我らが秘密結社『死凶星団』に栄光あれ!

卯月 幾哉

第八五二回全体会議

 ――『死凶星団ゾディアック』。

 それは闇にまぎれ、人知れず世界の転覆てんぷく目論もくろむ秘密結社……らしい。


 今ここには、そんな『死凶星団』の最高幹部ら四名が結集していた。実は最盛期には七名の人員がいたのだが、ここに集う四名にとって、いなくなった三名のことはどうでもよかった。


 会議の幕は上がる――。



    †



「……クックック」

「……フッフッフ」

「……キシシシシ」

「……それでは、我らが秘密結社『死凶星団ゾディアック』の第八五二回全体会議を始める」

「「「御意」」」

「同士キグナス、報告を」


「――あっ! ヤバい!」

「どうした、同士シリウス」

「今日『お仕事少女スギナミカ』の初回放送だったんだ! 今すぐ帰らなきゃ!」

「なんだと! キサマ、全体会議とアニメとどっちが大事なんだ!」

「そんなの、圧倒的にアニメだろ! お前らもいつまでもこんなことやってないで、早く帰れよー!」

「待て! シリウス!」



「……行っちゃった」

「くっ、仕方ない! 会議を続ける!」

「おー」

「同士キグナス、報告を」

「あー。昨日は妹とスマブラやって、五回勝負で勝ち越した。以上」

「――こら、真面目にやれ」

「あぁ、悪い悪い。……えぇっと、昨日は我が宿敵ダークムーンと恒例の闇のゲームで争い、勝利を収めた。……これでいいか?」

「うむ。さすがは戦士キグナスだ」

「……俺、戦士だっけ……?」

「次! 同士ベガ!」


「――ねぇ、ちょっと物置のかげに集まってるそこの男子たちー」

「る、るる、ルリちゃんっ!? ど、どうしてここに!」

「あ、いたいた。……タケルちゃん、さすがに六年生にもなってコレはないよ」

「……こ、コレってなんだよ」

「そのダッサイ変な格好に決まってるじゃない」

「う、うう、うるさいなっ! こ、これは僕たち『ゾディアック』の正装なんだ!」

「うわあ、ぞでぃあっく? イッタいなぁ〜」

「もう、用がないならあっち行ってよ!」

「……うん。わかった。バイバイ」



「……行っちゃったね」

「…………」

「おい、タケル。どうする?」

「タケルじゃない」

「同士アークトゥルス」

「……今日の会議は解散とする」

「はいよ。明日は?」

「……いつも通り、定刻開催だ! では、解散!」



「……行っちゃったよ」

「……なあ」

「何?」

「せめて俺たちだけでも、最後までアイツに付き合ってやろうぜ」


「ごめん、無理」

「えっ」



(了)

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我らが秘密結社『死凶星団』に栄光あれ! 卯月 幾哉 @uduki-ikuya

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