第63話 一致団結

「それではこれから新入生剣技大会、準々決勝の試合を始めます!!」



 ついに大会も終盤戦となりベスト8まで決まった。

 リリアのベスト8の対戦相手は、Aクラスに所属しているガイル・フォールズという生徒である。



「実力は互角って言ったけど、それはあくまで普段の力が出せれば互角に戦えるという話なんだよな」



 この試合でリリアが普段の力が出せない可能性がある。その原因として挙げられるは精神面での問題だ。

 摸擬戦の結果を引きずってAクラスの生徒を相手に慎重な試合運びをするのなら、この試合は何も出来ずあっさりと負けてしまうかもしれない。



「クリス君は何でそんなに不安そうな顔をしているんですか?」


「ノエル!? いつの間にいたんだ!?」


「ずっとここにいましたよ。もしかして気づいてなかったんですか?」


「あぁ。今初めてノエルが俺の側にいることを知った」



 一体いつの間に俺の隣に現れたのだろう。リリアがステージに上がる所を見届けた時にはいなかったのに。不思議な子だ。



「クリス君が鈍いだけじゃないですか?」


「確かにそうかもな」


「それかリリアさんのことを考えすぎて周りが見えてなかったりして!」


「もしかしたらそれもあるかもしれない」



 俺はリリアの試合のことで頭がいっぱいになっていたので、他の事を考える余裕がなかった。

 だからノエルが側に現れても、声をかけてくれるまで気づかなかったのかもしれない。



「はぁ。リリアさんが羨ましいですわ」


「何が羨ましいんだ?」


「何でもありません!?」


「何でもあるだろう。ものすごく不満な表情でノエルは俺のことを見てたよ」



 今のノエルを見れば彼女が俺に不満を持ってることが簡単にわかるだろう。

 しかめっ面をして俺のことを見ているノエルを見てそう思った。



「それよりもクリス君はこの試合、どっちが勝つと思いますか?」


「正直に言うとわからない。どっちが勝ってもおかしくないと思う」


「クリス君は優柔不断ですね」


「どういうことだ?」


「言葉の通りです。私はこの試合、リリアさんが勝つと思います!」


「ほぅ。やけに自信満々だな」


「はい! 私はリリアさんの実力を信じていますから。優柔不断なクリス君とは違います」



 おぉ怖い!? ノエルが俺に対して釘を刺してきた。

 その様子はこの前2人で喧嘩していたとは思えない程清々しかった。



「(でもノエルがこんなことを言うのは、きっと2人の間で仲直りが済んだんだろうな)」



 もしかすると俺が見ていない間に2人は仲直りをしたのかもしれない。

 リリアのことを自信満々に話すノエルを見てそう思った。



「あっ!? クリス、ここにいたんだ!」


「レイラか。こんな所でどうしたんだ?」


「クリスと一緒にこの試合を見ようと思って探してたんだ!」


「レイラもリリアの試合を見に来たのか」


「うん! 私リリアのことが凄く心配」



 どうやらリリアのことを心配しているのは俺だけではなかったようだ。

 なんだかんだいってノエルとレイラもリリアのことを大切に思っているようで安心した。



「レイラさん、大丈夫ですわ」


「ノエル?」


「私達がリリアさんの勝利を信じなくてどうするんですか。あの子は絶対に勝ってここに戻ってきます!」


「そうだよね! リリアなら絶対に勝てる!」



 ノエルの自信がレイラにも伝染している。これはいい傾向だ。

 俺も含むクラス全員が一丸となって、リリアのことを応援していた。

 


「グマ!」


「リエラもリリアが勝つと思ってるんだね?」


「グマ!」



 出会ってまだ日が浅いリエラまでリリアのことを応援している。

 こんなにたくさんの人達から応援されて、リリアは幸せ者だな。



「それではこれからリリア・マーキュリーとガイル・フォールズの試合を始めます!!」


「「はい!!」」


「2人共位置について!! 始め!!!」



 この大会の審判であるロスタス先生の合図で、ベスト4進出をかけた戦いが幕を開けた。



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