第10話

煙草の先端に、気付けばじりじりと長い灰が連なっていた。


テーブルに置かれた灰皿にそれを押し付け、ふと目線を横に移す。






────そこには、新聞が束になって積み重なっていた。


どうして集めてしまったのか、自分でも分からない。


これも……無意識の内にしたことだった。







『猿鬼出没。少女の前で、教師を惨殺。』


一番上に重ねられた新聞には、そんな見出しがでかでかと印刷されていた。








「鬼、か……」


俺はそれを横目で見ながら、静かにそう呟いた。









窓の外から、けたたましいクラクションの音が聞こえた。


汚ねえ街は、物音すら汚く感じる。








俺は小さくため息をつくと、開け放たれた窓を閉めるために再び窓際へと足を向けた。












花弁

【完】

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「猿鬼」特別番外編【完】 ユニモン @unimon

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