エーデルワイスとスターチス-Remind Arc-
@ziasoma
第1話「Light up」
ダッ、ダッ、ダッ…
大地を強く蹴り上げ、力強く
走り出す…
こうなった理由は、ただ一つだ…
サカヅキ「やっべぇ遅刻する…!!」
…馬鹿なことをした。
徹夜で勉強してたら気がついたら
もう4時…そして軽い気持ちで寝たら
遅刻ギリギリに起きてしまった。
サカヅキ「クソ…こんなはずじゃ
なかったんだがな…!!」
…間に合え、そんなことばかり
考えていた…
ガラッ!!
サカヅキ「…セーフか!?」
担任「残念だったな、
ギリギリアウトだよ…」
サカヅキ「何だと…クソッ、
嵌められた…」
男子生徒「そんなこと言って、
どうせ徹夜で勉強でもしてたんだろ…」
サカヅキ「うぐっ…」
担任「勤勉なのはいいことだが、
あまり遅くまで起きないように。」
サカヅキ「ぐ…っ…」
担任「それじゃ、全員揃ったことだし
授業を始める…」
サカヅキ「…」
俺は中学校を卒業したら、
この街を出てある場所まで
向かわなければいけない…
だが、そこに行くまでには
数多の障害が立ち塞がっている…
ただでは行けるまい。
俺のこの戸籍がある限り奴らは
俺を嗅ぎつけて俺のことを
即座に追い出すだろう…7年前も
同じだった。
…全ては無意味、滑稽なこと…
俺に課せられた運命に比べたらな。
こんな風に今過ごせているのも…
すぐに終わる、この冬が明ければ…
俺はもう故郷へ戻る。
故郷への帰還が望まれることは
きっとないだろう…だが、
それでも戻らなければならない。
たとえそこですべてを失ったとしても…
それを成さねばならないのだ。
…そう、そんなことを考えていたら
気づかぬ内に授業が終わった。
…授業の中身は入ってこなかった。
サカヅキ「はぁ…どうしよう、
こんな調子じゃ受験に落ちるぞ…」
舞「ばあっ!」
サカヅキ「うわぁっ!?」
舞「ふふっ、驚いたかー!」
サカヅキ「全く…ガキじゃないんだから、
そんな脅かさないでくれ…」
舞「えー?いいじゃん、これくらいさー。」
サカヅキ「…はぁ、舞の将来が
心配になってくるよ…」
片目に眼帯をしているギャルのような
彼女は不満げな顔を浮かべながら
俺の隣へ腰掛ける。
舞「ねね、志望校ってもう決めた?」
サカヅキ「…え?ま、まだ…」
…俺は、とある事情により舞に
志望校を明かすことができない…
舞「まだー?サカヅキに志望校
合わせるこっちの身にもなってよー!」
サカヅキ「それは舞が勝手に
やろうとしてることだろ、知るか…」
舞「えー!?ひどーい!!」
サカヅキ「何度でも言え、アホガール…」
舞「なーっ!!その言い方ないだろ!?」
なぜ舞はここまで俺に志望校を
合わせてこようとしてくるのか、
理由は明白なのだが…
サカヅキ「なぁ舞、たまには他の
友達と昼食わなくていいのかよ?」
舞「いいのいいの、あんなの
上辺だけの付き合いなんだから!」
サカヅキ「…はぁ、陽キャって
怖いな…」
舞「大人の社会なんて、
みんなそんなもんだよ…」
サカヅキ「…若者に冷たい社会だな。」
舞「…若者はそうやって荒波に飲まれ、
真の意味で大人になるのさ…」
サカヅキ「…大人になんか
なりたくねぇな。」
舞「全くそうだよ…」
…こうやって俺達が会話を交わせている
ことも奇跡だと思えるくらい彼女は
凄惨な目に会った、それでも…
舞のことはここに置いていかなければ
ならない…。
それほどあそこは危険なんだ、
とてもじゃないが巻き込めない…
ここで終わりなのは寂しいが…
仕方ないことさ。
いずれ俺とは別れるときが来る…
それが少し早くなるってだけよ。
舞「ね、サカヅキ…私達、
ちっちゃい頃結婚するって
約束さ…覚えてる?」
サカヅキ「俺と舞はちっちゃい頃からは
一緒にいないだろ、騙されんぞ…」
舞「ちっ、騙せると思ったのに…」
サカヅキ「あのな…俺が記憶障害
だからってそうやって騙そうとするの
やめてくれないかな…」
サカヅキ「…たまに、本当に
騙されそうになるし…」
…俺の、記憶障害…
物心ついてから何年か経ったくらいの
頃にそう判明した。
…なんでも、記憶の容量が段々
減っていって、記憶を失って
行くんだと。
…もう、そう言うもんだって割り切りは
つけたはずだけど…やっぱり、
嫌になる…
舞「うーん…次はもっと入念に
話を作りこんでこなきゃ。」
サカヅキ「…勘弁してくれよ。」
サカヅキ「…はぁ、にしても…
部活、面倒臭いな…」
舞「ねぇサカヅキ、部活なんて
とっくの昔に辞めてるでしょ…」
サカヅキ「あれ、そうだっけ…」
舞「これは本当、全く…
記憶障害って嫌だよね。」
サカヅキ「…そうだったな、悪い…」
舞「…」
サカヅキ「…ごめん。」
舞「ううん…いいの。」
…部活のことはよくよく思い出して
見ると嫌な思い出ばかりが残る…。
何度も、何度も苦しみ続けてきた日々…
それすら忘れかけてしまうとは、
不覚だった…
舞「…ねぇ、サカヅキ…」
サカヅキ「舞?どうかしたか…」
舞「もしサカヅキの記憶障害が深刻に
なって、私のことを思い出せないくらいに
なっても私が助けてあげるから…!」
サカヅキ「ふふっ、そりゃ楽しみだ…
期待しない程度に期待してるよ。」
舞「ちょっとー!そこは流石に
期待してよー!」
サカヅキ「あはは…やっぱ、舞って
見かけによらずいい奴だよな。」
舞「え…い、いい奴って…って、
こら、見かけによらずって
どう言うこと…!」
サカヅキ「だって、見た目明らかに
ギャルだし、その割にごついし…」
舞「いや、それは眼帯の
せいでしょ…!」
舞の眼帯は特殊な構造になってて、
使用者の感情によって眼帯の柄が変わる
不思議な構造になっている。
…だが、それでも眼帯自体が持つ
いかついイメージは拭いきれない…
のだが。
舞「はぁ…もう、失礼しちゃう…」
サカヅキ「…?」
舞「…何?」
サカヅキ「いや…なんでも。」
ぶっちゃけ…舞のギャル要素でそれは
相殺されている気もする。
…まぁ、本人はギャルっぽいと
言うよりどっちかと言うと…
…いや、もうやめておこう…
俺だって舞の尊厳を削ぎたくはない。
舞「ねぇ、今失礼なこと考えてた
よね?絶対そうだよね…!?」
サカヅキ「…気のせいじゃないのか?」
舞「はぁ…全くもう。」
舞「ご飯食べとこ、もう休み時間
少ないし…」
サカヅキ「…あ。」
舞「え…何?あ。」
サカヅキ「…話すのに夢中になって
ご飯に手付けてなかった。」
舞「はぁ…サカヅキってさ、
ほんとそう言うとこアホだよね…」
サカヅキ「…否定できない。」
その後、俺は本気を出して5分ほどで
ご飯を食い終え、授業に戻った…
…舞からは食べ方汚いって
怒られたけど…。
ーー
サカヅキ「…はぁ。」
…今日の授業が終わり帰路に
つくことにした…
…舞も流石に友達と帰りたいだろう、
今日くらいは一人で帰ることにする…
サカヅキ「どうしようか…」
…故郷に帰るとして、まず一番に
解決しなければいけないのは
俺の顔が敵に割れていることだ…。
戻ったことがバレでもしたら…
俺はすぐにでもこっちに
戻されるだろう。
…だが、それの対策もすでに
考えている…。
だから、今からその対策のため
ある人に会おうとしてるのだが…
サカヅキ「…あぁ、面倒くさい…
もうこのまま直で行こう。」
あの親は俺が帰ってくるのが
遅くても何も言わないだろう…
怪しまれることはない。
舞も俺が居ないことに気付いて
せっせと帰ってるだろうし…多分。
舞「じー…」
サカヅキ「…ん?」
舞「ひゃっ!」
スタッ
サカヅキ「今…何かいたか?」
舞「…!!」
ガサッ…
サカヅキ「…やっぱり何かいるよな?」
俺はその辺りを入念に探った…
だが…
サカヅキ「…大丈夫だな。」
どうやら杞憂だったみたいだ。
サカヅキ「…ま、見られてたとて
どうにでもなるしな…」
舞「…」
舞(あっ…ぶねぇぇぇぇぇ!!)
舞(はぁ…私がサカヅキのストーカー
してることがバレてたら終わってた…)
舞(にしても…サカヅキ何か
言ってたよね?見られたとてどうにでも
なる…?って何だろ。)
舞(ま…ついて行けば分かることか。)
サカヅキ「…奴、本当に
現れるだろうか…」
サカヅキ「噂に聞くが、奴は
只者じゃねぇとか…」
舞(只者じゃない…?
どんな人と会うんだろ。)
サカヅキ「まぁ、それも行けばわかる…
もし嘘なら代替案を考えないとだが…」
舞(…何だろ、もうすぐクリスマスだし
クリスマスの献立でも考えてるのかな…)
舞(もしかして…私も呼ばれたりして、
まっ、まさかクリスマスデート!?)
舞「きゃーっ!!きゃーっ!!」
サカヅキ「ん…何だ?」
舞(あ…)
舞(やべぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
やっちまったぁぁぁぁぁぁっ!?)
舞(やばい…これは終わった…
流石にもうダメだ…)
舞(く、クリスマスデートが…
がっくし…)
サカヅキ「…いや、狐の鳴き声か…
この辺りって森あるし。」
舞「…は?」
舞(…っ、た、助かったぁぁぁぁぁ…)
舞(…でも、私の声を狐と間違うなんて…
後で「お仕置き」してあげなきゃねぇ…?)
舞「っ…てあれ?さ、サカヅキは…!?」
…俺は事前に指定されていた
海岸に向かった。
サカヅキ「…もう来ていたのか。」
…そこにはロングコートを羽織った
長身の大人が佇んでいた。
???「フフッ…来ましたか。」
サカヅキ「…。」
男性的とも女性的とも取れる
容姿だが…奴の性別はどちらなのだろう。
…まぁ、そんなことはどうだっていい…
???「自己紹介も一応して
おきましょうか…私は鵜伏大海、
以後お見知りおきを…」
サカヅキ「俺の名前は…
サカヅキでいいよ。」
鵜伏「…あなたの本来戸籍ではそんな
名前ではなかったはず…偽名ですか?」
サカヅキ「いや…あの母親から
付けられた名前なんか願い下げだ。」
鵜伏「なるほど…そう言う事情
でしたか、配慮が足りてません
でしたね…。」
サカヅキ「別にいいさ、そんなの
求めちゃいない…」
鵜伏「左様ですか…それでは、
契約を始めましょう。」
サカヅキ「条件はブツとの交換の
変わりに俺の戸籍を別の名義で
登録する、だったな…?」
鵜伏「えぇ、問題ありません。」
鵜伏「ところで…例の物は
持ってきましたね?」
サカヅキ「あぁ…これでいいんだな?」
鵜伏「…えぇ、問題ありません。」
俺の戸籍を偽りのものとする
変わりに奴が提示してきた条件…それは…
サカヅキ「…俺の血液なんか何に
使うんだ?」
鵜伏「フフッ…これはいい研究材料に
なりますよ?」
鵜伏「でも…おかしいですよね?
貴方…人に血液を採取させてそれを
差し出せと言われて…
普通は警戒しないんですか?」
サカヅキ「生憎、俺は手段は
選ばない主義でね…」
鵜伏「フフッ、それが貴方らしいか…」
サカヅキ「お前が何を企んでるかにも
興味ない、ただ…俺は、俺がすべき
ことをするだけだ。」
鵜伏「…そうですか、なら…私から
貴方に聞きたいことがあります。」
鵜伏「貴方のお父さんは…
今、何処にいますか…?」
サカヅキ「…父親か?今は仕事が
終わって家にでも居るんじゃないのか?」
鵜伏「…あぁ、そっちの方じゃ
ないですよ…」
鵜伏「貴方の、「本当の」お父さんの
方ですよ…」
サカヅキ「…お前、どこまで
知っている?」
鵜伏「フフッ…さぁ?ただ…
私から言えることは1つだけ。」
鵜伏「復讐なんてしたところで…
後悔するだけですよ。」
サカヅキ「…お前に言われる
筋合いなんかない。」
鵜伏「…あぁ、そう。」
そう言うと、鵜伏は雰囲気が
変わり、本性を表した。
鵜伏「クククッ、残念だがな…
あいつらはお前ごとき青二才一人に
やられるほどヤワじゃねェのよ…」
サカヅキ「けっ、そうかよ…なら、
自爆でもするしかねぇな。」
鵜伏「クククッ…アハハハハッ!!
どうやらアンタも私と同じ穴の
ムジナみたいだなァ…?」
サカヅキ「はっ、お褒めに預かり
光栄ですよ。」
鵜伏「あぁ…やはり君は面白い、私が
目をかけていただけのことはある…」
鵜伏「だが…精々気をつけろ、
あいつらはお前が思ってる以上に
狡猾で…強いから。」
サカヅキ「…肝に銘じとく、
お前も、精々今日のことがボスに
バレて始末されないようにな。」
鵜伏「えぇ…そうですね、
例えば…クーデターでも起こして
みましょうか?」
サカヅキ「やりたきゃやれ、
それだけのことができるならな…」
鵜伏「フフッ…では、真剣に
検討させていただきます。」
サカヅキ「そうか…その時が来たら
俺にもやらせろよ?」
鵜伏「そうですね…あなたの取り分も
きっちりと、残しておきますよ。」
サカヅキ「…へいよ、
楽しみにしとく…」
鵜伏「それでは、次は樹願島で
お会いしましょう…。」
サカヅキ「…あぁ。」
鵜伏「あぁ、そう…」
鵜伏「お父さんによろしく
伝えておいてくださいね?」
サカヅキ「それは…「どっち」だ?」
鵜伏「さぁ…どちらでもどうぞ?」
サカヅキ「はいはい…」
そう言うと鵜伏と名乗る者は
立ち去って行った…。
…計画通り。
順調だ…全てが、俺の思い通りに
動いている…あとは、奴らを
内側から転覆させるだけ。
俺の15年間の積年の思いが
遂に完遂するんだ…
サカヅキ「…ふぅ。」
サカヅキ「…なぁ、父さん…
順調だよ…全部な。」
サカヅキ「このまま行きゃ
計画は全て思い通りだ…」
サカヅキ「見ていてくれ…
全部終わらせるから…。」
舞「…」
舞「なんの話してたんだろ…」
舞「クリスマスの献立の話では
無かったな…でも、サカヅキの
本当のお父さんがなんとか…」
舞「それに…樹願島?冬休みだし
観光でもするのかな…」
舞「…ぶぇっくしょん!!」
サカヅキ「っ…!?」
舞「っ…気づかれたかな?」
舞「…でも、あれでバレなかったし
大丈夫だよね…」
カチャ…
舞「え…?」
サカヅキ「…」
舞「っ…け、拳銃…!?
な、なんで…!!」
サカヅキ「…いつから聞いていた?」
舞「え…?」
サカヅキ「舞…答えろ。」
舞「ま、待ってよ…ほんとに
何も分かんないんだって…」
サカヅキ「何も答えないなら
ここで死んでもらうことになるぞ?」
舞「っ…ま、待って、私は…!!」
バギュン
舞「っ…」
サカヅキ「次は当てる。」
舞「な…なんで、待ってよ、サカヅキ…
私何も知らないんだって…!!」
サカヅキ「何も知らないとして、
舞をここで生かしておくメリットが
俺にあるか?」
舞「え…」
舞「ま、待ってよ…私達、少し前まで
楽しく話してたじゃん、なんで…!!」
サカヅキ「…俺の目的や、この会話の
内容が知られるわけには
行かないんだよ…」
舞「は、話さないよ…ご、ごめん…
勝手についてきて、勝手にそっちの
話を聞いてごめん…」
舞「約束する、誰に言われてもこのこと
話さないって…だから、お願い…」
サカヅキ「…話さないとして、
そもそもなんで舞はここに居る?」
舞「…話さなきゃ、ダメですか…?」
サカヅキ「話せ、じゃなきゃ…」
舞「わ、分かった…話すよ…」
舞「わ、私…サカヅキのこと
ストーカーしてたの…」
サカヅキ「…」
舞「ず…ずっと前から!!
だ、だって…サカヅキのことが
好きだし…ほ、ほんとにごめん…」
サカヅキ「…なんだ、そんなことか…」
舞「…はい?」
サカヅキ「舞が俺のことストーカー
してることなんて始めっから知ってたよ、
それなら最初に言ってくれ…」
舞「…」
舞「すぅ…」
サカヅキ「えっと…舞?」
舞「…」
すると、途端に舞は殺意を発し始めた。
…よくよく考えたら、舞が
今してたことってほぼほぼ
告白に近くなかったか…?
サカヅキ「…あ、こりゃまずいな…」
サカヅキ「もしかして俺やっちゃった?」
…とにかく、取り返しがつく
内に謝っておこう、うん、
それがいい。
サカヅキ「えーと…ごめんなさい?」
舞「…サカヅキの、ばかぁぁぁぁぁ!!」
サカヅキ「っ…わぁっ!?」
舞はとんでもない声量で俺に
向かって叫び始めた。
舞「うぇぇぇぇぇぇぇん!!
サカヅキに乙女の純潔を
奪われたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
サカヅキ「ちょ、その言い方は
誤解を招くからやめっ…」
警察「…」
サカヅキ「あ…」
警察はにこやかに笑うと、
俺の腕を掴んだ…
サカヅキ「あの、おまわりさん
違うんです、言葉の綾と言うか
なんと言いますか…とにかく、
違うんです…!」
警察「はいはい、詳しいことは
署で聞くから大人しくしてね…」
サカヅキ「ちょ、ま、舞
助けて…!」
舞「…サカヅキのばか、おとなしく
ムショにでもぶちこまれればいいんだ…」
サカヅキ「ひどい!!」
警察「ほらほら暴れないで、行くよ…」
サカヅキ「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
その後おまわりさんの誤解を
解くのに6時間はかかった…
子供のいたずらだと理解は示して
くれたが次はないってさ…
最近の警察は薄情だよ。
…ちなみに、俺が署を出れたのは
夜も老けた1時頃だった…
サカヅキ「はぁ…眠い、帰ったら
とっとと寝よう…。」
時間も時間なので流石に眠い…
サカヅキ「ん…あれは、舞か…?」
先程俺にキレ散らかしてきた
舞がうとうとしながら立っていた。
舞「サカヅキ、遅いよ…
暇で暇で、仕方なかったよ…」
サカヅキ「…待ってなくてよかったのに、
帰ってもよかったんだぞ…」
舞「だって…誤りたかったんだもん。」
舞「さっきはごめん…ちょっと
言い過ぎた…。」
サカヅキ「別に気にしてないよ、
元はといえば俺が悪いんだし…」
舞「…ね、ねぇ…サカヅキ。」
サカヅキ「どうした…?」
眠そうな舞は物憂げな表情で
俺に訪ねてきた…
舞「あの…さっきのこと…」
サカヅキ「…この世には触れないほうが
いいこともある、深入りしないで
くれた方がありがたいのだが…」
舞「…でも、やっぱり気になるの…
サカヅキがそこまでして
隠したいものってなんなの…?」
舞「やっぱり話してほしいよ、
私達、友達でしょ…そう言うことは
しっかり相談してほしいよ…」
サカヅキ「…悪いが、話してやれる
ことは何もない。」
舞「そ、そんな…私、サカヅキの
力になりたい…だから、お願い…」
サカヅキ「舞を危険に晒したくは
ないんだ、それに…」
サカヅキ「…来年度はもう俺は
この街には居ないからな。」
舞「え…」
舞にとっては非情な宣告になるだろう。
俺は…目的のためこの街を離れ…
樹願島に行く。
そして、それからは一人で…
誰にも迷惑をかけずに計画を
遂行しなければいけないんだ。
それが友達として舞にできる
俺にできる数少ない友達孝行だからな。
サカヅキ「…悪いな、言うのが
遅くなって…」
舞「何でよ…嫌、私…サカヅキと
離れたくないよ。」
舞「サカヅキは、私にとって
ただ一人の特別な存在だから…
消えてほしくない。」
サカヅキ「…悪いな、俺には
応えてやることはできない。」
舞「そ、そんな…ねぇ、何なの…
そこまでしてサカヅキは
何がしたいの…!?」
サカヅキ「…俺は、死ぬ前に
必ず成し遂げなければ
いけないことがあるんだ…」
舞「だから、そのしなきゃいけない
ことって何なの…教えて…!」
サカヅキ「舞には関係ないことだ、
何より、危険だからどうしても
巻き込むわけには行かないんだよ。」
舞「関係ないわけ無い…だって、
私達友達でしょ、それに…
このまま終わりだなんて嫌…!」
舞「ここでサカヅキを止められなかったら
一生後悔する…だから、私は
ここでサカヅキを止める…」
サカヅキ「…何をしても無駄だ、
それは舞にも分かるだろ…?」
舞「…けど、私は…」
サカヅキ「…これ以上は何を
話したって無駄だ、俺はもう行くよ…」
舞「っ…ま、待って…!!」
サカヅキ「そんじゃ、気をつけて
帰れよ…」
舞「っ…サカヅキ…!!」
サカヅキ「…」
舞の性格を考えると本当に
面倒くさいのはここからなんだが…
まぁ、なんとかなるか…。
だって、あとは島に戻るだけだ、
何か問題が起きても対処できるはず…
舞「…はぁ。」
舞「あーあ…もういいや、どうせ
ストーカーしてることもバレたし…
もう手段なんか選んでらんないよね。」
舞「…このままサカヅキをみすみす
手放したりなんかしないから…」
舞「ふふっ…あはははは…」
ーー
その日は…やけに強い雨が
降りしきる日だった。
まるで…この先に起こる未来を
表すかのような、そんな天気だった…
サカヅキ「…なぁ、紫央…
俺、もう少ししたらこの島を
出なきゃいけないんだ…」
紫央「え…な、なんで…!?」
サカヅキ「俺さ…父さんも母さんも
死んじまってさ、本土に引き取られる
ことになったんだ…」
紫央「お、おかしいよ、そんな急に…
嘘だよ…そんなの…」
サカヅキ「…ごめんな、紫央の
演舞…見るって約束してたのに。」
紫央「そうだよ…約束して
くれたじゃん…なのになんで…!!」
サカヅキ「…ごめん。」
紫央「ごめんじゃないよ…そんな…
なんでよ…っ…」
紫髪の少女はその場に立ち尽くし
しばらく涙を流し続けた…
俺は、その場でその光景を
眺め続けることしかできなかった…
…。
サカヅキ「っ…」
サカヅキ「…夢か。」
…7年前、俺は故郷である島を
出なくてはいけなくなった…
…俺は本来島でも御三家に
数えられる家の出でそれなりに
いい暮らしもしていた…
だが、それも長くは続かなかった…
ある日、DNA鑑定の結果俺が
母が不貞を働いたことにより
生まれた子だと発覚した…。
そのせいで俺の父さんも母さんも
処刑され、一族も皆殺し…
唯一、本土にいた親戚に
引き取られることになったが
親戚は俺を厄介に思っていた。
だから…家族と言っても大切な
物だと思えたことはなかった。
それからこの七年間…俺は俺を
苦しめ続けた…雪乃財閥を
葬ることだけを誓って生きてきた。
…雪乃財閥は樹願島を中心に
活動する大企業で実質的に島を
乗っ取ってる組織だ…
俺の一族は雪乃の家の人間に
女を差し出すことで御三家として
しばらく生き残ることができたんだ。
そして、財閥は非合法的な研究を
行っていて、その研究を行う
チームのトップが…
サカヅキ「鵜伏…大海…。」
俺は奴の協力により島に渡る
権利を得ることができた…だが。
その交換条件として提示されたのは
俺の血液…
奴いわく俺の血液が研究に
一番重要なものらしい…
サカヅキ「はぁ…考えてみても
よく分からないな…」
にしても…今日の夢はなんだ?
やけに昔のことだったな…
あれは…俺が島を離れる前か?
そういや…紫央は今
何をしてるのだろうか。
紫央とはあれっきり連絡を
取ってないし何をしてるかも
分からない…。
紫央は演舞を成功させられた
のだろうか…。
サカヅキ「…今考える事じゃ
ないかな…。」
…無駄なことを考えるのはやめ、
とっとと飯を食い学校まで
行くことにした…。
そして…放課後。
サカヅキ「さて、やることもないし
帰るかな…」
サカヅキ「でも、何か
忘れてるような…」
サカヅキ「…ま、いいか…。」
先生「おーい、ちょっといいか?」
サカヅキ「あれ?隣のクラスの
先生…?どうかしました?」
先生「舞が今日学校に来てないみたい
でな、何か知らないか…?」
サカヅキ「え…?いや、特には
聞いていませんが…。」
先生「そうか、もう行っていいぞ…」
サカヅキ「…はい。」
そう言えば今日は舞を
見ていない…そもそも学校に
来ていなかったのか。
サカヅキ(舞の奴…何してんだ?)
…そして、家に帰るまでに舞が
俺の前に現れることもなかった…
そして俺は来たるべき日に向けて
情報を整理してみることにした。
サカヅキ「まず…俺の敵は
雪乃財閥。」
サカヅキ「雪乃財閥は樹願島に居を構える
大企業だが、裏では違法な研究や
談合などの不正取引を行っている…」
サカヅキ「さらに島の住民を
奴隷同然に扱い勢力を強くしたと言う
情報も出回っている…」
サカヅキ「また、前述した違法な研究は
俺の取引相手である鵜伏大海が
深く関わっている…」
サカヅキ「そして、渡航の条件だが…
一つ目の問題に関してはクリアだな。」
サカヅキ「戸籍を鵜伏に偽造させる
ことにより俺は安全に島に行ける…
ま、偽造がバレたら終わりだがな。」
サカヅキ「あとは、島の高校に
進学しなきゃなんだが…ま、
今からしっかり勉強すりゃ問題ないな。」
サカヅキ「後の問題は島に渡ったあと
どうするかだな…」
サカヅキ「まず、この少数戦力で
奴らを征伐するのは不可能…」
サカヅキ「真っ向から向かっても
意味はない…それなら不正の
証拠を週刊誌に流せばいいが…」
サカヅキ「そんなことができるなら
とっくにしてる、それにこんだけの
情報が俺のもとにあるのに週刊誌に
情報が出てない時点でな…」
サカヅキ「んじゃ、結局の所奴らに
対抗するにはまずあいつらの「権力」を
失墜させるしかないってこと。」
サカヅキ「誰もが自らの死を恐れて
週刊誌に情報を流せない…だが、
俺は違う。」
サカヅキ「元からこの身など
惜しくはない…それに、戸籍を
偽造するからいずれにしろバレる
リスクも少ないだろう…」
サカヅキ「…そういや、顔でバレる
リスクもあるしコートを
新調しなきゃだな…」
サカヅキ「奴らは基本的に島の
外には干渉しない、だから…
週刊誌に流すネタも直前まではバレない。」
サカヅキ「ちょうど島に行く時
くらいに週刊誌にネタが出るように
すれば…戸籍も偽造できて完全犯罪の
成立さ。」
サカヅキ「さて…問題は、俺の言う
「分岐点」をいつにするかだが…」
サカヅキ「…まぁ、焦る必要はないか…」
サカヅキ「…さ、そろそろ寝るかね…」
…そう、俺が口にしたとき
「それ」は現れた。
ガラッ…
サカヅキ「…ん?なんで窓が開いて…」
そこには、見覚えのある人物が
見えた…。
舞「ふふっ、よく分かったよ…
サカヅキのやろうとしてること。」
サカヅキ「っ…ま、まさか…今の
全部聞いてたのか…?」
舞「うん、聞いてたよ…」
サカヅキ「チッ…」
カチャ
舞「…いいのかな?そんな物騒な
ものを構えて…」
サカヅキ「…何が言いたい?」
舞「ここは住宅街、ここで私を撃てば
警察にバレる可能性はかなり高い…
計画は頓挫するんじゃないかな?」
サカヅキ「そこについてはご心配なく…
俺が死んでも情報は流れるように
しているからな…」
舞「ふふっ、やっぱり…サカヅキは
死ぬ気なんだ。」
サカヅキ「おうよ…計画のためなら
命なんか惜しかねぇよ。」
舞「そっか…サカヅキ、本気なんだ。」
サカヅキ「あぁ…俺には、命と
等価交換してでもやらなきゃ
いけないことがあるんだよ。」
舞「ふふっ…あは、あははははっ!!」
舞は狂ったような笑いを浮かべながら
「本性」を表した…
目からは光が消え、とても同じ人とは
思えないような覇気を放つ。
サカヅキ「舞…何がおかしい?」
舞「…一つだけ、ほんの一つだけ…
サカヅキは間違ってることがあるの。」
サカヅキ「俺が間違ってる…?
どうしてそう言える?」
舞「サカヅキはさ…危険だから私を
巻き込みたくないって言ったよね、
それがサカヅキの間違い…」
…すると舞は姿を消し…
サカヅキ「は…」
舞「私はここだよ。」
サカヅキ「っ…!?」
俺の後ろに回っていた…。
舞「ふっ…!」
サカヅキ「が…っ!?」
舞の鋭い手刀が俺の肩に直撃して
俺はその場に倒れ込む。
舞「サカヅキ…あんまり痛くは
しないからさ、あんま抵抗しないでよ…」
サカヅキ「ちっ…!!」
俺は即座に拳銃を奪い返そうとするも…
舞「おっと、これは使わせないよ。」
サカヅキ「チッ…くそ…」
カチャ
サカヅキ「っ…」
舞「安心して、私はあくまで
撃つ気はない…これはあくまで
自衛手段の一つだから。」
サカヅキ「…舞、一体何を
するつもりだ…?」
舞「サカヅキ…少し、話をしようよ。」
サカヅキ「…何だ?」
舞「裏に誰が居るの…?」
サカヅキ「っ…!?」
舞「それだけの情報を集める情報源が
分からないの、裏に誰が居るか…
教えてよ。」
サカヅキ「っ…舞、やっぱり…」
舞「あー大丈夫、私はサカヅキが
言う企業のスパイとかじゃないから。」
舞「分かるでしょ?私サカヅキが
居なかったらもう死んでるし…」
舞「ただ、私の一番大切な人が
勝手に私の前から居なくなろうとしてる
のが許せないだけ…」
サカヅキ「…何を言おうと答える気は
ない、この計画は守秘義務でね…」
サカヅキ「下手に情報吐かないように
下の裏に毒薬を仕込んでるのよ…」
舞「…やっぱり本気なんだね、
うん…分かった。」
舞「サカヅキを止めるのは無理、
じゃあ…私をサカヅキの共犯にしてよ。」
サカヅキ「舞…やっぱり
ついていくつもりか?」
舞「もちろん、そうじゃなきゃ
サカヅキと一緒にいれないもん。」
舞「…私、サカヅキが側に居て
くれなきゃ生きていけないくらいには
なっちゃってるからさ…」
舞「私、サカヅキが居なくなったら
どうなるか分かんないし…」
舞「もちろん、引きずってでもこっちに
連れ戻すと思うけどね…」
サカヅキ「…本気か?あの島は
雪乃財閥に支配されている、奴らに
逆らえば…」
舞「分かってる、大丈夫だよ…だって、
私もサカヅキと同じだもん。」
サカヅキ「は…」
舞「私、サカヅキのためだったら
死ねるから…この身なんて惜しくない。」
舞「ふふっ…サカヅキのためだったら
誰でも殺せるしどんな手だって使う…
その覚悟はもうできてるから。」
舞「ね…いいでしょ?」
サカヅキ「…本気か?」
舞「うん、私は本気…」
舞「サカヅキには借りがあるし、
流石に次は私が返す番でしょ…?」
サカヅキ「…分かったよ、こうなった
舞は止められないからな…面倒に
なる前に終わらせたほうがいいし…」
舞「…ふふっ、サカヅキならそう
言ってくれると思ったよ…ありがとう。」
そう言うと舞の目には光が戻り、
銃をその場に置いた…
舞「…んでさ、住むあてはあるの?
戸籍を偽造するなら親族とかには
頼れないだろうし…」
サカヅキ「あぁ、島の親族なら
とっくに全員処刑されてるよ。」
舞「あ…え?」
サカヅキ「だが…俺の行こうとしてる
高校が全寮制らしいからさ、
住むには問題ないよ。」
舞「そっか…じゃ、私も進路
そこで出さないとな…。」
舞「…ね、サカヅキ…そう言えばさ、
そこまでして雪乃財閥に復讐…?
したいリユって結局何なの?」
サカヅキ「…俺は本来、全うに
生きれるはずだった…」
サカヅキ「けど、俺の親は奴らに
殺された、本当は俺もまともに
生きれるはずだった…」
舞「…」
サカヅキ「…それに、知って
しまったんだよ…理不尽に殺される人が
どうやって死んでいくのか…」
サカヅキ「目の前で見たことがあるんだ、
財閥の人間に人が殺されるのが…」
サカヅキ「殺された人は死ぬ直前まで
泣きわめいて、糞尿撒き散らし
何度も嘔吐してた…」
サカヅキ「そしたら別の人間が
出てきて即銃殺さ…」
サカヅキ「…その光景を俺は
とても他人事とは思えなかった。」
舞「…それは、大変な経験をしたね…」
サカヅキ「あぁ…俺だって、
ああなってた可能性はあった。」
舞「え…そうなの…?」
サカヅキ「あぁ、俺が今もここで
生きてられるのはまぐれなんだ。」
サカヅキ「俺の親戚でちょうど島から
脱走するって人がいてな…その人に
船にのせてもらって逃げられたんだ…」
サカヅキ「その人は今何をしてるのか
分からないけど…俺が生きてるんだ、
今も生きているはず。」
舞「…その人のことは分かる?」
サカヅキ「さあな…多分、女の人
だったけど…長いコートを羽織ってた
ってことくらいしか覚えてない。」
舞「そっか…」
サカヅキ「…あぁ、その人…当時は
俺らと同じくらいの年齢だったかも。」
舞「え…それじゃ今生きてれば
大学4年生くらいの年齢ってこと…?」
サカヅキ「そうだな…まぁ、その人に
関しては何も情報が無いから
分からないけど…」
舞「…そう、あと気になる情報は…」
サカヅキ「…あぁ、そうだ…
これも言わなきゃか。」
サカヅキ「俺の記憶障害はな…
奴らに植え付けられたものなんだ。」
舞「え…っ!?」
サカヅキ「科学者のような男に
監禁されて、人体実験を繰り返された…」
サカヅキ「そこでは、俺は脳を
弄くられた。」
舞「っ…そ、そいつの情報は…!?」
サカヅキ「それも覚えてない、
記憶障害のせいで忘れちまったんだよ…」
サカヅキ「…とにかく、今話せる
ことはそれくらいだ…」
舞「そっか…分かった。」
サカヅキ「今日はもう遅いし送ってくよ。」
舞「いいの…?お父さんとお母さんは…」
サカヅキ「もう寝てるよ、それに
あの人たちは俺に関心なんか
持ってないし…。」
舞「…そっか、ごめん…」
サカヅキ「…んじゃ、行くぞ…」
舞「…うん。」
そして、俺は舞を家まで送っていく
ことになった…
外では雨が降りしきっており、
傘を持ってきてなかった舞を俺の
傘の中に入れることになった。
舞「いやー、サカヅキと相合傘
なんて始めてだよ。」
サカヅキ「そうだったか…?
前にもあったような気がするけど…」
舞「あれ…そうだっけか!?」
…さっきまで俺はこいつに銃を
突きつけられてたなんて言っても
きっと誰も信じないだろう…
それくらいには仲睦まじく写る
光景だった…
舞「…ねね、島に観光名所ってある?」
サカヅキ「はぁ…遊びで行くんじゃ
無いんだからな…?」
舞「分かってるよー、でも
何かあった方が面白いじゃん!」
サカヅキ「あぁ、でも…あそこは
現代の軍艦島って言われるくらいには
栄えてるからな…けっこうあったはず。」
舞「嘘っ!何がある…!?」
サカヅキ「覚えてる限りじゃ…
遊園地とか、レジャー施設とか…
あ、そうだ…あそこの森って世界遺産に
登録されてるんだよ。」
舞「え!そうなの…!?」
サカヅキ「何やら、すごく綺麗な
花畑があるんだとか…」
舞「何それ楽しみ、島に着いたら
まずそこに行こうよ!」
サカヅキ「無理だ、だってその
花畑は「存在しない」からな…」
舞「え、どう言うこと…?
まさか、都市伝説的なアレ…?」
サカヅキ「そんなとこだ、花畑が
あるって証言はあるんだがそれを
立証する証拠はないしその花畑は
発見もされてない。」
サカヅキ「だから…それ自体が
幻みたいなんもなのさ。」
舞「えー…それは残念…
行きたかったのに…」
サカヅキ「…まぁ、そんなこともある…」
サカヅキ「…あ、もう着いたぞ、
ここでいいか…?」
舞「うん、今日はありがとうね…」
サカヅキ「そういや今日、なんで
学校来てなかったんだ…?」
舞「あー、ずっと樹願島
に関する情報を調べてた。」
サカヅキ「あー…それで
来てなかったのか。」
舞「うん、それで気づいたら
5時になっちゃって…」
サカヅキ「そうか…わざわざすまないな。」
舞「いいのいいの、これくらい
安いもんだよ!」
舞「それはそうと気をつけて
帰ってね!」
サカヅキ「はいよ…せいぜい
刺されないようにしとく。」
舞「ちょ…そんな物騒なこと
言わないでよ…!」
サカヅキ「ま…大丈夫さ、こんな日に
俺を狙いに来るやつなんか居ない。」
舞「…そうだよね、うん…」
サカヅキ「そんじゃ、また明日な…」
舞「うん、また明日…!」
サカヅキ「はぁ…今日も大変だったな…」
ビュゥッ…
俺の方に向かって強い風が吹いた…
サカヅキ「うおっ…風強っ…!?」
サカヅキ「なんだ…?台風なら
もう過ぎただろ…」
ドダッ…
サカヅキ「何だ…?」
俺の背後から何かが倒れるような
音がした…
サカヅキ「…この辺りに倒れるような
ものはなかったはず…まさか…!!」
サカヅキ「舞はもういない…って
ことは…!!」
舞以外の誰かにつけられている…?
サカヅキ「っ…誰だ、出てこい…!!」
…すると電柱の横から長いコートを
羽織った長身の女が現れた。
サカヅキ「お前は…」
傘を差さずにいたためか酷く濡れており
膝には傷があった…
女「…サカヅキ、あなたに…忠告。」
サカヅキ「っ…何故その名を…」
女「樹願島に行くのはすぐに
辞めたほうがいい、無駄死にするだけ…」
サカヅキ「そりゃどうかな、俺は
少しでも何かを残してから死ぬ…」
女「私は、それが無駄だと言いたいの…」
サカヅキ「は…?」
女「あなた一人の命でどうするの?
そんなことしたって…奴らは
打ち滅ぼせない。」
サカヅキ「…そう思うなら見とけ、
愚かなクソッタレ共に俺が吠え面
かかせてやんのをさ…!!」
女「あなたは…身の丈を
分かっていない。」
サカヅキ「…」
女「これは貴方が思ってるほど
単純な問題じゃない…」
女「奴らはどんな手を使ってもあなたを
排除するでしょう…それを乗り越えられる
ことができるほどの力が貴方にはあるの?」
サカヅキ「…乗り越えるさ、必ずな…」
女「…私から言えることはひとつだけ。」
女「鵜伏大海…奴は危険よ。」
サカヅキ「…」
女「彼は、私が知り得る人物の中で
一番危険…奴を頼るのだけはやめなさい…」
女「…地獄を見るわよ。」
サカヅキ「そうか…肝に銘じとくよ…」
サカヅキ「だが…覚えとけ…」
カチャ
サカヅキ「俺の邪魔をしようと
する奴は…誰だろうと潰す。」
女「…」
そう言うと女は立ち去って行った…
その後には、雨音だけが
反響していた…
ーー
そして…それから何ヶ月と言う
時が過ぎ…遂に時は来た。
俺は事前にアポを取って週刊誌に
雪乃財閥の違法な研究、談合などの
不正取引の証拠を流した…
その情報が出るのは俺が本土を出る後に
設定されている…だから、もうその
情報が出る頃には俺は別の戸籍。
我ながら素晴らしい完全犯罪だ…
サカヅキ「ふっ…今に見てろ…
あの時殺し損ねたことを
後悔させてやる。」
舞「おー、今日もキマってますね
お客様。」
サカヅキ「…冷やかしなら
帰ってもらってもいいか?」
舞「いやん!ひどい!」
サカヅキ「さ…そろそろ船出るし、
乗っちまうぞ…」
舞「うん…!」
そして、俺達は船に乗り込んだ…
滞りなく船が出向したのを見届けたあと、
俺達が行ったのは…
舞「美味い!!美味い!!美味い!!」
ボリッボリッ!!
サカヅキ「…はぁ…」
…船に併設されてるバイキングだった。
…この船はやけに豪華で、安く取れたのに
こんな風にバイキングがついている…。
サカヅキ「よくそんなボリボリ食えるな…」
舞「うん!!だって美味しいもん!!」
サカヅキ「それ野菜スティックだぞ…
しかもドレッシングも付けないで、
よくそんな食えるな…」
舞「美味い!!美味い!!美味い!!」
サカヅキ「ダメだコイツ
聞いちゃいねぇ…」
プルルルル…
サカヅキ「あれ…電話だ。」
サカヅキ「…あいつから?
なんでこんなタイミングで…」
俺は舞に気づかれないうちに
船の中から船の上の方に移動した…
サカヅキ「…もしもし、
そっちはどうだ…?」
サカヅキ「…は?待てよ…」
サカヅキ「どう言うことだ、計画じゃ
本来まだ本土に居るはずだろ…?」
サカヅキ「何…?本土まで嗅ぎ付け
られてたってのかよ…クソ。」
サカヅキ「いいか…お前の存在は
あくまで切り札だ、あまり表には
出てくるな…」
サカヅキ「しばらくは俺が何とかする、
だからしばらくは待機してろ…」
サカヅキ「…あぁ、こっちは問題ない…
週刊誌に情報を流した、次の土日には
情報が回るだろう…」
サカヅキ「これから島に渡る、
あと4時間くらいはかかるかな…」
サカヅキ「…分かった、夜の11時に
指定の場所へ向かう…」
サカヅキ「…了解した。」
ピッ…
サカヅキ「はぁ…ったく、まさか
奴らの手が本土まで来てたなんて…
俺も危なかったかな。」
一抹の不安を覚えながら俺は
しばらく島に着くのを待っていた…
サカヅキ「はぁ…」
舞「どしたの、ため息なんかついて…」
サカヅキ「いや…なんか急に
自信なくなってきたかも…」
舞「えー、サカヅキがそんなになって
どうすんの…」
サカヅキ「はぁ…なんかな、
一財閥と戦うことの重大さを
今更ながら実感してきて…」
舞「ここでめげたらダメだよ、
私も頑張るから…ね?」
サカヅキ「はぁ…そうだな。」
サカヅキ「俺はやる…雪乃財閥を
潰して、目的を果たす…」
舞「そ、その意気だよ…!」
サカヅキ「さて…気を引き締め
直すとしますかね…」
舞「ふふっ、そうだね…」
…そんな他愛もないような
話をしてたら、気がついたら
島に着いていた…
サカヅキ「っ…もう着いたのか?」
舞「4時間って思ったより
早いね、特に酔いもしなかったし。」
サカヅキ「そうだな…」
サカヅキ「さて…もうやることもないし、
降りるか…。」
舞「…あ、待って…」
サカヅキ「ん?どうした…?」
舞「今更だけど、換えの服
持ってくるの忘れた…!」
サカヅキ「え…いや、嘘でしょ…」
舞「ごめん!急いで買ってくるから
先行ってて…!!」
サカヅキ「俺はついて行かなくて
いいのか?」
舞「いいのいいの、私の都合だし
付き合わせたくないよ…!」
サカヅキ「そうか…じゃ
俺はゆっくりと回ってくるから、
買い終わったら連絡してくれ。」
舞「オッケー!」
そう言うと舞はすごい速さで
走り抜けていった…
サカヅキ「あれじゃ時間も
かからなそうだな…」
サカヅキ「俺もゆっくり回るとするか…」
サカヅキ「ん…?」
俺の鼻に何かついたような感覚がした…
サカヅキ「これは…桜の花びら?
そうか…もうこんな季節か。」
サカヅキ「少し早いけど、花見でも
しに行きますかね…」
ドサッ
今度は、肩に何かぶつかったような
気がした…おそらく、人だろう…
サカヅキ「っ…だ、大丈夫ですか…」
白髪の少女「あ…えっと…う…」
サカヅキ「…?」
俺がぶつかったのは白髪の少女…
メガネをしており、とても整った
容姿をしているようだ。
…だが、何故かものすごく
キョドっている…
サカヅキ「えっと…だ、
大丈夫ですか…?」
白髪の少女「あ…あの、わ、
私は…大丈夫です、から…」
サカヅキ「そうですか、
立てますか…?」
白髪の少女「じ、自分で立てま…」
ドスッ…
白髪の少女「…あう。」
サカヅキ「ほら、手を握って…」
白髪の少女「っ…は、はい…」
ペラッ…
サカヅキ「…ん?何か落ちたけど…」
白髪の少女「あ…そ、それは…!?」
サカヅキ「これは…ノート?」
ノートのようなものが少女の
バックから出てきて、咄嗟に
拾った…
そしたら…中身が見えてしまった。
「っ…だ、だめ…これ以上は…もう…」
「ふふっ…君のそんな姿も可愛らしくて
そそるなぁ…」
「いやっ、だ、だめ…これ以上は…
もう…戻れない…」
すぐに閉じた。
どうやら人の見られたくない秘密を
垣間見てしまったらしい…どうしよう。
白髪の少女「あ…そ、その…
み、見ちゃいました…?」
サカヅキ「…」
俺は静かに頷くことしかできなかった…
白髪の少女「ひ…」
サカヅキ「ひ…?」
白髪の少女「…ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ダッ…!!
サカヅキ「あ…ちょ、ちょっと!?」
少女は光の速さで去っていった…
正直に言うとさっきの舞よりも
早かった…
…悪いことをしたな、次会ったとき
謝ろう…。
サカヅキ「にしても…この島には
随分と愉快な人が居るもんだな…」
サカヅキ「昔と変わんないな…。」
そう…昔と、変わらな…
…。
サカヅキ「あれ…昔って、何だっけ…」
サカヅキ「…はあ。」
もう…限界かな…。
サカヅキ「…さ、とっとと
行くとしよう、それがいい…」
タッ…
???「…。」
ーー
島の中に入った俺が真っ先に
向かったのは、スーパーだった…
サカヅキ「食品類は現地調達しなきゃ
だからな…いちいち船まで大量に
詰めないし…」
サカヅキ「あー、この感じ
懐かしい…昔と変わってないな…」
サカヅキ「…こんなことは、
覚えてるもんなのか…」
サカヅキ「はぁ…なんか、嫌だな…」
サカヅキ「…あ、卵特売じゃん、
ラッキー。」
そして、俺は残り一個となった
特売の卵へ手を伸ばす…
すると、卵へ伸びる手がもう一つ。
オレンジ髪の少女「…あ。」
サカヅキ「…あ。」
…とても、気まずい…
サカヅキ「…ど、どうぞ…」
オレンジ髪の少女「え…そ、そんな…
わ、悪いですよ…!」
サカヅキ「大丈夫ですよ…他のお店で
探しますので…」
オレンジ髪の少女「この辺りのスーパー
ここだけですよ…」
サカヅキ「…そう、でしたか…」
…まじかよ。
どうしよう…寮に着く頃には
夜だろうし…
オレンジ髪の少女「あれ…もしかして、
引っ越しに来た人ですか…?」
サカヅキ「あ…はい、今日ここに
越してきたばかりで…」
オレンジ髪の少女「それじゃ、
卵のお礼に島を案内しますよ…!」
サカヅキ「え…いいんですか、
ありがとうございます…!」
…まじか。
たった一つの卵から思わぬ縁が
できたもんだな…
…そして無事に買い物を終えて
島を案内してもらうことになった。
サカヅキ「そう言えば…名前は
何て言うんですか…?」
オレンジ髪の少女「私は…
双葉鈴って言います、あなたは…?」
サカヅキ「俺は…サカヅキとでも
呼んでください。」
鈴「…サカヅキさんはこの島に
来るのは初めてですか…?」
サカヅキ「…実は、前に少しだけ
住んでて…」
鈴「あれ、そうだったんですか…!?」
サカヅキ「でも、それもだいぶ前なので…
この島もけっこう変わったみたいなので、
一応一通り見てみたくて…」
鈴「そうですか、それじゃあ…
案内しますね。」
そして、俺は鈴さんに一通り
島の施設を案内してもらった…
ホームセンターやらやけに
高級そうなホテルが建ってて
卒倒しそうになった。
サカヅキ「…やっぱり、この島も
だいぶ変わりましたね…」
鈴「はい、昔とは大違いですよ…」
鈴「でも…私は今の島より
昔の島のほうが好きかもしれません…」
サカヅキ「…それは、どうしてです…?」
鈴「最近は、観光工業だったり、
この島が都会だってことを強調
してますけど…」
鈴「私は、この島の本質はそこじゃ
ないんだと思います…」
サカヅキ「…」
鈴「この島は空気がすっごく
おいしいんです、自然も綺麗でね…」
鈴「あぁそうそう!海が綺麗で
泳ぐとすっごい楽しくて、たまに
イルカも来たりするんです…!」
鈴「春は桜も綺麗で、冬の景色も
綺麗で…秋はスーパーで売ってる
もみじ饅頭がすっごく美味しくて…」
鈴「…あっ、ご、ごめんなさい…
少し、熱くなっちゃいました…!」
サカヅキ「…いいんですよ。」
サカヅキ「…好きなんですね、
この島のことが…」
鈴「…はい。」
…初対面の俺に、ここまで
島の魅力を語れるくらい鈴さんは
この島の自然や風土が好きなんだ…
…その熱心さは、妙に昔のことを
思い起こさせてくれる…。
サカヅキ「この島は…たしかに、
のどかな空気が流れていました…
それは今も同じ。」
鈴「…私、この島のこともっと
色んな人に知ってほしいんです…
目で触れて…体感してほしいんです。」
鈴「…きっと楽しいですよ、
賑やかになって…」
サカヅキ「…そう、ですね…」
サカヅキ「…けど、やっぱり…
俺はこの島のことを好きには
なれないかも…」
鈴「え…そ、それはどうしてですか?」
サカヅキ「…嫌なんですよ、しょーもない
勢力争いに巻き込まれて何の
罪もないような人が死んでくのが…」
鈴「っ…」
サカヅキ「…雪乃財閥の人間は幾多の人
の犠牲の上にこの島を繁栄させた…けど、
それって本当に正しいことなんですか?」
鈴「…確かに、そう言う噂も
あるけど…嫌なことばかりじゃないよ、
この島も…」
鈴「サカヅキ君にも好きになって
ほしいな…この島のこと。」
サカヅキ「…そうですね、
なれたらいいのですが…」
サカヅキ「…今日はありがとう
ございました…縁があれば
またお会いしましょう。」
鈴「うん…それじゃあ…またね…」
サカヅキ「…ありがとうございました。」
サカヅキ「…。」
この島の人間はやはり甘い…
知らないんだ、この島がどれだけの
罪を背負っているのか…
これじゃダメだ、俺は…
この島を正さなくては…
サカヅキ「…。」
ーー
サカヅキ「さて…と、もう舞は
着いてるかな…」
舞からまだ買い終わったと言う
連絡は来ていない…まだ
買い込んでるのだろうか。
サカヅキ「ま、とっとと
準備してるかな…。」
俺は事前にもらっていた自分の
部屋の鍵を開け、中に入る…
ガチャガチャ…
中に…入る…?
サカヅキ「あれ?開かない…
いや、鍵がかかってなかったのか?」
ガチャ…
舞「あ、やべ…」
サカヅキ「…はぁ。」
俺の部屋の中に舞がいた。
…いや、なんで俺の部屋を
知ってるんだよ…
サカヅキ「…あの、舞さん…
何をしていらっしゃるのでしょうか…」
舞「さ、先に入って見ておこうかなと…」
サカヅキ「…」
舞「…盗聴器を仕掛けてました、
すいません…」
サカヅキ「はぁ、もう呆れを
通り越して笑えてくるよ…」
サカヅキ「ほら、まだ自分の
準備終わってないだろ、
自分のやってこい…」
舞「はい…」
舞はしゅんとしながら
帰っていった。
サカヅキ「全く…楽じゃないよ。」
俺はどうせ荷物も少なかったので
適当に荷解きを終えた。
サカヅキ「はぁ…今頃次の週刊誌の
情報でも出てるかな。」
サカヅキ「…あの情報さえ出れば
俺は動ける…奴らと対等に
戦えるようになる。」
サカヅキ「さて、次号の週刊誌の
情報はどうなってる…?」
そして、俺は次号の週刊誌の
予告を見た。
サカヅキ「…よし、俺のリークした
情報がしっかりと載っているな…」
サカヅキ「世間の反応も
ぼちぼちってとこか。」
…世間からの反応は様々で、この情報に
懐疑的な声や週刊誌を支持する声…
半々で別れている程度だった。
サカヅキ「…んじゃ、やることも
ないしもう寝るか…」
明日になれば計画を進められる…
時が来るのが待ち遠しいな…。
…と、思っていたのだが…
サカヅキ「っ…いやいや、
嘘だろ…?」
…翌日、目覚めてすぐに週刊誌の
情報が目に入る…
…俺のリークした雪乃財閥に関する
スクープの掲載を中止すると言う
発表がされた…
サカヅキ「いや…いやいやいや、
待てよ…おい…!!」
プルルルル…
サカヅキ「おい、どう言うことだ、
話が違うじゃないか…!!」
編集長「いや、違うんですよ…
こっちも今大変なことになってて…!!」
サカヅキ「大変なことってなんだよ、
そりゃさぞ凄惨なことなんだろうな…?」
編集長「そうなんですよ、この記事を
取材した記者と編集者が失踪して…
そのあと、変死体になって
発見されたんですよ…!」
サカヅキ「は…?そりゃ
本当なんだろうな!?」
編集長「はい…こちらも身の安全が
第一です、悔しいですが…
我々にできるのはここまでです。」
サカヅキ「…分かりました、それでは、
これまでです…」
編集長「お力添えできず…
申しわけ、ありません…。」
サカヅキ「…いや、もういいよ…」
サカヅキ「…案外、こちらには
都合がいいかもしれないからな…。」
編集長「え…ちょ、ちょっと…!?」
ピッ
サカヅキ「想定外ではあるが…
問題はない。」
俺は俺の今立てた考察を立証させる
べくテレビを付けた…
サカヅキ「…よし、やっぱり…!」
ワイドショーでは雪乃財閥に関する
情報の掲載中止に関するニュースで
持ちきりだった…。
週刊誌で掲載中止になるなんてことは
普通おかしい、それが陰謀論が
多く出回ってる雪乃財閥では尚更…
犠牲は払ってしまったが…
この状況を活かさないわけには
いかない。
奴らはこの件を問い詰められる…
この件は大きくなりすぎた、
今更隠蔽も効かないだろう…。
サカヅキ「予定外だが…上手く行った、
これもラッキーってことだな…」
ピンポーン…
サカヅキ「ん…?誰だ?」
扉を開けると、そこには
舞が立っていた…
舞「ね、ねぇ…今日の
ニュース見た?」
サカヅキ「あぁ…予定は狂ったが
問題なく行ったな…」
だが…奴が言っていたこと、
本土まで財閥の手が伸びていた…
あれは本当だったんだな。
舞「うん…これで、奴らの力を
弱らせて…そこを叩くんだよね?」
サカヅキ「おうよ…あと少しの
辛抱さえすれば奴らは自壊して、
そこにトドメを刺す…」
舞「完璧だね…これで、
奴らを…」
サカヅキ「あぁ…長かったが…もう、
終わるんだ…」
サカヅキ「これで…奴らを…」
その時だった。
バキュウン!!
俺の足を目掛けて、弾丸が走った。
サカヅキ「ぐ…っ!?」
舞「サカヅキ…っ!?」
サカヅキ「まずい…まさか…!!」
バキュンバキュン!!
サカヅキ「チッ、スナイパーだ、
気をつけろ…!!」
舞「うん…!」
ダッ!!
サカヅキ「チッ…ここは人通りも
あるってのに、お構いなしかよ…!!」
舞「まさか、財閥の人間が…!?」
サカヅキ「あぁ…本土にまで足を
伸ばしていたのは知っていたが、
まさか俺にまで辿り着いていたとは…!」
サカヅキ「ぐっ…!!」
舞「サカヅキ…大丈夫!?」
サカヅキ「足の痛みと…
古傷がよく痛む…」
舞「どうするの、病院行く…!?」
サカヅキ「ダメだ…島の病院には
奴らの支配下にあるはず。」
舞「どうするの…これじゃ…!!」
白髪の少女「あなたは昨日の…
っ、うげっ!!昨日の陽キャ女!?」
サカヅキ「っ、昨日の…ここは
危険だ!逃げろ…!!」
白髪の少女「何があったんですか…
まさか、財閥の人間…?」
サカヅキ「っ…恐らく、ここは
危ない、流れ弾が当たるかも…!」
バキュン!!
サカヅキ「っ…早く、逃げろ…!!」
白髪の少女「っ…つ、ついて
きてください!」
舞「え…!?う、うん!」
そして、市街地を抜けて
島の中心辺りにまで逃げた…
舞「はぁ…はぁ…はぁ…」
サカヅキ「ふぅ…本当に死ぬかと
思った…」
舞「助けてくれてありがとう…」
白髪の少女「か、勘違いしないで
ください…目の前で人がおっ死ぬのを
見るのが嫌だった訳じゃないです…」
白髪の少女「そっ、それに、あなた…
昨日は良くもやってくれましたね!!」
そう言って少女は舞に
勢い良く指を指した。
舞「え、わ、私…?」
白髪の少女「そうですよ…あ、
あなた…よくも人のノートを
ずけずけと読んでくれましたね…」
舞「えー?だって、
面白かったんだもん…」
白髪の少女「だ、だからって人前で
読み上げることないでしょ…!!」
サカヅキ「あ、あはは…
大変だったんだな。」
白髪の少女「ほんとですよ…全く、
この中身が人に知れるのがどれだけ
恐ろしいことか…」
白髪の少女「あのノートの中身が
私の理想の王子様との恋愛を夢想して
書いたものだと知られれば私は
生きていけないんですよ…」
舞「へー、なるほど、そうだったんだ…」
白髪の少女「…はえ?」
サカヅキ「…アンタ、知られれば
生きてけない情報を思いっきり
話してなかったか?」
白髪の少女「…あ゙っ゙…」
白髪の少女「び…」
サカヅキ「…え?」
白髪の少女「びゃぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁ!!!」
ダッ!!
白髪の少女はこの世のものとは
思えないような断末魔を俺達に
残して退散していった。
舞「あ、待って…!」
舞「あーあ、名前聞けなかったよ…
仲良くなれるかなって思ったのに…」
サカヅキ「そうだな…でも、
あの娘…妙だな。」
舞「え…?何が?」
サカヅキ「狙撃手が財閥の奴らだと
知っていた、少なくとも財閥の
悪事について知ってる口だろう…」
舞「あー、確かに…島の人があそこで
スナイパーが即座に財閥の人間だって
気付けるわけないもんね…」
サカヅキ「そうだ…この島は
本土に比べて財閥の陰謀論は
出回ってないらしい…」
サカヅキ「…よくよく考えたらここは
財閥の支配下にある島だ、そんな情報は
すぐに規制されるだろう…。」
舞「うん…あの娘は何かしら
知っていてもおかしくないね…」
サカヅキ「…とりあえず、あの娘を
追いたいが…」
舞「…もし狙撃手に追いつかれたら
まずいもんね…」
サカヅキ「多分、寮には
もう戻れないだろう…」
舞「うう…換えの服せっかく買ったのに
私まで追われちゃうなんて…」
サカヅキ「…だから来るなと
言ったんだ…危険なんだよ、
この島はさ…」
舞「うん…でも、それはもう
承知の上だから。」
鈴「っ…サカヅキ君!」
サカヅキ「っ…鈴さん?」
舞「この人は知り合い?」
サカヅキ「あぁ、昨日スーパーで
買い物してたら知り合ったんだ。」
鈴「ねぇ…昨日の情報、週刊誌に
財閥の情報を流したのって…」
サカヅキ「あぁ…一応、俺がやった…」
鈴「…やっぱり、サカヅキ君が
ここに来た理由って…」
サカヅキ「えぇ、財閥を潰す…
それが俺の目的です。」
鈴「っ…本気なの?」
舞「はい…私達はやりますよ、
命を捨ててでもね…」
サカヅキ「ま、舞…」
鈴「…あなたは?」
舞「医神舞です…サカヅキの計画
を手伝うために本土から来ました。」
鈴「私は双葉鈴、樹願大天納高校の
生徒会副会長をしてる…」
舞「え…樹願大天納高校って…」
サカヅキ「俺達が進学した高校だ…」
鈴「嘘…ってことは、二人は
私の高校の後輩?」
舞「は、はい…」
鈴「なーんだ、それなら
先に言ってよ!」
サカヅキ「え…あ?」
鈴さんのテンションが
突然変わった。
鈴「私は先輩なんだから、
困ったことがあったら何でも聞いてね!」
サカヅキ「は…はい?」
舞「あ…そうだ、鈴さんって
白髪でよくノートを持ち歩いてる
女の子って見ました?」
鈴「結依ちゃんのこと?それなら
今の時間は高台の木の辺りに
いるはずだけど…」
サカヅキ「本当ですか、
ありがとうございます…」
鈴「よければ、そこまで
私が案内しようか…?」
舞「いいんですか…じゃあ、
お願いします…!」
サカヅキ「俺もそこには行ったこと
ないからお願いしようかな…」
鈴「うん…それじゃ、早速行こうか!」
そして、高台へ向かうこととなった。
鈴「ちなみに、結依ちゃんには
何の用があるの…?」
舞「あの娘が財閥のことについて
何か知ってるんじゃないかって思って…」
鈴「あー…なるほど…」
鈴「先に言うけどあの娘に財閥の
ことを聞くのはやめといたほうが
いいと思う…」
サカヅキ「え…それはどうしてです?」
鈴「あの娘…財閥にいい思い出ないし、
それに…」
鈴「…いや、これはやめとこう、
それより、もう高台まで着くよ!」
舞「あ、本当ですね…!」
サカヅキ「…どうする?聞くか…?」
舞「聞くしかないでしょ、だって
情報源がそれしかないんだから…!」
サカヅキ「…だが俺は鈴さんの
名字が気になる、何か引っかかりが
あってな…。」
舞「引っかかり…?」
サカヅキ「何処かで聞いたことが
あるような…そんな気がするんだ。」
舞「思い出して、早く!今すぐ…!」
サカヅキ「…!だめだ…思い出せない。」
舞「もー、どうするの…これじゃ
あの娘に聞くしかないじゃん!」
サカヅキ「ぐ…やむをえん、
そうするしかないな…!」
鈴(仲いいんだな、あの二人…)
サカヅキ「…もう着いた、この際
聞くしかねぇぞ…」
舞「結依ちゃんは…?あ、あそこだ!」
結依「…♪ふんふんふん…♡」
結依「えへ…えへへぇ…♡」
サカヅキ「…楽しそうだな。」
鈴「楽しそうだね…」
舞「おーい!!結依ちゃーん!!」
結依「ぎゃーっ!?」
ドサッ!
サカヅキ「っ…あいつ、容赦ねぇな…」
鈴「なるほど…あの娘はそう言う
娘なんだね。」
サカヅキ「…ちょっと違う気もするが…」
鈴「え…?そうなの?」
あいつの本性は…やばいからな、
色々と…
結依「さ、さっきから何なんですか
あなたたち…!!」
サカヅキ「悪いな、少し
聞きたいことがあって…」
結依「…何ですか、聞いたらすぐ
帰ってくださいよ…」
サカヅキ「…雪乃財閥について、
知ってることはあるか…」
結依「…財閥…。」
舞「…ダメ、かな…?」
結依「いや…いいですよ、あんな
情報が世に出たんじゃ今更
隠す必要もない。」
結依「週刊誌に出た通り…雪乃財閥は
とんでもない悪徳企業ですよ。」
サカヅキ「っ…やっぱりか!!」
結依「よく不正取引をしていました…
さらに、脱税や政治家に賄賂を
渡したりもしてましたね…」
舞「っ…そんな情報は世に出てない…
私達が持ってる以上の情報だ!」
結依「それに…奴らは卑劣で、
外道そのもの…特に、社長と…
研究室の鵜伏は特に。」
サカヅキ「っ…鵜伏!?」
結依「知ってるんですか…
鵜伏のこと。」
サカヅキ「知ってるも何も俺は…
ッ、だめだ、これ以上は
流石に喋れない。」
結依「…そっちも何か情報を
隠し持ってるの?」
サカヅキ「悪いが余計なことは
喋れないんだ…」
結依「…そう、それで話は終わり…?」
サカヅキ「…あぁ。」
結依「それじゃ、もう帰っ…」
舞「結依ちゃんありがとーっ!!」
結依「わーっ!?」
ドサッ!!
鈴「…ありゃりゃ。」
結依「え…り、鈴さん、
居たんですか!?」
鈴「あはは…連れて行ってって
言われたもんで。」
結依「ちょ、ま、た、
助けて…!!」
鈴「…まぁ、結依に友達が
できたならよかったよ。」
結依「よ、良くないよ…!!」
結依「も、もうヤダ、助けて紫央…」
サカヅキ「紫…央…?」
サカヅキ「今…紫央って言ったか?」
結依「え…そ、そうだけど…
紫央がどうかしたの…?」
サカヅキ「紫央はどこにいる…
答えろ…っ!!」
結依「っ…!?」
鈴「ちょ、さ、サカヅキ…落ち着いて!」
サカヅキ「…答えろ、紫央は
何処にいる…」
舞「紫央って…確か、サカヅキが
よく話してた幼馴染だったっけ…」
鈴「え、サカヅキって紫央の
幼馴染だったの…!?」
結依「紫央は今出てこれない…
そもそも、あんまり見てないし…」
サカヅキ「…アテはあるのか?」
結依「うん…もしかしたら、
夜くらいにここに来るかも…」
サカヅキ「…分かった、それまで
ここで待つか…」
結依「え…こ、ここで…!?」
サカヅキ「…だって今俺は
スナイパーに狙われてるんだ、それに…」
ドサッ…
舞「さ…サカヅキ!?」
サカヅキ「ずっと我慢してたけど
もう右脚が限界みたいだ…」
舞「そっか…さっき足を撃たれて…」
鈴「嘘!それじゃ治療しなきゃ
じゃん…どうしよう…」
結依「…止血は?」
サカヅキ「もうしてあるよ…」
結依「なら大丈夫…あとは消毒をして
安静にすればいいだけ。」
鈴「安静にか…スナイパーに
狙われてるんだよね、じゃあ
安全な場所は…」
サカヅキ「スナイパーって言うか、
多分財閥全体に目をつけられてて…」
鈴「ひえぇ…そりゃまずいな…」
サカヅキ「あーあ、計画が大崩れだ…
本来俺の身元はバレないはずだったのに。」
結依「…身元がバレたら
面倒なことになるんだ。」
サカヅキ「っ、あ、やべ…」
結依「…墓穴を掘ったね、話して
もらおうか…?」
サカヅキ「…悪いができるだけ
守秘義務でいきたいんでね、
話す気はない…」
サカヅキ「ただ、どうしても
話させるってなら…俺は下の裏の
毒を使って自死をする。」
鈴「え…そ、そんな…!?」
結依「…むやみに情報は
引き出せないか。」
結依「にしても…凄い覚悟だね、
まるで自分の死を恐れてないみたいだ…」
サカヅキ「そうだ、俺は死ぬことなんざ
怖かねぇ…」
結依「へぇ…それは随分なことで。」
結依「…そこまでして、どうして
財閥を潰そうとしてるわけ?」
サカヅキ「俺は財閥に自由と居場所を
奪われた、それに…同族の人間を
何人も殺された…」
鈴「…そんなことがあったんだ…」
結依「ふぅん…」
サカヅキ「俺は死んだ同胞に報いる
ため、財閥を潰さなきゃいけない…」
サカヅキ「それが俺の生きる意味だから。」
結依「はぁ…なるほどね。」
結依「だいたい君の置かれてる
境遇は理解できた。」
結依「サカヅキ…だったっけ?
君は7年前の事件、その中核に
居るわけだ…」
結依「君になら話してもいいかな…」
鈴「結依ちゃん…まさか…」
結依「…そう、私の名前は
唯木結依…けどこれは仮の名前。」
結依「本当の名前は…
雪乃結依。」
舞「っ…!!」
サカヅキ「ゆ、雪乃…!?」
結依「雪乃財閥の社長、
雪乃厳十郎の一人娘が私…だけど、
私は雪乃を追われた。」
結依「そう…7年前の事件でね。」
舞「ねぇ…7年前の事件って…?」
サカヅキ「7年前俺の母親の不貞が
バレて俺が雪乃の血を受け継いで
居ないことが分かった…」
サカヅキ「それにより俺の一族が
処刑されたりした1件のことだ…」
結依「…何、サカヅキ…まさか、
君があの事件の発端なのか…!?」
サカヅキ「あぁ、そうさ…俺が
生まれてなきゃ、ここまで多くの人の
運命が狂うこともなかったかもな。」
舞「サカヅキ…!!」
サカヅキ「…でも、だからこそ…
償わなきゃなんだよ、俺が…」
サカヅキ「たとえこの身を
賭してでもな…」
鈴「じゃ、じゃあサカヅキが
この島を追われたってのは…」
サカヅキ「あぁ、俺が不貞により
生まれた…所謂忌み子って
やつだからだろうな。」
結依「へぇ、それじゃ…君は
復讐のためにこの島に
戻ってきたってことだ。」
サカヅキ「あぁ、そうさ…」
結依「はぁ…なるほどねぇ…」
結依「…ようやく、機が来たかな。」
舞「え?それはどう言う…」
結依「…君の復讐に、私も
1枚噛ませてくれよ…」
サカヅキ「…いいのか?これが
危険だってことは重々
分かってるはずだが…」
結依「私もやられっぱなしは
面白くなくてね…どうせなら、
舞えるだけ舞おうじゃないか。」
舞「…おー、かっこいい…!」
結依「ぐっ、う…うるさいよ…!」
鈴「それじゃ、私もやろうかな…!」
サカヅキ「え…鈴さんも?」
鈴「うん、戦力は多い方が
いいでしょ?」
サカヅキ「いや…そんな簡単な
ものじゃないんですよ…これは。」
鈴「分かってる、けど…私も
無関係ってわけじゃないから。」
鈴「ねぇ…サカヅキはさ、
双葉家のことについて知ってる?」
サカヅキ「双葉家について…」
サカヅキ「…あ!!思い出した…!!」
サカヅキ「御三家に最も近い…
御三家を補佐する一族だったか?」
鈴「そう、御三家であるサカヅキの家に
雪乃家…そして清薙家、それに
追随するのが双葉家。」
鈴「雪乃に近い立ち位置なのに
財閥を止められてないのは私達の
責任もあるからさ…」
サカヅキ「…やる気なんですね、
どうなっても知りませんよ…」
鈴「ふふっ、そうじゃなくっちゃ
面白くない…!」
結依「さて…これで一通り
役者は揃ったかな…?」
サカヅキ「いや…一人足りないだろ?」
結依「え…あれ?そうだっけ…あ、
そうだ…紫央?」
サカヅキ「紫央は本当にここに来るのか?」
結依「絶対に来るって保証はない、
だけど…しばらく来てないしそろそろ
来てもおかしくない。」
サカヅキ「そうか…それじゃ、
待つしかないのか…?」
その時だった。
そこに…一人の人影が現れたんだ。
???「…全く、騒がしいわね…
なんのさわ…え?」
サカヅキ「っ…紫央!!」
紫央「サカヅキ…!?も、
戻ってきたの…!?」
サカヅキ「あぁ…紫央。」
サカヅキ「…ただいま。」
紫央「ううっ…ぐすっ…
うわぁぁぁぁぁぁん!!」
紫央はその場で泣き崩れてしまった…
紫央を即座に抱きしめて、
紫央をその身で受け止める…
紫央「ほんとにもう…大変だったんだよ、
ほんとに、サカヅキがいなくなってから
散々で…!!」
サカヅキ「…7年も島を空けて
悪かった、だが…もう…」
紫央「寂しかったんだよ…もう…
投げ出そうかと思った…」
サカヅキ「…なぁ、何があったんだ…?」
紫央「うん…サカヅキがいなくなって
から…演舞をやったんだけど…
私…それで失敗しちゃって…」
紫央「…そのせいで…っ…ひぐっ…
お姉ちゃんが…お姉ちゃんがぁっ…!」
結依「…紫央にお姉ちゃんなんて
居たのか…?」
鈴「うん…居たよ。」
舞「…居た、ってことは…」
鈴「…うん。」
結依「っ…ま、まさか…」
サカヅキ「…もういい、これ以上は
言うな…」
紫央「…うん。」
紫央「そのあと…もう、何も
する気起きなくなっちゃって…
ほとんど、引き籠もってたの…」
紫央「鈴さんや結依も居たけど…
サカヅキは死んだって聞かされてて…
それで…」
結依「…え?死んだって聞かされてた…?
そ、それってまさか…」
舞「…どうかしたの?」
結依「わ、私の王子様も昔島に
居て…死んだって聞かされてたんだけど…
え…ま、まさか…え…え…!?」
舞「あ、あれって現実の人が
モチーフだったんだ…」
結依「え…て、てことは…」
結依「え…あ…うわぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁー!!」
舞「あ…ちょっと!?」
ダッ…!
紫央「…はぁ、あっちは
やかましいね…」
サカヅキ「…あぁ。」
紫央「ねぇ…しばらく
こうしててもいい?」
サカヅキ「あぁ…」
紫央「なんか…懐かしいな…
こう言うの久しぶり…」
サカヅキ「俺もだよ…
何か、懐かしいな…。」
紫央「そうだね…ふふっ。」
紫央「あぁ…いつまでも、
こんな日々が続けばいいのにな…」
サカヅキ「そうだな…。」
ーー
職員「…ご報告があります。」
厳十郎「何だ…通せ。」
職員「サカヅキと島に紛れ込んできた
ネズミ、それと双葉の娘と…
結依さんが接触しました。」
厳十郎「ふむ…そうか。」
厳十郎「であれば…分かるな?」
職員「は…!」
厳十郎「ただでさえあんなガキに
不正の情報を流されてイライラ
してるんだ…クソ…」
厳十郎「奴らの対処は鵜伏に
任せる、それでいいな…」
職員「…問題ありません…!」
厳十郎「…我らに歯向かおうと
したことを後悔させてやる。」
厳十郎「分からせてやる…
この島が誰の物かをな…」
厳十郎「我らはやがて世界を
手にする…そして、我らこそが
地球で唯一優秀な民族である
ことを教えてやるのだ…」
厳十郎「ククク…フハハハハハ!!」
ーー
結依「ぐ…がはっ…!?」
少年「オラッ!!オラァ!!」
ボガアッ!!
結依「ぐ…うぅっ…」
サカヅキ「おい…何してんだ…!!」
少年「っ…何だてめぇ…!!」
サカヅキ「女の子相手にそんな
ことして恥ずかしくねぇのか、えぇ!?」
少年「野郎…ぶっ殺してやんよ!!」
サカヅキ「っらぁぁぁぁぁ!!」
結依「っ…!」
ガシッ…
少年「死ねやぁっ!!」
ボガァッ!!
サカヅキ「ぐ…あぁっ…!!」
少年「はっ、オラァァッ!!」
サカヅキ「がぁぁぁっ!!」
ボガッ!!
少年「が…っ!?」
サカヅキ「オラァァッ!!」
バタッ…
サカヅキ「君…逃げるぞ!」
結依「え…う、うん…」
サカヅキ「大丈夫か…ほら、
手を摑んで…」
結依「…うん。」
ガシッ…
サカヅキ「ほら、走るぞ…」
結依「っ…う、うん…!」
そして…俺達は遠くへ、遠くへと
逃げ出していった…
ーー
サカヅキ「ふぁ…ん?夢か…」
サカヅキ「にしても…今のは、
覚えてねぇな…何だったか。」
サカヅキ「あれは…結依だったっけ?」
サカヅキ「あいつと俺は
昨日が初対面のはずだが…」
サカヅキ「てか、そもそもここは
どこだったっけ…」
結依「おはよう…こ、ここは…
その、わ、私の…家、です…」
サカヅキ「あぁ、結依…おはよう。」
結依「え…えーと…その、
え、えへへ…」
サカヅキ「…?どうした…」
結依「えへへ…あ、あの…この間は…
ありがとうございました…」
サカヅキ「…?」
結依「感謝してます…7年くらい前、
私を近所の不良から助けてくれて…
その…あ、ありがとうございます…」
結依「え、えへへ…感謝しても
しきれないです…」
結依「私の王子様がまさか
こんな所にいただなんて…ふふっ…」
サカヅキ「…え?」
…さっきまで俺が結依を助けた記憶なんて
存在しなかった…いや、抹消されていた。
だが…それが今になって夢になって
出てきた…夢は脳が記憶を処理する
時に出ると言う。
…記憶の片隅に僅かに残ってた
記憶が今になって出てきたのか…?
これは使えるぞ…
サカヅキ「…ありがとう、結依…」
結依「…え?え…い、いや…
お礼にはお、及びませんよ…
私なんかが、おこがましい…!」
サカヅキ「…。」
…俺の夢は記憶障害によって無くした
記憶を呼び覚ます。
それで…忘れてしまった手がかりが
もしかしたら出るかもしれない…
サカヅキ「…突破口は見えたな…」
雪乃財閥と戦うだけの準備は、
着実と揃いつつあった…
next…
エーデルワイスとスターチス-Remind Arc- @ziasoma
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