つぶやきハニ~

ふみその礼

第1話 つぶやきハニ~


つぶやきはある

ただ

つぶやいた時と

だれかが聞いてくれる時と

ほんの一瞬

時がずれるだけで

つぶやきが残らない

でも

消えてしまったわけじゃない

どんなに時が流れても

千年でも二千年でも

ここにあるよ

ぼくの

ほんの少し開いた

この口のかげりの中に


ぼくは武人ぶじんのハニワ

ぼく自身だったご主人は十五才

ぼくのご主人の

ほんのすこしのつぶやきを

聞いてください



ぼくはこれからいくさに行く

ずっと続いてる西国との戦

ぼくの父さんがこの国の大王だから

ぼくも行かなければならない

かぶとをかぶり

よろいを身につけ

大刀たちを帯び

ゆきを背負いて

いざ出陣だ

生きて帰れるかどうか

それは分からない

死ぬことは恐くない

この国のために命を捧げるのだから


でもね

ぼくの命が消えてしまっても

この世界に残したいつぶやきが

ひとつだけある

あるんだ


たったひとつの

ぼくのつぶやき


この国よりも

この国を守って下さる

神さまよりも

ぼくの命よりも

たいせつな

たいせつなこと


たったひとつの

ぼくのつぶやき



AYUNE…



ぼくは君を愛してるよ


君だけを

たいせつに

たいせつに思ってる


この思い

伝えることができずに

ぼくは戦いに行く


でも

ぼくの

この想いは

永遠に消えない


そして

愛は

けして

時に負けない


いつの日か

ぼくのこの想いを

このつぶやきを

聴きとってくれる人がいるとしたら

そんな奇跡があるのなら


きっと

この想いは

君にも伝わるんじゃないか

ぼくはそれを信じてる




ありがとう

ご主人の

そしてぼく自身の

つぶやきを聞いてくれて



つぶやきハニ~でした



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

 つぶやきハニ~ ふみその礼 @kazefuki7ketu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る