まひづる 🚢

上月くるを

まひづる 🚢



自転車のライトゆらゆら冬の霧

冬霧をかき分けてゆく四駆かな


細腰の黒エプロンや室の花

加湿器の少し匂へる喫茶店


舞鶴は線路の果てや開戦日

十二月八日ちかづく腕時計


遠海を惑ひまどひてはぐれ鷹

故地なくて名なく墓なし立忍


凩に地鎮の禰宜の祝詞散る

労基署の緑十字や小雪舞ふ


玻璃越しに干せる蒲団に日の匂ひ

午後の冬日ぎらりと家族写真かな


機影見えず飛行機雲の太りゆく

セーターの薄青き闇かいま見る


玄関に白菜つつむ新聞紙

子の家の厨を思ふ冬の夕


骨抜きの表示の鮭にこつと骨

組みし足痺れてなほも夜仕事


実印の姓名ホットワインかな

折り鶴を忘れぬ指や雪をんな




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