僕にもなれるかな

咲良ミルク

僕にもなれるかな

  


目の前には血だまりがあった。こんなにも血があると案外濃い色をしているのだなと感じた。

 小学校は退屈。だって友達はいないし、先生はうるさいから。だから誰とも喋らない一日もあるし、学校を休む日もあった。でも、そんな僕にも好きなものがあってそれは「ヒーロー」だ。ヒーローはかっこよくてみんなから人気者で、強くて優しい。だから僕にとってヒーローは憧れでいつかなるのが夢。

 公園は僕の自由な世界。ここでなら僕は何にでもなれる。だって友達が一人もいないから、一人で好きなだけ遊べる。だから学校の帰り、僕は誰も来ない少し離れた公園で一人、ヒーローごっこをしている。悪い奴がいるのを妄想してそいつらを僕が倒す。そんな、遊びを毎日するのもヒーローが大好きだから楽しかった。いつか僕も悪い奴を倒したら、みんなの人気者になれるかもしれない。

 昨日は、誰も通らなかったのにその日は僕がヒーローごっこしている時に先生が通りかかった。先生は一人で遊んでいる僕を見て、勉強しろとか早く家に帰れとか挙句の果てにヒーローのことまでバカにしてきた。なにも言い返せなくてくやしかった。でもヒーローになれば先生もみんなも僕を認めてくれるはずなんて思いながら家に帰った。いつも家に帰るといい匂いがしてきてママがご飯を作っている。でも今日はしなかった。どうしてか分からないけど玄関を開けるとママの声がした。誰かと喧嘩しているみたいだった。見に行くとママが誰かに押し倒されていた。その光景を見た時ふと、こいつを倒せばヒーローになれる気がして近くにあった包丁で上にいる人を刺した。何回も何回も。少ししてやっと倒すことができた。もう、動かない。でも喜んでくれていると思ってママの方を見ると悲しいような怖いような顔をしていた。なんでか、分からなくて倒した人をよく見たら、お父さんだった。

 でも、僕は悪い奴を倒した。だからママに聞いてみたんだ。

「僕もヒーローになれたかな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕にもなれるかな 咲良ミルク @keito3172

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る