第4話
「───ってことが、あってね~」
「ウソだぁ。それは
どういうワケか、姉貴と
相変わらずベラベラと喋り続けている姉貴。このままでは校門に辿り着いてしまう。一体どうするつもりなのだろうか。校門の前で
「いや~、橘ちゃんは面白いねぇ」
「そんなことないよ。
いいや、橘・・・。姉貴は面白いんじゃなくて、
いやいや、そんなツッコミを入れている場合ではない。俺には、やらなければならないことがあるのだ。
「えっと・・・。むむむ、
「ん? なに?」
なに、じゃねぇだろ! とっと帰れよ! 失せろよ!
姉貴はニヤニヤとしながら、俺の顔を見ている。どうやら、このままでは
「え? ちょっ、渡辺くん!? こ、こんなところで襲わないで! 人が、人が見てるから! 抑えきれない欲求の解消なら、誰もいないところで、してあげるから!」
黙れ、バカ! なにを言い出すんだ! あと、渡辺って呼ぶな!
「どど、どうしたの!? 渡辺くん!?
「いや、えと・・・。わ、忘れ物! 忘れ物を取りに帰らないと!」
「・・・忘れ物? 誰の?」
橘が不審そうな目で俺を見ている。
やめろ、そんな目で見るな! 不審者を見るような視線を向けるな! 不審者は俺じゃなくて、この女なんだぞ! コイツはイイ歳こいて、高校生になりすましてるんだぞ!
「あ! そうだ、そうだ! 忘れ物があったんだ! ほらほら、渡辺くん、行くよ!」
どういうワケか、姉貴が俺の腕を振りほどき、急に駆け出した。そのため俺は慌てて、そのあとを追った。
暫くして、立ち止まった姉貴。そこで俺は疑問をぶつけた。
「急になんだよ? なにかあったのか?」
「・・・知ってる先生と、目が合った」
「それ、もうアウトだろ! なにしてんだよ!」
「うん。その先生も、『オマエ、なにしてんだよ』って顔をしてた」
「バレたのかよ! どうすんだ、バカ!」
「とりあえず、今日は家に帰る」
「・・・そうか。それは良かった」
「じゃあ、また明日ね!」
「明日も来るのかよ!?」
そうして、その日はなんとか、やり過ごした。
夕方、学校から帰ると、リビングで姉貴が死んでいた。まさに、リビングデッドだ。
いやいや、そうじゃない。死んではいない。死にそうな顔で倒れているが、死んではいない。とりあえず、死にそうになっている理由を聞いてみる。
「どうしたんだよ?」
「・・・・・なの」
なんとも、か細い声。そのため、語尾しか聞こえなかった。
「なんだって? 全然、聞こえねぇよ」
「・・・今日の帰り道、知り合いの後輩に、会った」
・・・え?
「お、おい。それって、まさか・・・」
「うん・・・、高校の後輩。・・・今、三年生」
地獄っ!!
その後輩───俺からすれば、先輩だが───からしたら、卒業した筈の先輩───つまりは姉貴がセーラー服を着ているんだから、目を疑ったことだろう。超常現象に出くわしたと思っただろう。なんとも気の毒なことだ。
「あー・・・。メチャクチャ引いてた」
そりゃそうだろ!
「しかも、三人もいた」
「多分もう・・・、学校中に知られてる」
まぁ、知り合いの先生にも気付かれてたみたいだしな。
「どうしよう! 明日、どうやって登校しよう!」
「まだ来るつもりかよ!! いい加減にしろ!!」
「だってアタシ、まだモテてないから! 高校で、モテてないから!」
「・・・いや、もう無理だろ。バレたんだから」
「・・・え?」
「姉貴はもう、俺の高校では変人扱いされてるに違いない。だから、もう高校ではモテないだろ?」
「っ!? そ、そんな・・・」
ふぅ、やっと決着したようだ。これでもう、姉貴が高校に来ることは───。
「他の高校の制服を用意しなきゃ!」
「マジでやめろ! 捕まるから!」
その後、なんとか姉貴を説得して思い留まらせることには成功した。しかしその代償として、俺は男友達を紹介することになってしまった。トホホ・・・。
三つ年上の姉貴が、もう一回高校に通うと言い出したのだが・・・。 @JULIA_JULIA
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