第20話 宇宙(そら)から見えるパワースポット ②

「て、なんで私が運転手になってるんですか?」

「けいご、土日暇でしょ、彼女いないんだし」

「え、けいごさん彼女いないんだ~」

「別に暇ではありません」

「女の子3人で神社歩かせるのは忍びないでしょ~」

カミーネに強引に運転手として連れてこられたけいごが不満そうに会話している。

「あら、わたしはけいごさんとご一緒できてうれしいですわ」

ななみだけけいごを気遣っている。


けいごは今、大卒3年目で25歳。真面目に勉学と仕事に打込んでいていたので、彼女を作る暇がなかったようだ。


朝霧の中を太田から日立に向かう国道をけいごの運転する車が走る。

太田の街を抜けるとすぐに関東平野が終わり、山間を縫うように道が走る。

霧の合間から光が下りてきて山々を照らす様子は全てが霊峰に見えるほど神々しい。

そんな中、国道から外れるとすぐに目的地の駐車場へと到着する。

時刻は8:30、季節は夏の少し前なので木々に新緑が芽吹き、青葉が目に優しい。


「着いた~!」

後部座席から元気よくりっちゃんが飛び出し、ななみ、カミーネも下車する。

けいごが最後に降り、ロックを掛け、周囲を見渡すと、第一駐車場はほぼほぼ、埋まって来ていた。


『創建、建立の時期は不明だが、縄文晩期の祭祀遺跡の発掘や、

日本最古の書の1つ「常陸國風土記」(721年)に

「浄らかな山かびれの高峰(大岩山の呼称)に天つ神鎮まる」

とされる事から、古代より信仰の聖地であった事が窺える。

中世には山岳信仰とともに神仏混淆の霊場となり、

江戸時代に至っては水戸藩初代徳川頼房公により出羽三山を勧請し

水戸藩の国峰と位置づけ、

藩主代々参拝を常例とする祈願所であった』

ななみが携帯を操作しながら内容を読み上げてくれる。


「縄文時代からあるの?」

「そうらしいよ・・・信仰の聖地ってなんか凄いね」

「貴女、他人事ね、水戸神峰、将来、祀られる側になるんじゃない」

「え~そんな大それた人間じゃないよ、わたし」

そう、カミーネの本名は水戸神峰なのだ。

「祀られるかわ分かりませんが、領の歴史に名を連ねるのは間違いないでしょう」

けいごが冷静に言う。

「それってどういう意味?」

「他意はありません」

そう言って神社の方へと歩いて行ってしまった。


「凄い、おっきい~!」

今日は大岩神社、初心者のりっちゃんがリアクション係だ。

りっちゃんが見上げているのは3本杉。

領の記念物してもされている樹齢推定600年の地上3メートルの位置から3本に別れている、高さ50メートルの杉の木たちだ。

「これだけで、もう神々しいわ」

「・・・凄いわね」

ゆっくりと感じ入っているカミーネを見て、りっちゃんが、

「カミーネは何回も来てるんじゃないの?」

「行事として来るのと、自由に見れるのは違うよ~」


『祭神は国之常立神(くにのとこたちのかみ)や大国主神(おおくにぬしのかみ)など26柱。

標高530mの御岩山が御神体で、御岩山中に188柱が祀られています。

その由緒ある歴史と、188柱にものぼる御祭神が存在することから、日本全国ほぼすべての神様にお参りできる神社として、以前から近郊の人々の厚い信仰を集めている』

「ですって」

ななみが携帯の説明文を読み上げてくれる。

「188も神様がいるの~やばぁ」

「・・・一柱一柱、どれだけの人の想いや信仰が集められているのか、想像もつかないわ」

「信仰心のないわたしでも心に来るものがあるわね」


ななみの読み上げを聞きながら、3本杉を後にし、進むと、

『心洗』でけいごが真剣に手を洗っている。

「どうしたの、けいご?心が汚れているの?」

背後からカミーネが声を掛けると、ビクっとしてけいごが振り返り、

「ひ、姫様・・・いえ、決してそのようなことはありません」

「怪しい~なぁ、けいごさん」

「火のない所に煙は立たぬ、汚れ無き心なら洗う必要なし、ね」

りっちゃんが感覚でななみは理詰めでけいごに襲い掛かる。


JK3人組相手では優秀と言われたけいごでも手を焼かされるようである。

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