成仏してよ、新本さん!

御屋敷しぐ

第1話 始まりですか?新本さん

『だから大丈夫だって、お母さん心配しすぎ。私もう高校生だよ?…あぁもう、お姉ちゃんのことはもういいの!ほら切るよ!』


プツッ…


『はぁ。』

水川なずな、高校一年生。正しくはこの春から高校一年生。

高校進学と同時に上京しついに夢見た華の一人暮らしライフが幕を開けるところ。


そんなに食べたら太るよ、とか服脱ぎっぱなしでだらしないとか小うるさくいってくる母も父ももういない。

マイワールドが作り放題食べ放題だ。


この発言をするとふくよかな体系を疑われるかもしれないが断じて違う。

顔は中学時代月に一度は必ず告白されるくらい可愛いし性格もいい、と思う。が蟻は踏める。

スタイルも中の上くらいだし外はねした肩までの茶色い髪も水色のまんまるの瞳も結構気に入っている。


自分の顔の自慢はここまでにしよう。


『水川様の条件ですとこちらがよろしいかと…』

『…風呂トイレ別、進学先からも近くて…え、神!ここにします!』

たまたま進学先の近くのアパートでたまたま条件が全て合っていた神物件。まぁちょっとぼろいけどそこは仕方ない。

『(月五千で風呂トイレ別とか神物件、私マジでついてる)』


とにかく、友達たっくさんつくって、思いっきりJKライフ謳歌する!

と、勢いよく部屋の扉を開けた。


『へぇ、外観にしては中はそんなにぼろじゃない、』

どちらかというと結構新しいしなかなか私好みだ。

『まずは部屋の整理からかなぁ…』

と、気合いを入れようと頬をパンと叩いた時だった。


『ここで何してるの』

『ひゃぁぁ!?』

驚いて腰を抜かす私を見下ろすのは小学生…くらいの幼い少女。おかっぱ黒髪で私を酷くにらんでいる。

だが、私が驚いたのはそこだけじゃない。


『あ、あんた誰…あ、足が…』

そう、足が透けている!

『何ようるさいわね、足くらい誰でも透けるじゃない』

『透けねえよ』

なんなんだこの小学生、生意気だし足透けてるし足透けてるし(二回目)。ここ私の家なんですけど!


待てよ、これってもしかして…


『いわくつき?』

『なんかそれっぽいのが住み着いちゃってるんですけど…』

この場所を勧めてくれた不動産に聞いてみることにした。まさかそんなことはないと思うが、一応念のため…


『こんなに早くばれてしまうとは、いやはや驚きです』

『は、はい?』

これはつまり。はめられた?いや騙された?

『まぁ実害はないと思いますしそれ以外は問題ないですよ。長いものに巻かれてください。』

『問題ないって、いわくつきの時点で大問だ…』

ツー、ツー、ツー


これは一体どうしたものか。

『大迷惑なんですけど…』

『大迷惑はこっちよ、私の花園に勝手に入ってきて…ってこのお菓子美味しいわね』

勝手に人が持ってきた晩御飯をむさぼりながら文句を垂れる幽霊にため息をつく。

…長いものに巻かれろ。確かにそうするしかないのかもしれない。


友達もいない、家にも帰りたくない、金もない。なけなしの金で借りたアパートでやっとだというのに引っ越すなんてもう論外だ。

今は、このくそみてーな状況に我慢するしかないんだ。


『…私は水川なずな。まぁ、お互い嫌だろうけど円満に解決するには仲良くしようぜ、幽霊さん。』

手を差し伸べる私に自身の手を伸ばすかと思えば、その手を振り払いほかのお菓子を奪って怒鳴る。

『なぁにが仲良くしようぜよ!あんたは今日から私のペットよペット、散々こき使ってやるから覚悟しなさい!』

どこで間違ったか私の日常。幸先最悪な私の高校生活、スタートです。


『まずは餌をあげるわ!ほら水川食べてもいいわよ』

『もともと私のだわ』

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