第6話 矢面のひと
――下手に出ても意味がない。
オキはそう決断して胸の中にあるものを思いきりぶつけた。
「ここまでやるのはなぜです。たんまりの献上品でミヤツコの肩書きを横取りしたと図星をつかれ心の臓が痛みますか。オミ殿のミヤツコを認めるわけではありませんが、今はミヤツコがどっちにあるかではなく、水口分け、田畑分け、収穫分け、焚木(たきぎ)を取る林分け、それらを平らかにする方が先。わが父がやっていたように皆に平らかに分けよ。オミ殿の好き嫌いで村びとに上下(うえした)をつけるのは、村に争いの種をまき、延いては武蔵の国を2つに割って他国につけいる隙を見せるようなものですぞ」
オミは悔しそうに片頬をゆがめた。
「生意気な口を利く。ナメクジのように消えろ」
そう云うなりオミは弓弦(ゆづる)に矢をつがえた。じりじりと弦が引かれる。オキの腋の下に汗がにじむ。だが、まだオキには余裕があった。
――この距離なら矢を弾くことができる。
そう算段して太刀を中段にかまえた。そのとき甲走った声が挙がって黒い影が矢面に立った。矢面に立ったのはマロイだった。が、矢はすでに放たれ、マロイの肩の端に当たって遠くへ素っ飛んだ。オミの絶叫が奔った。
「マロイイー!」
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