第7話 荏原神社〜流通センター駅

 

13:22

 

 まるで時代劇のセットを歩いているような目黒川沿いの景色をしばらく堪能する。

すると、鎮守橋にたどり着き、その先に見えるのもまた神社である。

そこは荏原神社といい、「南の天王さん」とも称されている。

和銅2年に創建され、高おかみの神が祀られている。また、

東海七福神の一社として、恵比寿様も祀られている。

拝殿の屋根から龍の彫刻が顔を出している珍しい造りになっており、それがこの神社のシンボルである。


 荏原神社とは目と鼻の先にあるのが、しながわばしだ。

この橋の特徴としては、橋の真ん中に緑色の屋根の休憩所、あずま屋というのだろうか?がある。

この辺りは、南品川宿川岸と呼ばれており、

東海道五十三次の第一宿である品川宿の一部である。

当時は、江戸から京都へ向かう東海道の最初の宿場町として、旅人や商人で賑わっていたことであろう。



13:29


 我々はさらに目黒川を下る。するとたどり着くのが、

東品川海上公園の西口である。

全体に芝生が広がり、くじらをイメージした滑り台や、運河沿いのボードウォークがあったりする。

そのほか、何かとイベントが開かれている場所でもあるので人も多い。

さらに驚きなのは、屋外にも関わらずフリーWi-Fiが利用できるのだ!

そして、公衆トイレがある。よっておこう。



 さて、少しだけ回り道をしよう。

この公園の目玉スポット、『アイル橋』を渡るのである。

この橋は、東品川公園と、天王洲公園を結ぶ歩行者ようの橋で、

全長50m、幅3mのシンプルながら非常に目を引く魅力的な橋なのだ。

橋上からは運河を行き交う船や、周辺の高層ビル群を一望でき、夜間はライトアップもされるらしい。


 そして、天王洲公園管理棟、新棟を右手に進と、天王洲通りという大きい道路に差し掛かり、

京浜運河が目と鼻の先である。

個人的には、ここが一つの旅の分岐点である。

というのは、

この天王洲通りを、右手に行けば川崎市は大師橋にやがて通じ、

左手に曲がればレンボーブリッジに行けるのだ。

どちらも魅力的な旅路だが、私が今回、あなたに見せたいものは右手にある。

だのでこのT字路を右手に進もう。




13:50




 天王洲通りの歩道をしばらく行くと、大井北埠頭橋という緑色の陸橋がかかっており、これを左、つまり運河沿いに進めば、

京浜運河とご対面である。

京浜運河の魅力を説明するのは不可能だ。こればかりはご自身の実際の目で見てほしい。

私は何度、この川の景色に命を救われたかわからない。

京浜運河は、その名の通り運河であるので、非常に無機質な景色といえる。

脇には、『ゆりかもめ』というモノレールが走り、倉庫や商業ビルが立ち並ぶ。

見る人によっては、何がいいのかわからないかもしれない。

しかし、この広大な川幅。

稀に川から飛び跳ねる魚の様。

この辺りで暮らしている人々の暮らしむきを想像しながら歩けば、

大概の悩みは晴れる。

憤っていたことは、その過去の時間軸を断ち切り、ため息と共に川に吸い込まれ、

憂鬱や心配事は、運河の力強い流れが東京湾に押し流してくれる。

川部たるもの、川に感謝をし、この素晴らしい京浜運河をしばらくの間、川崎方面に進むとしよう。




14:11



 はるか向こうに目をやれば、モノレールは『ゆりかもめ』、大井競馬場前駅が見えてくる。

この駅が一つの目印で、このまま進むと川沿いの道は行き止まりなのだ。

川部の心得。川部のために用意された道などない。

しかも川沿いというのは往々にして工事中のことが非常に多いため、

通ろうに通れない箇所がたくさんあるのだ。

私がいなければあなたは数キロの往復をする羽目になっていただろうが、今日は私がナビを務めるので安心してほしい。

ここは一度川沿いから国道に逸れて、歩くことにしよう。


 中央海浜公園前の交差点に着いたら右折。

このアタアリは、大井埠頭中央海浜公園のエリアであり、スポーツ施設や自然観察エリアが充実している。

陸上競技場や、野球場まであるのだ。かなりの面積だろう。


 大井埠頭海浜公園が見えたら、「なぎさの森」を通って京浜運河沿いにアクセスできる。

このエリアは、運河沿いに整備された遊歩道がある。


 「なぎさの森」を抜けると、再び京浜運河沿いに出て、

ここらでは多少は有名なバーベキュー場がある。

川の真ん中に、シルバーの巨大なモニュメントが立っており、

それの意味は私にはわからないが、アーティスティックな心をくすぐる要因になるはずだ。

ちなみに京浜運河には、このような、誰が作ったかは不明だが大きいモニュメントが数多く存在する。

それもまた、この川の魅力である。


 しばらく京浜運河を堪能し、野良猫ちゃんたちと戯れながら旅を進めよう。

すると、臨海斎場にたどり着き、右手には東京団地倉庫が現れる。

東京団地倉庫。この言葉がまずすごい。

団地なのか倉庫なのか。いやいや。団地であり、倉庫なのだ。

大和大橋を渡って川の対岸に出、しばらく進むと『ゆりかもめ』、流通センター駅にたどり着く。

やはりこの辺りは、物流の要なのであろう。

ちなみに1969年には「新平和島駅」という名前で開業し、

今の名前になったのは1972年のことである。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る