第10話 兄弟




 魔王、乱斗らんとの隠れ家にて。


「我が勇者一行に倒された時に、我の隷属の能力は解かれたはずだが?」


 隠れ家で待ち構えていた、見覚えのある一人の人間の男性との距離を一気に縮めては、乱斗はにこやかに話しかけた。


「それとも弟の尻拭いをする為に、逃げ去る事もせず、わざわざ待ち構えていたのか?」

「滅相もございません。俺はそもそも魔王様に血を吸われて隷属化したのではなく、魔王様にお仕えしたいが為に、自ら膝を折って血を差し出したのですよ」

「ハッハ。そうであったな。すまぬすまぬ。かけがえのない忠臣を疑うとは。魔王として情けない限りよ」

「滅相もございません」

朝陽あさひ

「はい」

「秘湯を、星の血の在り処を須らく探し出せ」

「仰せのままに」


 魔王に朝陽と呼ばれた一人の男性は、片腕を胸に掲げては深々と頭を下げてのち、刹那にして姿を消したのであった。




「さて。どうしてやろうか。前回はあやつを出せなんだが。今回は、」




 兄弟の涙なくしては行えぬ決闘でも勤しんでもらおう、か。











(2024.12.6)



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勇者から秘湯屋に転職します 藤泉都理 @fujitori

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