第10話 オグマ来訪
目の前に人を威圧するオミ屋敷の黒門があった。どこに潜んでいるのか、兵士の姿はなかった。ただ、門をくぐると異様に重い静寂があった。門番が奥へ声を投げた。オミがのったりと出てきた。
「申したいことがある」
オキが云うと、オミは、
「申したいこととは下男にでもして欲しいということか」
とうそぶいた。オキは怯まなかった。
「村々に一言の相談もなく一挙4ヶ所を屯倉としてささげるのは横暴が過ぎる。田畑への水口は誰にでも平らかに開く、それを破ったのも横暴である。いいかげん、勝手を通すのはもうやめよ」
「オキよ、そんなことより大和の王から特別の御辞(みことば)が届いているぞ。朝廷はミヤツコをこのわれにさずけた。その朝廷の臣下であるわれに反抗するなら、おまえを誅(ちゅう)せよというのが朝廷の命じゃ」
誅せよとは処刑せよということである。
そのとき門のあたりが急に騒がしくなり、上毛野のオグマが手勢を引き連れてなだれこんできた。
「オグマ殿」
オキは予期しなかった支援にちょっと戸惑った。
「来ないでおられようか。そなたを死なせるわけにはゆかぬ」
オグマはそう云い、オミを睨みつけた。だがオミは狡猾な余裕を見せた。
「オキ、こうして戦さ支度をした者らが、加勢に来たということは反乱の何よりの証拠ではないか」
つづいて、オグマを小馬鹿にした。
「それともオグマ殿もわが屋敷の下男になりたくて来られたか。朝廷の御辞を疑うなら、ここに大和王の使者がおわしますぞ」
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