第4話 ゲームをしていたら、気持ちが分かってきました

 秋雨に手を引かれて連れてこられたのは、どうやら秋雨の所属する部活のようだった。


 部室に入ると、やはりというか秋雨の趣味全開の装飾。黒いカーテンに魔法陣。怪しげなオカルト的物品からアニメでしか見ない衣装まで飾られている。


 秋雨って確かオカルト研究部だったか。そういうことなら他の部員と部室がこんなことになっても気にしないものなのかと思ってしまうが、やっぱりやりすぎじゃないかな。


「どうだね、我が城は!」

「本当に秋雨の部室なんだなって感じ。他の部員さんは?」

「皆部活には滅多に来ないからな。各々研究がある故、この城は実質我の独占状態というわけだ!」


 幽霊部員なんだろうか。勝手な偏見だが、こういう部活なら体育会系に比べても怒られにくそうだし。そもそも先輩とか顧問が居るのかは知らんけど。


 なんにせよ、そういうことならちょっと助かる。いきなり連れてこられて他の部員からキョトン顔でもされたら気まずいし。なんで来たのみたいなこと言われたらもっと気まずいし。


 それで、秋雨はここで何をやらせるつもりなんだろうか。どうやらモニターを引っ張り出して何か機械を弄っているようだが……

 

「……それって、ゲーム機?」

「しかり! その勇者はゲームにハマっているのだろう? であれば、そういう観点から対処法を見つければ良い!」


 そう上手くいくもんだろうか。それで俺達がゲームをしたところで対処法が浮かび上がってくるとは思えないし。


 しかしこの部活、ゲームやっても良いんだな。カレンさんも学校でゲームができるってなれば、その餌に釣られて……いやそれじゃあ家に居るのと変わらないか。もうちょっとこう、外に出て人と交流できるからこその活動で、尚且つカレンさんの気が引けそうなもの。


「うむ。そうしてよく考えるのも盟友の良いところだな!」

「ああ、ごめん。もう準備終わってたか」

「なに構わんさ! 我は黙々と考え込んでいる盟友を眺めること、結構好きだからな!」


 それはそれで恥ずかしいから見ないでほしい。


 俺は秋雨が座っている横に腰を下ろし、目の前にさっと置かれたコントローラーを手に取る。

 

 よく見たらこれ、ウチにもあるやつだな。秋雨はウチに何度か来たことあるし、覚えていたのだろうか。まあ、どうせならカレンさんがやっているタイトルと同じモノの方が参考になるもんな。


 さすがの洞察力に、気も遣える。やっぱ変な性格してても良い奴なんだよなぁ。


 それから始めたのはアクション要素の強いRPGだった。勇者に選ばれた主人公が魔王を倒しに旅に出るというストーリー。


 以前は忙しくて、チラッと画面を見てもそれほど気にしなかったが……


「どうだ? 二人プレイというのも中々乙なモノだろう」

「だねぇ。秋雨とやるのって久々だから普通に楽しいよ」

「そ、そうか! はっはっは! そうかそうか楽しいか!」


 逆に、一人でやってもつまらなそうだとは思うが。ベースは一人用なのだから、初見でやればそれなりに楽しめるだろう。しかし、何度も周回している者からすると、飽きてしまうのではないだろうか。


 そして、カレンさんはこれをずっとプレイしていたはずだ。


「まあ、だからといってどうこうってわけでもないけどな」

「……え?」


 何をプレイしようとカレンさんの勝手。カレンさんがこれを好きというならそれで……


「そ、そうか? 私はこれ以上無いくらいに楽しいぞ? 確かにどうこうというわけでは――」

「あれ? なんで好きなんだ?」

「唐突の哲学⁉︎」


 この一ヵ月一緒の部屋で暮らしてきて気がついた。あの人は飽き性だ。それがあの人のカスレベルを大きく引き上げていると言っても過言じゃない。

 

 カレンさんのプレイヤースキル的に……


「すぐ止めるよな、普通……」

「な、なるほど分かった! なら他のゲームをやるとしよう!」

「そう、他のゲームはやらないのか? まあずっと同じゲームやってるわけじゃないが……やっぱり、今思い出すと毎日やってる。うん、間違いない」

「……ど、どういうこった?」


 このひらめき、捨てるには惜しい。


「秋雨」

「なんだい⁉︎」

「ちょっと時間かかるかもだけど、最後まで付き合ってくれない?」

「……あい分かった! 盟友の最期を、我が見届けてやろう!」

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勇者が転移してきたのは良いとして、遊び人にジョブ変わってない? 夜葉 @yoruha-1

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