第62話 普通の女の子(リリア視点)

《リリア視点》


「むかしむかしエルフの国に1人の女の子が生まれました。その子は物心がついた時、自分が他の人よりも物事が器用にこなせることに気が付きました」



 ノエルちゃんが話している女の子とは一体誰のことだろう。

 たぶんその子はもの凄い才能の持ち主で、あたしはその子の足元にも及ばないんだろうな。



「その女の子は自分の特徴を理解して努力をした結果、周りの大人達からたくさん賞賛されました。『この国始まっての天才だ!!』とか『神の子が現れた!!』と言って、周りからはやし立てられてたみたいです」


「ノエルちゃん?」


「だけど歳を取るにつれて、その女の子は知りました。自分は特別な存在ではない。どこにでもいるただの少女だということに、気づいてしまったんです」



 もしかしてこの話って、ノエルちゃんの話なのかな?

 言葉にに気持ちがこもってるし、話を聞くにつれてノエルちゃんの幼い時の話のように思えた。



「ただそれでも周りの大人達はその女の子が普通の子になる事を許してくれません」


「剣の型が出来れば『神の子だからこれぐらいは出来て当たり前だ!!』と言われ、逆に出来なかったら『どうして出来なかったんだ!!』と厳しく叱責されたようです」


「ただお父様とお母様に喜んでもらいたいから頑張っていただけなのに。どうしてこんなことになってしまったんでしょうね」



 間違いない。これはノエルちゃん自身の話だ。困ったような表情をする彼女を見て、あたしは確信する。



「(たぶんノエルちゃんは自分のことをあたしに知ってもらおうとするために、この話をしているに違いない)」



 もしかするとノエルちゃんはあたしが知らないだけで努力家なんだ。

 それこそあたしなんか比にならない程の努力をして、今の力を身に着けたに違いない。 



「それからというもの、その子は血のにじむような努力をしました。もちろん神童と呼ばれる子は努力なんてしないので、両親には隠れて努力を続けました」


「その結果日に日に周りの人達からのプレッシャーが大きくなりました。いつしか剣の腕だけでなく人格まで求められることとなり、我儘をいうことが出来なくなったようです」


「そのせいで彼女は他人に甘えられることが出来ず、誰にも悩みを相談出来ないままどんどん孤独になっていきました」


「‥‥‥‥‥」


「そんな女の子の悩みを周囲の人間は気づかず、周りにいる大人達は『お前は出来て当たり前』。出来ないことがあれば、『何でこれしきのことが出来ないんだ!!』と叱責され続ける日々が続きました」


「周りにいる子供達もあたしのことを普通の女の子として認めてくれず、誰も助けてくれません。その結果自分の悩みを相談することが出来ず愛想笑いが板につくようになり、1人孤独に泣いていたようです」


「それから月日が経ち、気が付くとその子は感情を失っていました。神童という存在を演じながら、先の見えない闇の中で1人孤独に苦しんでたみたいです」



 あまりにも壮絶な話を聞いてあたしは絶句する。

 もしこの話に出てくる女の子がノエルちゃんだとしたら、彼女はあたしが思っていたような人物ではないのかもしれない。



「以上でこの話は終わりです。何か質問はありますか?」


「1つだけ質問してもいい?」


「どうぞ」


「ノエルちゃんが話してくれた女の子はどうなったの?」


「どういうことですか?」


「生まれてからずっと血のにじむような努力をしてきたって話してたけど、結局その子はどうなったの? お父さんとお母さんにも自分のことを理解してもらえなくて、寂しくないのかな?」


「それは‥‥‥」



 あたしの質問に対して、ノエルちゃんが言いよどんだ。

 もしかしたらその後、私の想像も出来ないような出来事があったのかもしれない。



「それは?」


「どうなったのでしょうね」


「えぇ!? そこまで話してくれたのに教えてくれないの!?」


「私もその子がどうなったかわかりません! それよりも髪を梳き終えましたよ。鏡で自分の姿を確認してください」


「凄い! さっきよりも髪が整ってる!」



 あまり変わってないように見えるけど、見る人が見ればきっと違いがわかるだろう。

 さっきまでボサボサだった髪がしっかり整っていた。



「この話はただの余談です! それよりもリリアさんは次の対戦に集中してください。そして決勝戦で私と戦いましょう!」


「わかった! 次の試合絶対勝つから、ノエルちゃんも見ててね」



 そうだ。この試合に勝てば準決勝に駒を進めることが出来る。

 あたしが勝ち進んでいるトーナメントの反対の山にはノエルちゃんとレイラちゃんがいるので、あたしがノエルちゃんと戦えるのは決勝しかない。



「絶対に決勝で戦いましょうね!」


「わかった! 髪を梳いてくれてありがとう! 行ってくるね!」



 ノエルちゃんとフィスト・バンプをして、あたしは控室を出る。

 絶対この試合に勝つという強い信念の元、試合会場へと向かった。


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