第14話 キコニア急降下
荒ぶる大川が目の前に現れた。従僕は赤子を抱いて土手へ登った。轟音をあげる川音が従僕の脳味噌を押さえこみ、考える力を奪った。従僕は目をつむって子どもを高く放り投げ、地べたにうっぷした。乳呑み児の泣き声があたりの空気をつんざいた。と同時に、天から雷のような炸裂音が鳴った。従僕は小さく目をあけた。大鳥のキコニアが見えた。キコニアは天から急降下してきた。その勢いで川に落ちる寸前の赤子を背中で拾いあげると悠々と飛んで行った。従僕は屋敷へ戻ってその光景を伝えたが誰も本気にしなかった。
「よほど苦しくて気が狂ったのであろうヨ」
そんな声が耳にとどいた。しかし、キコニアが赤子を救ったその光景を、あの老夫婦は見ていた。
「キコニアさまは戻ってくるね」
翁が云うと媼が答える。
「神さまの社へ戻って来るのでしょうね」
「では明日、あかつきの頃、鎮守の杜へ行って待とう」
老夫婦はそれをハタツモリのカワビに話した。カワビはオキの母親の面倒を見ながら、残された田畑を耕して暮らしていた。
「あの赤子はマロイさまの子どもに違いありません」
翁と媼はそう自分たちの考えを伝えた。カワビはうなずいて、黄昏時を待ってマロイに会いに行った。オミ屋敷は警備が解かれ酒盛りになっていたので、マロイを呼び出すのは難しくなかった。老夫婦の話を伝えると、マロイは身体を打ちふるわせて云った。
「わたしの子です。わたしとオキさまの御子です」
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