新人が辞めることがほとんどだとか、入団した途端に過酷な任務を与えられるだとか、恐ろしい話を聞いている。
とはいえ、俺にはその程度のことは想定内だ。
俺の目標は、ただ一つ。一人でも多くの人たちの命を救える魔導騎士になること。
そのためには、どんな環境でも戦える力を手に入れなければならない。そんな俺にとって、第六番団はまさにぴったりの場所だ。
そして今、俺はこれから第六番団団長に初めて会う為、執務室の前に立っていた。
一歩踏み出して、ドアの前で深呼吸。心を落ち着けてから、軽くコンコンとノックする。
「本日より、お世話になります冴木隼人です。ご挨拶に参りました。」
少しの間の後、ドアの向こうから冷静で無感情な声が返ってきた。
「……入室を許可する。」
その声には、無駄な感情が一切含まれていない。返答を聞いてから、俺は深く息を吸い、ドアを開ける。
部屋の中に足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできたのは、長い黒髪を持ち、机の上で腕を組んでいる女性だった。制服は黒を基調とした軍服で、無駄な装飾がなく、どこか凛とした雰囲気を放つその姿が印象的だ。俺がドアを開けた瞬間、彼女はゆっくりと顔を上げた。
その目は鋭く、俺をじっと見据えている。どうやら入室の瞬間から、団長は俺のことを見ていたらしい。
そして、視線を交わす中、俺は気づいてしまった。団長が机にもたれかかるように座っている姿勢が原因で、強調される彼女の大きな胸に──
瞬間、俺は思わず視線を向けてしまった。
で、でかい…!
心の中で慌てるが、すぐに目をそらして、なんとか平静を取り戻す。
団長は俺の様子に気づいているのか、微動だにせず、冷たい目で俺を見守っていると表情一つ変えず、静かに口を開いた。
「私は、魔導騎士隊第六番団団長の高峰クオンだ。以後よろしく頼む」
魔導騎士団のエース シロト @icebox1919
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