笠門の栗

第3話 笠門の栗 ①

「ハァー・・・」

「どったの?おっきなため息ついて」

私のため息を聞きつけて、隣の席のおかっぱ元気印のりっちゃんが話しかけてくる。

「また、パパと喧嘩しちゃった」

そう言って、頬杖をついて不貞腐れた表情をしていたら、

「出た出た、カミーネのかまちょが」

「え、私ってかまちょ?」

「ウフフ、たまにね」

りっちゃんはそう言ってウインクをする。

「で、今回はどうしたの?」

なんだかんだ言ってりっちゃんは私の話を聞いてくれる。


「ふ~ん、カミーネのしたいことが自己満足か」

「私のしたいことが民の幸せや望みになってるのかなぁ・・・」

「そんなの、やってみなければわからないわ」

前の席のななみが眼鏡を押さえながら振り向いて続けて言う。

「例えば、海浜のロックフェスだって誰が幸せになってるかなんてわからないじゃない」


毎年、夏に行われる日本最大級のロックフェスティバルだが、一時期、流行り病で開催場所が変更になったことがあった。

その時の地元の落胆ぶりは子供だったカミーネの記憶にも残っている。


「そうだね。やってみなければわからないね!」



カミーネの父、水戸光山は徳久川の流れを組む由緒ある系譜で

偕楽園が日本三大庭園なので住居には向かず、

今は常陸太田にある西仙荘に居を構えている。

その関係でカミーネは通学圏内である、私立聖基督学園に通っている。


りっちゃんとななみは席の近いクラスメートである。


「ロックフェスみたいに盛り上がる、何かいいアイデアないかしらね」

「そんなの簡単に見つかったら苦労しないわよ」

そう言ってりっちゃんが紙袋を差し出す。

カミーネはおもむろに紙袋に手を突っ込み中の物を取り出す。

「栗だ~」

「うん、昨日、笠門のお祖母ちゃんが送ってくれたんだ、ななもおたべ~」

そう言ってななみにも袋を向ける。

「笠門は栗の生産量日本一なのよ」

ななみがそう言いながら袋から栗を取り出す。

「え!そうなの、しらなかった・・・」

カミーネは驚きながら栗を食べる。

「美味しいのに、有名じゃないよね」

「うちのお祖母ちゃんも変化を望まないからね~」

りっちゃんがそう言いながら隣のけいらにも紙袋を向ける

「栗なら俺、モンブランが食いたいなぁ」

「失礼な奴!」

けいらはりっちゃんに腕を捻りあげられてた。


「栗、日本一、モンブラン・・・・こ、こ、こ」

「ニワトリ?」

「これだ~~~!!」

「何が」

「日本一のモンブランだよ!」


カミーネは叫び、立ち上がった。

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