第7話

 さて、対戦舞台を整えるとはつまり、どういうことか。高橋へのいじめは確かに俺たちの戦いの邪魔をしている。だが、いじめをなくすという意味で高橋を救いたいのではない。ってか、いじめを解決させるなんて、そんなの俺の力では不可能だ。俺は非力なのだ。ならばどうするか?

 簡単な話だ。俺もいじめられればいい。彼女が最下位ならば、俺も最下位になればいい。ルールはフェアじゃなくてはいけない。そこでようやく戦いの火蓋が切られるのだ。

 そして、いじめのきっかけは事前に用意していた。木戸という、俺に好意を持っていると俺が勝手に勘違いしていた人物を利用する。

 金曜日。高橋は今日も休みだったが、もう俺に高橋への罪悪感はなかった。

 俺は昼休み、廊下に出てきた木戸を捕まえて、第一声で告白した。

「木戸さん好きです! 俺と、付き合って下さい!」

 棒読みにならないように、途中で噛まないように気をつけた。

「え、は? 無理なんですけど! てか、場所選べし!」

 場所なら選んださ。高橋を見習って、俺は教室が並ぶ廊下で告白を披露してみせた。

 いくら俺のことが大嫌いで巧妙に陰口を言いまくっていたとはいえ、その俺にこんなことされる木戸には申し訳なさが勝った。

 だから木戸には、俺の愚痴を大々的に発言できる権利と被害者になれる権利をあげよう。これでおあいこだ。

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