第21話 宇宙(そら)から見えるパワースポット ③
心洗は小川から小さい池に水が流れ込み、そこで手を洗い、心を清める場所なのだが、
小川の始まりが岩の割れ目から滾々と水がしみ出していて、それもまた、どことなく神秘的なものを感じる。
「冷た~い!」
「・・・これは心まで清められるわ」
「カミーネ、今日はいつもより雰囲気が神妙ね」
「うん、わたしも感じてた!」
「それは・・・ここの神霊たちがそうさせるのかも」
「心霊現象?」
「違うわよりつ、神の御霊って意味」
カミーネ自身、以前は何も感じなかったものが今は、なんとなく感じることができるようになったのかもしれない。
例えるなら、クラッシック音楽の良さが全く分からなかったのに、
いろんな音楽を聴いて好きな楽曲を繰り返し聞くようになったり、
人生の酸いも甘いもを味わった後に、
改めてクラッシックを聞くと、その良さに気づけるようになったみたいな。
ワイワイと姦しく騒ぐ女性陣に今度は離れることなくけいごも連れだって行動するようだ。
「次のスポットは菩提車ね」
「え~何それ?」
「石に車が付いていて、上に回すと現世の、
下に回すと後世の願いが叶うといわれているわ」
「そんなの絶対、現世じゃん!」
「まあ、りつはそうよね」
「そう言うななはどうなのよ?」
「もちろん、現世よ」
「カミーネは?」
りっちゃんが軽く、カミーネに聞いてきた。
「わたしは・・・菩提車の前でのお楽しみ!」
以前のカミーネなら間違いなく現世と即答しただろう。
今は、現世とは、後世とはと、考えてしまい、即答できなかった。
そして、菩提車に到着する。
石碑の中心に縦に切り口が開いていてそこに木の車が回るように据え付けられている。
りっちゃんが元気よく、菩提車を上に回し、手を合わせて、
「素敵な彼氏ができますように、そして、お金もちでありますように・・・」
「煩悩が溢れているわ・・・」
それを聞いていたななみがもらすように言っている。
次にななみが丁寧に車を上に回し手を合わせている。
カミーネの番が来るが、未だに決め兼ねていた。
菩提車の前に立ち、逡巡しているカミーネを皆が待っている。
カミーネはフーと息を吐き、菩提車を上に回し、目を閉じて手を合わせる。
車がカラカラと音を立てて回っている時間がやけに長く感じれらた。
「何を迷っていたの?」
ななみがカミーネに聞いてきた。
「今の自分と領の未来・・・」
「で、どうなったの?」
「うん、明日や明後日のことより、今の自分をもっと鍛えないとなって思った。
杉を見たり、心を洗ったりしてたら、自分の小ささが身に染みて・・」
「そう」
「うん、まずは自分が大きくなる、いろんな人に出会って、話を聞いて、もっといろいろ経験して、成長する」
「それだけでも、今日、一緒に来たかいがあるわね」
ななみがカミーネを見てほくそ笑む。
その後、大岩神社にある数々の石や社を見て回る。
不動石、天岩戸、赤石、♡石。
「ハート石、可愛かった」
「りつが一番真剣に祈ってた場所ね」
「うん、わたし、愛に生きる!
そう言うななはどこが気になった?」
「わたしはここの石が5億年前にできたってことかしら・・・」
「5億年って想像もできないよ~」
「そうね、それを想像するのが面白いわ」
りつとななみのやり取りを聞いているだけで面白い。
途中、天照大御神が祀られている、かびれ神社で参拝し、
今日の最後の目的地である大岩山の山頂にたどり着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます